2024.8.23

LIXILが業界初のLCCO₂簡易算出ツールを開発

住宅のLCA加速の弾みに

LIXILが業界初となる窓のLCCO₂排出量を算出し、住宅全体のLCCO₂排出量を評価できるツールの提供を開始した。住宅のホールライフカーボン(WLC)の把握に欠かせない建材のCO₂排出量評価が進みそうだ。

LIXILは、同社のプロユーザー向け設計支援ツール「LIXIL省エネ住宅シミュレーション」に、業界初となる窓のLCCO₂(ライフサイクルCO₂)排出量を算出し、住宅全体のLCCO₂排出量を評価できる「すまいのライフサイクルCO₂簡易算出機能」を追加し、8月1日より提供を開始した。

「LIXIL省エネ住宅シミュレーション」は、住宅の各部位の面積や、窓の種類・サイズ、断熱材の種類などの必要な条件を入力すると、外皮性能から一次エネルギー消費量の計算までを一気通貫で行えるもの。入力した条件で省エネ住宅を建設した場合の水道光熱費の削減効果などをまとめたエンドユーザー向けの提案書作成も行える。無料の会員登録で誰でも使用することができ、現在1万4000社以上の事業者が登録をしている。

新たに追加した機能は、省エネ住宅シミュレーションの特徴を生かし、建設や開口部の製造にかかわるCO₂排出量の計算を組み込むことで、住宅の「つくるとき・つかうとき・すてるとき」トータルのLCCO₂排出量を算出することができる。窓においては、機種、サイズやガラスとの組み合わせの違いによる省エネルギー評価、LCCO₂排出量の評価による地域に合わせた最適な窓の提案レポートまで自動で生成する。

従来通りに必要条件を入力し、外皮性能や一次エネルギー消費量の計算をした後、LCCO₂設定画面で、長期優良住宅の取得有無や劣化対策等級、外壁や屋根などに採用している建材の種類などを選択すると、従来の提案書に加えて、「すまいのライフサイクルCO₂レポート」と「おすすめの窓提案書」を作成できる。レポートでは、平成28年省エネ基準の住宅と、建設予定の住宅を比較して、LCCO₂の排出量をどれだけ削減できるかを「つくるとき・つかうとき・すてるとき」に分けて表示。施主に分かりやすいよう、スギの木のCO₂吸収量でどれくらいになるかの説明も記載する。建築物のLCA指針に基づくLCCM住宅の計算ツールなどを参考に、独自の計算方法で算出する。窓の提案書では、窓だけで比較した場合に、提案する窓が一般的な窓からどれだけLCCO₂排出量を削減できるかを示す。

また、LCCM住宅を目指す事業者に対しては、LCCM住宅の補助金申請などに必要なLCCO₂適合判定ツール作成のサンプルを用意。入力サンプルは所定の申請書と同様のロジックで作成しており、内容を転記することで簡単に申請ができるようにした。

総合的な視点での窓選びを推進
ドアやシェードへ対象拡大も目指す

LIXILが新たに追加した「すまいのライフサイクルCO2」の提案書

同社は、昨年12月に、断熱性能だけでなく、地域の気候風土を踏まえて総合的に環境負荷を低減する新たな窓提案として、「GREEN WINDOW」を発表している。これは、一定の断熱性能を持つことはもちろん、地域に適した日射取得や、リサイクル率といった製造や廃棄段階での環境負荷まで総合的に考えた窓選びを推進するもの。今回の「すまいのライフサイクルCO₂簡易算出機能」の追加にあたって、こうした総合評価での窓選びをさらに普及させていきたい考えだ。

今後は、玄関ドアや、シェードなど窓まわり商品へもシミュレーションの対象を拡大するなど、住まい全体におけるライフサイクルCO₂排出量算出機能の構築を目指す。「現時点では窓以外に日射を遮蔽する方法が計算に組み込めていないため、その部分を強化していきたい」(サッシ・ドア商品戦略部 柳通一晴氏)と、よりパッシブ設計に沿ったツールにしていくとする。

バリューチェーン全域で
CO₂排出を考える時代に

ライフサイクル全体でのCO₂評価は不動産業界から始まっており、プライム市場の上場企業には気候変動リスクの開示義務が課せられている。自社だけではなく調達や輸送なども含めた温室効果ガスの排出量が求められ、脱炭素に関する取り組みの遅れが企業評価に直結する。

24年6月、(一財)住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)は、建築物ホールライフカーボン(WLCA)算定ツール「J—CAT」の試行版を公開した。建築物のライフサイクル全体を通じたCO₂をはじめとするGHG(温室効果ガス)排出量を算定するもので、物価上昇や契約金額などの影響を受けない資材数量ベースの算定が可能なことが大きな特徴だ。これまで行われてきた金額ベースでのカーボン排出量計算では、環境対策に予算をかけない事業者ほど有利になってしまうとし、環境対策の取り組みがフェアに扱われることを目的に開発が始められた。

「つかうとき」に主眼が置かれていた住宅のCO₂排出量削減についても、製造から廃棄までトータルでのCO₂排出量削減が求められ始めている。「J—CAT」は大規模な建築物を想定しているが、25年度以降に「J—CAT戸建版」を開発する予定だ。WLCAの算定には、建材などの製造過程でのCO₂排出量の把握が重要となる。住宅のWLCAに向け、建材メーカーなどによるCO₂排出量評価の動きが加速しそうだ。