2024.7.8

東日本旅客鉄道、社有地開発などを行う不動産会社を新設

27年度までに1000億の投資を計画

JR東日本グループが保有する社有地開発の加速や、不動産取得機能の強化を図るため、「JR東日本不動産」を7月1日に設立する。2027年度までに1000億円規模の投資を計画している。

東日本旅客鉄道(JR東日本)は、不動産分野の領域拡大などを目的とした新会社「JR東日本不動産」(東京都新宿区、田﨑政史代表取締役社長)を設立する。

年々深刻さを増す少子高齢化や人口減少などの社会問題によって、企業を取り巻く経営環境は著しく変化している。こうした変化に対応していくため、JR東日本グループは2018年に、27年頃までの経営環境の変化を見据えたグループビジョン「変革2027」を策定。鉄道中心の輸送サービスに重点を置いていた経営体制を見直し、人を起点とした生活ソリューションサービスを新たな成長エンジンとするため、その強化を図っている。具体的には、17年度時点で「7:3」だった輸送サービスと生活ソリューションサービスの収益比率を「5:5」にする目標を掲げている。

この早期達成に向けて重要となるのが不動産分野の強化だ。同社グループはこれまで、駅とその周辺の用地開発に着手し、分譲・賃貸マンションや駅直結型のオフィスおよびショッピングモールの開発など、駅を中心としたまちづくりを行ってきた。

新会社設立で不動産分野の領域拡大を図る

今回設立する新会社は、同社グループの社有地開発を手助けするほか、街中における不動産の取得・開発を行う。不動産開発力の強化とまちづくりの範囲拡大を図ることで、不動産分野の領域拡大につなげる。さらに、開発した不動産は、グループ会社のJR東日本投資顧問が組織するファンドなどに売却。売却資金はグループ内の事業に再投資することで、回転型ビジネスを加速させる。
これらを実現させるため、不動産の取得・開発・売却に長けた人材を積極採用することで強固な事業体制を築く。加えて、ハウスメーカーや施工会社、設計会社といったエリアごとのベストパートナーと連携した開発を行い、不動産価値のさらなる向上に努める。

また、新会社の事業を通じて不動産分野で顧客接点を強化し、Suicaを中心とした多様なサービスの提供範囲を拡大する。例えば、同社グループが開発したマンションに居住し、家賃の支払いを同社が発行するクレジットカードの「ビューカード」で行うと、Suicaと連携してJRE POINTが付与される。このポイントはJR東日本グループの駅ビルやエキナカ施設などで利用でき、開発地域の周辺住民は「体験価値(ライフ・バリュー)」が向上する。まちづくり範囲の拡大によってSuicaの経済圏が広がるというわけだ。

「鉄道サービスやSuicaなどを絡めたJR東日本グループならではの不動産事業を展開することで、魅力あるまちづくりを進める」(マーケティング本部 まちづくり部門 不動産戦略ユニット・宮野義康マネージャー)考えだ。

まずは、今後10年間で品川駅・新宿駅・東京駅をはじめとした山手線沿線を中心に、東京圏ネットワークの結節点への戦略的な投資を進めていく。27年度までに1000億円規模の投資を計画している。