台風・集中豪雨の頻発化で高まる雨漏りリスク 雨漏り対策は大丈夫!?
住宅事業者が踏まえるべきチェックポイントとは
住宅の不具合で常に上位にあがるのが雨漏り。
特に近年は大型台風や集中豪雨が頻発しており、そのリスクが高まっている。
住宅に甚大な被害を与える可能性のある雨漏りには事前の対策が重要だ。
住宅の雨漏りによる不具合・トラブルが絶えない。
(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターは住宅取得やリフォームに関してのトラブルや不安を抱える消費者などに対する電話相談「住まいるダイヤル」を行っている。同センターの「住宅相談統計年報2023」(2022年度相談)によると、この「住まいるダイヤル」に寄せられたトラブルに関する相談件数のうち約8割が「住宅のトラブルに関する相談」(住宅に関する不具合などによるトラブルに関する相談及び住宅の契約に係るトラブルに関する相談)であり、そのうち「雨漏りやひび割れなどの不具合が生じている相談」は1万632件、75.3%を占める。つまり電話相談の多くは住宅の不具合によるものということだ。
「戸建住宅」について、具体的な不具合事象をみると、「ひび割れ」、「雨漏り」、「性能不足」がトップ3。「雨漏り」については、築後3年未満までの相談が約26.6%と比較的早い時期に発見されて相談に至っているが、年数が経過してからも発現する傾向がある。新築住宅だからといってけっして雨漏りが起こらないわけではない。また、この数年間の「不具合事象と主な不具合部位」のトップ3に「雨漏り」は常に入っており、15%前後の推移が続いている。
不具合事象と主な不具合部位 新築住宅(戸建住宅)の上位3項目の推移
不具合事象と主な不具合部位 リフォーム(戸建住宅)の上位5項目の推移
「リフォーム」についても同様の傾向がみられる。「リフォーム相談」における住宅に関するトラブルのうち不具合が生じている相談は66・6%と高く、具体的な不具合事象は「はがれ」、「雨漏り」、「性能不足」がトップ3で、やはり「雨漏り」が2位に入っている。近年の推移をみると15~16%の推移が続いてきており、年によって1位となることも。ただ、20年度相談の17.4%をピークに2年連続の減少となっている。
雨漏りは、雨水が外部から住宅に浸入することで起こるトラブル。浸入箇所は、屋根や外壁、開口部からが多いが、さまざまな箇所から浸入する可能性がある。さらに、天井や壁の染みなど雨漏りが現れた場所が水の浸入箇所の近くとは限らず、壁や階床などを伝ってまったく違う場所で見つかることもある。その経路が分からなければ対策が難しい。まずは、雨水が浸入しないような配慮を行うことが何より重要となる。
雨漏りは、内装や家財などの被害につながるだけでなく、木部を腐らせ、鉄骨・鉄筋を錆びさせるなど住宅の強度低下を招く可能性もある。特に、近年は大型台風、集中豪雨などの被害が頻発化しており、雨漏りのリスクが増して高まっている。さらに軒の出が少ない住宅デザイン、複雑な形状のデザインなど、雨漏り対策が強く求められる住宅デザインの広がりも指摘されている。
雨漏りのリスクが高まるなか、住宅事業者には従前にも増した対策が強く求められている。
雨漏り事例を分析
雨漏り防止のチェックポイントを紹介
雨漏りはしっかりとした事前の対策が不可欠。ただ、さまざまな部位から雨水が浸入するリスクがあり、対策は多岐にわたる。住宅事業者はどのような点に配慮しておかなければならないのか―。
(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターは、今年3月に特設サイト「住まいの雨漏り対策を考えましょう」をホームページで公開した。住宅の雨漏りリスクを減らすためには、建設時の適切な施工、設計段階での工夫、住み始めてからの定期的な維持管理も重要となる。特設サイトでは、実際に起こった新築木造戸建住宅の雨漏り事例をもとに、住宅部位ごとにそのリスクや対策をまとめている。事例をもとにしているだけに、一般消費者はもとより、住宅事業者にも参考となる情報が多く掲載されている。
消費者向けの情報提供については「様々な部位・部材で構成される住宅にはそもそも雨漏りのリスクがあるということ、対策やメンテナンスなどを怠れば雨漏り発生につながる可能性があるということを伝えたい」(宮麻里子 住宅リフォーム・紛争処理研究所 研究第二部 主任研究員)ということが目的であり、住宅を取得する人が、雨漏りリスクを減らすために、住宅の取得時や住み始めてから何に気をつけるべきかをまとめている。
具体的には、一昨年から取り組みを開始。住宅瑕疵担保責任保険法人5社の協力を得て、保険の事故事例を収集した。保険事故は基本的に構造耐力上主要な部分の事故、もしくは雨水の浸入防止に関する事故かどちらかとなるが、新築戸建住宅では、雨漏りに関する事故が約9割を占め圧倒的に多かった。その浸入箇所を見ると、「外壁開口部から」が約30%、「外壁面から」が約26%、「勾配屋根・天窓から」が20%となっている。
一年目は収集した事例を基に、外壁〈モルタル〉、窓・ドア(サッシ)、屋根〈棟〉、屋根〈けらば〉、外壁・屋根の取合い部、天窓(トップライト)という6つの部位について情報を整理、対策を検討した。ウェブサイトでは、部位ごとに起こり得る雨漏りのリスクを説明し、そのリスクを低減するためのアイデアを紹介している。さらに住み始めてからの注意点も記載し、注意を促している。
また、「住宅事業者向け資料」をPDFで掲載していることも大きな特徴だ。雨漏りを防止するためのチェックポイント(表参照)を簡潔にまとめるほか、雨漏りの事例も掲載。また、類似の事例として国総研の資料や、同センターの住宅紛争処理技術関連資料集の調査方法や補修方法も参考資料として提示している。基本的には、消費者のリテラシー向上を高めてもらうための情報提供が目的だが、部位別に事故事例に基づいた事業者向けの情報提供が対になっていることが特徴。住宅事業者の参考になる。
同センターでは、昨年、バルコニーとサイディング外壁の雨漏り事例についても保険法人から収集し分析を行っており、今年9月末頃にはウェブサイトに追加する予定だ。
各部位及び仕様の雨漏りリスクを踏まえた対策が重要に
(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター
住宅リフォーム・紛争処理研究所 研究第二部
宮麻里子 主任研究員
近年局地的な大雨や集中豪雨が増えるなか、軒の出が少ない住宅も増えており、住宅の各部位や取合い部への雨がかりを踏まえた対策及び適切な施工が、これまで以上に求められる。
軒の出が少ないことや、資料の中で雨漏り事例として取り上げた片流れ屋根やモルタル外壁など、屋根形状や仕様自体が悪いわけではない。各部位及び仕様の雨漏りリスクを把握した上で、リスクを踏まえた対策をとり、適切な施工を行うことが重要である。
9月末頃にバルコニーやサイディング外壁の情報をウェブサイトに追加し、雨漏り対策の情報提供については一区切りとなる予定だが、今後も保険法人と相談しながら必要に応じて情報を追加していきたいと考えている。
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