2024.7.12

(一社)日本ツーバイフォー建築協会、2×4工法50周年記念講演会を開催

中高層大規模建築建設を推進

2024年7月に2×4工法がオープン化から50周年を迎えることを記念して講演会を開催した。また、24年度総会において、2×4工法の利点である合理的な生産・施工システムを生かし中高層大規模建築建設を推進することなどを確認した。

優れた耐震性や耐火性、省エネルギー性能などが評価され、この50年間に300万戸を超える2×4住宅が建設されてきた。近年は、生産性、施工性の高さや環境面でのメリットなどが評価され、住宅のみならず非住宅分野での採用も広がっている。

50周年記念講演では、京都大学 生存圏研究所 生活圏木質構造科学分野の五十田博教授が「構造の観点からみたツーバイフォー工法の性能の確実性」、また、東京都市大学の小見康夫 建築都市デザイン学部長・建築学科教授が「中大規模木造の本格普及を目指すツーバイフォー建築」をテーマにそれぞれ講演した。

施設系2×4建築は約7%増の331件

「2×4住宅の持ち家のシェアは、昨年度12.9%となり過去最高を更新した。多くのユーザーに支持されている」と話す池田会長

23年度の2×4住宅の新設着工戸数は9万1647戸で、前年度比でほぼ横ばいとなった。全新設住宅着工戸数におけるシェアは11.5%となり、前年度に比べ0.8ポイント増加した。池田明会長(三井ホーム社長)は、「2×4住宅の持ち家のシェアは年々増加してきており20年前の1994年の6%から昨年度は約2倍の12.9%となり過去最高を更新した。2×4住宅が多くのユーザーの皆様に支持されていることがうかがえる」と話す。

また、23年度自主統計調査(22年度着工分)によると、住宅用途以外の施設系2×4建築は、前年度比で約7%増の331件となった。用途別に見ると、商工業施設(118件)、医療施設(86件)が多く、商工業施設の内訳は、店舗と事務所が引き続き多い傾向にある。「性能面の高さに加え、生産性、施工性の高さ、環境に優しいことなどが評価されて年々、増加している」(池田会長)。

24年4月の法改正に対応
枠組壁工法の別冊を作成

24年度事業計画の重点項目として、改正建築物省エネ法、建築基準法などの25年度施行内容への対応として必要な対策を講じる。
4号特例の縮小」などに関連して、軸組工法用に作成された「設計支援ツール」及び「確認申請・審査マニュアル」をベースに、国土交通省の監修のもと枠組壁工法に関する部分についての別冊を作成し、講習会を実施する。

また、「階高の高い木造建築物等の増加を踏まえた構造安全性の検証法の合理化」に対応して、昨年度取得した繊維系断熱材付加断熱仕様の防火構造に続き、準耐火構造の大臣認定を取得する。さらに、階数に応じて要求される耐火性能基準の合理化により制定された90分耐火構造について、告示基準よりも施工が軽減できる耐火仕様の実験結果に基づき、大臣認定の取得を検討する。

これらの取り組みを含めて、2×4工法に必要な技術的対応方法をホームページ、講習会などで順次解説する。

そのほか、生産・施工システムの合理化のために開発したパネル工法の実用化に向けて、生産・施工に関わる会員企業による委員会を組織し、普及に向けた課題抽出、解決策立案を行う。パネル工法の設計・生産・施工体制を構築し、公共建築工事に会員企業が参入しやすくなる環境整備を進める。

また、2×4工法による中高層建築物(4~6階建て)の構造計算ルートおよび混構造における剛性率規定などの合理化を図るため、基準が公表され次第、試設計に取り組み解説書を作成する。

池田会長は「協会として引き続きツーバイフォー工法による中高層大規模建築の建設を今後も強く推進していく」と述べた。


厳密な仕様規定で基準法の約2倍の壁量を自動的に確保

京都大学 生存圏研究所 生活圏木質構造科学分野
五十田博 教授

建築基準法で定められた木造住宅の耐震性能は、大地震が来ても倒壊だけはしてはいけないというレベルであり、基準法レベルで建てられている建物は大地震が来ると全壊するリスクはある。壁量の充足率だけが耐震性能を表してるわけではないが、一番わかりやすいので壁量充足率で示すと、壁量が多いほど地震被害は減っていく。これまで私が携わった地震被害があった建物の調査などで、ツーバイフォーの平均的な壁量は、構造躯体全体に関わる仕様規定によって建築基準法で定められた基準の2倍以上になっていることが分かっている。厳密な仕様規定があり、基準法の2倍ぐらいの壁量を自動的に確保することができるため建物は強くなる。

現在は市街地における1階RC造2~5階建てマンション、社会福祉施設などが各地に建設されている。もっともっと普及可能性があると感じている。

「標準パネル工法」の実用化に向け準備
達成できれば2×4建築の未来は明るい

東京都市大学
小見康夫 建築都市デザイン学部長・建築学科教授

2×4建築の中大規模化と職人不足・高齢化の問題に対応していくためには、第一に省力化しかないが、当然のことながら各建設会社はやれることはやっている。一層の現場省力化を実現するには、各々の事業者を超え、業界として取り組まなければならい。このような認識から日本ツーバイフォー建築協会として「ツーバイフォー標準パネル工法」の開発、実用化に向けた準備を進めている。

「標準パネル工法」では、壁パネルについては、面材の張り方を統一し、「懸け継ぎ」をなくすことで隣接パネルの接合を簡略化した。床パネルについては、面材先貼り仕様を定め、現場施工を簡略化。パネルの上からビス接合可能な屋根パネルも新たに開発した。

「標準パネル工法」を普及させ、中大規模木造市場に新規事業者も参入しやすくするためには、コンポーネント会社の役割も重要になる。「取引先の仕様に合わせてパネルを製作している」、「一工場の生産量を超える場合は対応できない」、「協業体制ができていない」といった課題を克服し、全国のサプライチェーン構築を先導する「木構造ファブリケーター」としての役割が求められている。パネル基準を発注者・設計者・施工者で共有することで他社協業も可能になる。

大工は減少の一途をたどっており、生産性向上が唯一の道となる。「ツーバイフォー標準パネル工法」を実用化し、普及することができれば、2×4建築の未来は明るい。