2024.4.10

住まいとは何か?

あらためて問われる住まいのアフォーダビリティ

資材や人件費のアップなどにより住宅価格が高騰、地価上昇も加わり住宅取得環境が急激に悪化している。

(独)住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査(2022年度)」を見ると、注文住宅の建設費は3715.2万円(前年比4.1%増)、年収倍率は6.9倍(同0.1ポイント増)、建売住宅の購入価格は3719.0万円(同3.2%増)、年収倍率は6.9倍(同0.1ポイント減)、マンションの購入価格は4848.4万円(同7.1%増)、年収倍率は7.2倍(同±0)、中古戸建住宅の購入価格が2703.6万円(同3.4%増)、年収倍率は5.7倍(同±0)となっている。

また、(一社)住宅生産団体連合会の「2022年度戸建注文住宅の顧客実態調査」によると、戸建注文住宅の建築費は4224万円(同10.7%増)、土地代を加えた住宅取得費は6370万円(10.2%増)と、共に前年から1割ものアップとなっている。借入金の年収倍率は5.12倍(同0.12ポイント増)だ。

住宅価格は、ウッドショックを皮切りにエネルギー価格高騰、コロナ禍でのモノ不足などを背景として部資材価格が一斉に上がったことから急激に上昇してきている。

さらに所得の低下が住宅取得環境の悪化に拍車をかける。厚生労働省の「国民生活基礎調査 2022年調査」によると、一世帯当たりの平均所得金額は545.7万円(同3.3%減)。平成6年の664.2万円をピークになだらかな減少が続いており、近年は13年の528.9万円を底に上昇に転じ、20年は564.3万円まで戻していたが、今回20万円近くの減少となった。先の金融支援機構の調査に見ることができる通り、年収倍率は約7倍にまで拡大している。

ただ、”経済格差”が顕著になっており、平均所得金額以下の割合が61.6%を占める一方、1000万円以上の割合は12.6%と1割を超える。こうしたなか住宅事業者やデベロッパーでは、ターゲットを一定以上の所得があるパワーカップルなどに絞り込む戦略を打ち出す企業、また、注文住宅に比べて価格を抑えた分譲住宅に力を入れる企業など事業モデルの転換が進んでいる。

多くの国民にとって住宅取得が”夢のまた夢”となる時代がすぐそこに迫っている。

増える高齢者、外国人
困窮層拡大に住まいはどうする

一方、今後、住宅のセーフティネットがさらに大きな課題となりそうだ。2007年に住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律が制定、2017年から「住宅セーフティネット制度」がスタートしている。

同制度は、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅「セーフティネット登録住宅」を登録し、住宅の改修や入居者への経済的な支援を行うもの。2023年度に改修費や家賃低廉化、家賃債務保証料等低廉化、住み替えに係る支援の強化が図られ、専用住宅を含めた登録の促進が図られている。国土交通省によると、セーフティネット登録住宅の登録戸数は23年3月末時点で84万8846戸だ。

「住宅確保要配慮者」とは、低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯、外国人などと定められている。

厚生労働省によると、23年暦年の生活保護申請件数は25万5079件(同7.6%増)と4年連続の増加となり、13年以降で過去最多となった。コロナ禍の20年以降増加が続いており、半数以上は高齢者世帯が占めるが、それ以外の層の申請も増加し困窮層が広がりつつある。また、今後、確実に高齢者数が増え、外国人も増えていく。こうした住宅弱者の受け皿が必要であることは間違いない。

国土交通省は、23年7月に「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会」を設置して検討を進め、今年2月に中間とりまとめを公表した。要配慮者専用の住宅やすぐに入居できる住宅が少ないこと、登録住宅に低家賃の物件が少ないことなどを課題にあげ、その機能の一層の強化に向け、多様な主体が協働して取り組む仕組みの構築、制度の充実・見直し、補助・税制など幅広い方策について検討を進め、可能な限り早期に実施するよう、国土交通省、厚生労働省、法務省が連携して取り組むと今後の方向性を示した。

要配慮者のニーズに対応した住宅などの確保方策としてセーフティネット住宅の居住水準の見直し、公営住宅等の公的賃貸住宅との役割分担などの取り組みを推進していく。

社会環境が大きく変わりつつあるなか、住まいをめぐる環境も大きな転換点を迎えている。取得・賃貸に関わらず、住まいはどうあるべきかという根本的な問いが突き付けられている。

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