2024.7.4

(一社)太陽光発電協会、太陽光発電コスト及びオフサイトPPA収益性の実態調査を発表

オフサイトPPAの自律的普及に期待

EPIコンサルティングと共同で、2020年から23年に運転開始した100件の太陽光発電所を調査し、太陽光発電コスト推移、太陽光オフサイトPPA(電力販売契約)の収益性を分析し、結果を公表した。

企業の敷地外(=オフサイト)に太陽光発電設備などの再エネ電源を設置し、電力を供給する仕組みであるオフサイトPPAは、自社の敷地内で再エネ導入に制約のある需要家が、主体的に導入を進めることができる優れたスキームとして評価が高い。発電事業者はFIT(固定価格買取制度)に頼らず長期固定価格での売電先を確保、小売事業者は再エネを固定価格で長期間調達でき、需要家は電気料金の変動リスクをヘッジできる、とそれぞれにメリットをもたらすとされている。そこで、さらなる普及のため、同協会とエネルギー領域に特化したコンサルティングファームのEPIコンサルティングが共同し、オフサイトPPAの調査を実施。20年に同協会が実施した自主事業及び経済産業省の補助事業である「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」を通じて収集した計100件の太陽光発電所のデータから、日本の太陽光発電のコスト構造と推移、太陽光オフサイトPPAの収益性などを分析し、まとめた。

(一社)太陽光発電協会の増川武昭事務局長

調査結果によると、高圧地上設置型の太陽光発電所の発電コストは、20年運開の発電所で12.8円/kWhだった。23年1月運開の発電所は12.6円/kWhと一時的にコストは下がったが、円安、インフレなどの影響により資機材が高騰し、コスト低減が足踏みとなっている。だが、今後は太陽光パネルの国際価格の低下に加え、現状20%程度の変換効率の向上、現時点で20年程度を見込む稼働年数の30年超への延長、工事費の低減など、様々な要因によりコストは低減する見込みだ。同協会では、30年頃までのコスト低減目標を7円/kWhと掲げているが、昨今の円安やインフレの影響を考慮すると、そこまで到達しなくとも、相対的なコスト競争力を有する可能性は十分あり得るとした。

一方、オフサイトPPAにおける需要家のコストメリット調査では、そのメリットは電気料金により変動することが改めて分かった。23年1月は、ロシアのウクライナ侵攻により、天然ガス・石炭の価格が高騰したため標準電気料金は25.5円/kWhまで上昇。そのため需要家は、環境価値を含まずともオフサイトPPAから十分なコストメリットを得ることができた。だが、23年11月に天然ガス・石炭価格が下落した結果、標準電気料金は19.1円/kWhに低下。それでも需要家が存在したのは、将来の価格高騰リスクのヘッジと環境価値などの付加価値を評価したためと考えられる、とまとめた。調査した2者の試算によれば、太陽光の発電原価が7円/kWhまで低下し、カーボンプライスなどの再エネ価値が適切に評価されるようになれば、補助金なしでも、需要家がコストメリットを得られる可能性があるため、オフサイトPPAが自律的に普及していく、とした。報告書では、さらなる普及のため、潜在需要家のマッチングをするプラットフォームの構築や補助対象の拡大なども提言した。

同協会の増川武昭事務局長は、オフサイトPPAの普及促進について「カーボンプライスがカギになる」と言及。「整備が整い将来のカーボンプライスの数値予見が出てくれば、それを見込んで事業者もさらに参入するはず。需要家も今は一部の大手企業だけだが、どんどんカーボンプライスの負担が増え、将来的に見据えて安いと思い始めれば、ニーズが増えていく」と話した。