その防蟻方法では問題アリ?! 住宅の高断熱化で加速するシロアリ対策

「高断熱」、「高気密」、「長寿命」が住宅産業において重要なキーワードとなるなか、見逃せないのが防蟻だ。温暖化によりシロアリの被害を受ける地域は拡大しており、海外からの刺客もある。住宅をシロアリの巣窟としないために、安全で確実な防蟻処理が求められている。

2022年に住宅性能表示制度にZEH水準である断熱性能等級5、さらにその上の等級6、7が新設された。25年には新築住宅の省エネ基準への適合が義務化され、30年には等級5での義務化が予定されている。こうしたなか、住宅事業者では等級6を目指す動きが広がりつつある。同時に、気密性能の向上も進む。高断熱住宅の実現には、住宅内部の温度を保つための気密性能が必要不可欠であるからだ。

住宅のつくり方も変化している。住宅の断熱性能を高めるために基礎断熱工法が増えている。床下を室内空間として捉え、基礎部分に断熱材を貼り付けて断熱を行う基礎断熱工法は、床下に外気が入らないため、底冷えをすることが少ない。このように住宅の在り方は大きく変化してきている。

こうしたなか、気を付けなければいけないのが、シロアリ被害だ。シロアリは温暖な場所を好むため、住宅の断熱化が進むことによって、人だけでなく、シロアリにとっても住みやすい環境となる。

高断熱住宅で需要が拡大
新商品などで賑わう防蟻市場

長年の実績で、不動の地位を築くのがEnvuをコーポレートブランドにするエンバイロサイエンスジャパンだ。そのブランド力で、防蟻薬剤市場のおよそ三分の一の売上シェアを誇る。

同社が展開するのが「ハチクサン」と「アジェンダ」の二つの防蟻薬剤。「ハチクサン」は30年前から販売しており、そのブランド名は防蟻業界で広く浸透している。非忌避性のイミダクロプリドという成分を使用し、シロアリを効果的に薬剤へ接触させ、さらに他の仲間のシロアリに伝播、確実に致死させる「ドミノ効果」を発現、少量で安定した効果を得ることができる。臭気がほとんどなく散布業者への負担が少ないことも特徴だ。約170万件の使用実績を持つ定番商品の「ハチクサンFL」のほか、顆粒を袋に入れ運搬やごみ処理をしやすくした「ハチクサン水和顆粒」、マイクロカプセル化した「ハチクサンMC」、防カビ効果をプラスした木部処理用の「ハチクサンME2」をラインアップする。

一方、約20年前に市場に投入した「アジェンダ」は、フィプロニルという成分を含有しており、ハチクサンよりもさらに少量で効果を発揮する。また、揮発性が低く、蒸発しないため長期間にわたり効果を期待できる。水にほとんど溶けず、土壌粒子への吸着がより強いため流出しにくいことも強みだ。ごく少量で効果があるため、複雑なシロアリ被害を受けた住宅での駆除や、アパートなどの床下に入りにくい大きな建物での予防に適しており、2種類の液剤製品を展開している。フロアブル剤の「アジェンダSC」のほか、ハチクサン同様にマイクロカプセル化した「アジェンダMC」も取り扱う。

また、同社は化学メーカーとして、製品化の際には、どのような使用方法で人体などに影響があるかなどについて専門的に事前に考察(リスクアセスメント)を行っている。防蟻に関しては保証期間が長いため、実績の高い薬剤を使いたい住宅事業者は多いが、信頼のある同社商品は引き続き市場で大きな存在感を持ちそうだ。

防蟻の差別化としてホウ酸への注目度も高まっている。

日本ボレイトは、ホウ素系薬剤を混ぜた気密シーリング材「ボレイトシール」や、気密パテ「ボレイトフィラー」による配管部や基礎断熱接合部の充填と、躯体へのホウ酸処理を責任施工で行う「ボロン de ガード」を展開する。ホウ素系薬剤は人や環境への安全性が非常に高く、水に触れない限り成分が揮発・蒸発しないため、効果を長続きさせることができる。浅葉健介代表取締役社長は「省エネ性能を高めるため、北海道などの寒冷地仕様の住宅を温暖地に建てるケースがあるが、シロアリの数が少なく活動量も低い寒冷地の仕様をそのまま採用するのは危険が大きい」という。実際、近年では築年数5年以下の住宅でも深刻なシロアリ被害が散見されるようになってきている。長期優良住宅の条件を満たすため、薬剤処理を行い劣化等級3の取得を目指す住宅事業者がほとんどだが、高気密・高断熱化が進むなかで、揮発性や持続性など使用する薬剤の品質を今まで以上に考えなければならないとした。そして、前述したような揮発性の低さや持続性に優れているのが無機系薬剤だ。ホウ酸や銅による防蟻処理が挙げられるが、住宅市場が新築から既存に移り変わるなかで、ホウ酸処理は既存住宅での防蟻に最適だという。「既存住宅での処理であれば、農薬系の処理とコスト面で差があまりなくなり、ホウ酸の弱点である雨の心配も少ない。健康や効果の持続性を考えると、ホウ酸処理を選んでいただけることが増えるのではないか」(浅葉社長)。

施工込みの「ボロン de ガード」はコスト面などでハードルが高いとする住宅事業者に対しては、「ボレイトシール」や「ボレイトフィラー」といった一次防蟻剤の販売にも注力する。23年4月からはより多くの人が使用できる普及品として「シロアリポリス‐C(BHK‐1870‐C)」を発売し、ホウ酸処理の間口を広げている。

日本ボレイトの「ボレイトシール」は、コンクリートの打ち継ぎや配管周りなど、あらゆる隙間からのシロアリ侵入を長期間にわたって防ぐ

エコパウダーの齋藤武史代表取締役社長は、「省エネ基準の義務化が目前となるなか、断熱性能を高めるために基礎断熱工法や床下エアコンの検討を本格的に始めたビルダーからの問い合わせが増えた」という。床下の空気環境を考えた際に、防蟻処理を、薬剤からホウ酸へ切り替える需要が高まっているそうだ。

同社は、ホウ素系薬剤「エコボロン PRO」による木部処理とシンジェンタ ジャパンの「アルトリセット 200SC」による土壌処理を組み合わせた「eことアル工法」の訴求に力を入れる。

「エコボロン PRO」は、ホウ素系薬剤の中でも、高いホウ酸濃度で木材に浸透しやすいことが強み。木材保存用途で使われる水に溶けやすいホウ酸を使用することで15%の濃度で安定させ、不純物の少ない精製水に安全な添加剤を2%混ぜることで木材に浸透しやすくしている。ホウ酸が木材の含む油にはじかれることなく、効果を発揮できるようにしている。「アルトリセット 200SC」は、米国で厳しい基準をクリアし、安全性・環境性に配慮した低リスク殺虫剤の登録を受けている。この二つを組み合わせることで、より確実な防蟻処理ができる。

外部から蟻道を構築して住宅内部に侵入してしまうケース。エコパウダーの「eことアル工法」を施工すれば、土壌処理と木部処理をセットでできるため、このような被害を防ぐことができる

基礎断熱工法の普及により、床下から断熱材を齧ってシロアリが侵入するケースが増加するなかで、木部処理と土壌処理の両方を行う必要性が増してきており、「体感では『eことアル工法』の採用が昨年から50%以上伸びている。この先5倍くらいまで増えるのではないか」(齋藤社長)とする。基礎断熱工法では、床下にもぐって点検することができなくなるため、シロアリ被害の発見が遅れるリスクがある。今まで以上に防蟻の重要性は高まっているといえよう。

一方で、長期優良住宅の基準では、地盤の防蟻処理について、「ベタ基礎または布基礎と鉄筋で一体となって基礎の内周部の地盤上に一様に打設されたコンクリートで覆ったもの」、「有効な土壌処理」、「その他同等の防蟻性能を持つもの」のいずれかを行うことを定めている。そのため、ベタ基礎であれば、土壌処理は必要ないと考える住宅事業者も存在する。

しかし、斎藤社長は「ベタ基礎でも打ち継ぎなしで施工する”一発打ち”でなければ、立ち上がり部分などに隙間ができ、シロアリの侵入経路になってしまう」と警鐘を鳴らす。また、配管周りや玄関ポーチなども被害が起きやすいポイントだという。特に玄関ポーチは床下空間がないためシロアリがアクセスしやすく、玄関ポーチ周辺だけでも土壌処理を併用するべきだとしている。

こうしたなか、新たな防蟻商品の提案も進んでいる。

エービーシー商会は、木造住宅の断熱・気密性能を高める1液タイプの発泡ウレタンフォーム「インサルパック」に防蟻性能を付与した「防蟻フォーム」を、23年6月にノズル&ガンタイプにリニューアル。1つの製品でノズルとガンのどちらでも施工できるようになった。「防蟻フォーム」は、ピレスロイド系防蟻剤とペパーミントオイルを含有し、シロアリの侵入を抑制する効果がある。また、ウレタンフォームの使用により躯体内結露を予防することで、高温多湿を好むシロアリが住みにくい環境をつくることにもつながる。

発泡ウレタンの普及により、自分のガンを所持する職人が増えたことに対応して、ガンでも使用できるよう改良した。ノズルタイプは一度で使い切らないといけなかったのに対し、ガンに取り付けての使用であれば、蓋を閉めた際の密閉度が高く中身が乾燥しないので使い切らなかった分を別の機会に再利用できる。バスユニット周りだけ基礎断熱を行うといった少量の使用がしやすくなり、販売は伸びているという。

さらに、23年8月には「インサル 基礎防蟻ジョイントハード」を新発売。基礎打ち継ぎに使用するテープタイプの止水材で、特殊処理を行ったブチルゴムが水和反応でコンクリートと結合し、住宅のシロアリと浸水被害を防ぐ。発売から間もないが、防蟻性能を持った止水材はほかになく、防蟻意識の高い工務店からはすでに採用されているという。

年間降水量が増加し、ゲリラ豪雨など雨による住宅の水害対策が急がれるなか、基礎からの浸水を防ぐ止水材は欠かせない住宅部材となってきている。なかでも「インサル 基礎防蟻ジョイントハード」の魅力は施工性のよさで、プライマーを塗ってテープを貼るだけのため、2人で1時間程度の作業で施工できる。乾燥待ちの時間もなく、日をまたいだコンクリート打設なども問題なく行える。棟数を伸ばしたい工務店は、基礎工事を専門業者に依頼することもあるが、止水材によっては、基礎工事業者が扱えない商品もあるといい、誰でも扱える同商品は工務店から反応が良いとする。

エービーシー商会の「インサル 基礎防蟻ジョイントハード」は、シロアリと浸水を防ぐ一石二鳥の止水材。省施工で現場の負担も軽減する

コニシは、シロアリ忌避性能を有したシーリング材「ボンド 防蟻シール」を18年2月より販売しているが、注力商品として今後提案を強化したい意向だ。

同商品は、主に、断熱材同士の接着や基礎断熱工法による断熱材目地、コンクリートとの打ち継ぎに使用する目的で開発されたもので、配管貫通部、型枠固定金具のシーリングなどにも使用できる。ボンド営業本部住宅グループの田中優リーダーは「防蟻入り断熱材なども出てきているが、断熱材の隙間からシロアリが侵入してしまっては元も子もない」とその必要性を訴える。

「ボンド 防蟻シール」の大きな特長は、安全性の高さとシーリング材としての品質だ。シーリング材に配合しているエトフェンプロックスは、シロアリが触れると神経毒で忌避する薬剤で、シロアリと同じゴキブリ目のチャバネゴキブリによる試験のKT値(50%が抑転(起き上がれなくなる)までの時間)は、初期で15分、10年経過相当の80℃8週間放置後で16分と高い効力を有する。一方、温血動物(恒温動物)に対しての毒性は、食塩の10分の1以下ともされており、非常に安全性に優れている。また、水溶解度が低いため、雨などによって薬剤が周辺に溶け出すことが少ない。

接着剤メーカーだからこその強みと言えるのが、シーリング材としての性能。防蟻シールとしてのJISは設定がないが、建築用シーリング材用の規格であるJIS A 5758およびJIS A 1439に基づく試験を行っており、接着性などにおいてこれらJIS規格に準拠する性能があることを確認している。また、速硬化タイプの変成シリコーンを使用しており、接着面の動きに対しての追従性を持ち、気温23℃、湿度50%の条件で、硬化時間は3時間程度と比較的短い。

高断熱、リノベ…各社の戦略とは

コニシが「ボンド 防蟻シール」の開発を始めたのは2012年頃。13年の改正省エネ法により20年までの新築住宅への省エネ基準義務付けが話題になるなか、基礎断熱工法が広がった際に防蟻断熱材のみでは継ぎ目からのシロアリ侵入を防げないのではと、防蟻シールの開発に乗り出した。

コニシの「ボンド 防蟻シール」。住宅の高断熱化の進展で基礎断熱工法が広がるなかで、断熱材の隙間からのシロアリ侵入を防ぐ対策として、販売に力を入れる

発売当初は断熱材メーカーへのOEMとして製造していたが、現在は外部へ向けても販売を行っており、今後、さらに販売網を広げていく。断熱材メーカー、ハウスメーカー、管材業者などのほか、断熱工事を手掛ける川下の企業へも訴求する。価格は通常の断熱材接着剤の2倍程度だが、特にハウスメーカーからは断熱性能の上位等級設立の話題が出始めたころから、高断熱住宅に関係する商品を紹介してほしいとの問い合わせが増えはじめ、ピンポイントで防蟻商品の問い合わせもあるという。こうした問い合わせに対して、同商品をOEMで販売してきた実績を生かして提案する。

上位等級への取り組みが進むなか、基礎断熱に断熱材を2重貼りする会社も出てきており、防蟻対策はより重要になっている。「防蟻シールは曝露試験に3~4年の時間を有するなど、開発にとても時間のかかる商品。競争相手が少ないため、住宅の断熱性向上への取り組みが進むなかで伸びしろは大きいのではないか」(田中リーダー)と、住宅の高断熱化が進むなかで防蟻商品の提案を一層強める。今後は展示会などでも積極的に商品をPRするという。

エービーシー商会は、「防蟻フォーム」について、基礎断熱工法の普及に伴い天端部分への発泡フォームの使用が一般的になりつつあることから付加価値提案を行いやすくなったとする。また、防蟻性能を謳う商品が市場に増えたことで防蟻への認識が広がり、説明がしやすくなったという。カタログで自社の取り組みとして「防蟻フォーム」の使用をアピールしている工務店もあるそうで、防蟻への需要の高まりがうかがえる。

「インサル 基礎防蟻ジョイントハード」についても、今後さらに訴求を強めたい考えだ。特に「外構の手配を施主に任せる住宅や1階部分が駐車場のインナーガレージなど、打ち継ぎ部が土壌に近い場合にはシロアリの侵入経路となりやすい」(インサル事業部東日本営業課 佐藤佳信課長)ため、浸水対策と同時に防蟻を行える特長をアピールしていく。

Envuは、基礎断熱工法に向けて独自の施工方法「アジェンダ施工(外周処理)」を展開する。基礎断熱工法は、床下空間に換気口を設けないため、床下の薬剤散布はあまり適さない。このような基礎断熱工法を始めとした、ベタ基礎や床下に人が入れないような住宅構造に対して、建物の外周に薬剤処理層を形成することで防蟻を行う。ただ、床下に入れないような住宅構造での防蟻処理については業界内での検討を進めている部分も大きく、変わった設計の住宅では土壌処理が行えない場合もある。大嶽譲治開発部長は「建物構造だけで劣化等級3を満たすような防蟻措置が認められる場合もあるが、そのような場合、実質的な防蟻が不十分なケースはあるということを住宅事業者に知ってほしい」と住宅設計における防蟻意識の高まりを望む。特にシロアリ被害が多い温暖地の住宅事業者には被害が出た際の修繕費を考えたら、事前の薬剤処理を行う方がよいとシロアリ対策を推奨する。

また、土壌処理ができないベタ基礎の既存住宅への対策としては、業界として床下の基礎コンクリートの上に薬剤を撒く方法も認められているが、これについては、自社で複数年にわたるデータ取りを行い、マイクロカプセル型の「アジェンダMC」であれば十分な効果を発揮できることを技術的にも検証している。

PR活動としては、23年11月より公式LINEを開設、今後害虫防除に関するコンテンツを発信していきたいという。「シロアリ被害のリスクは今も昔と変わらずに存在している。しっかりとした防蟻性能を持つ住宅を建てること、つまり、防蟻処理を行うことが大切」(大嶽部長)。

Envuは、公式LINEアカウントを開設。シロアリ防除の基本情報や、ハチクサン・アジェンダの特長・強みなどの情報を発信していく

日本ボレイトは、YouTubeでの発信などの効果もあり、施主からホウ酸処理をしたいという声が多くなっているという。こうした認知度の高まりから高性能住宅を建築する工務店ではホウ酸処理の採用が増えているそうだ。また、仕様の変更が難しいハウスメーカーの住宅では、施主が直接購入し住宅に採用してもらう、いわゆる施主支給でホウ酸処理の依頼がくるケースも増えており、住宅の性能が全体的に向上し差別化が行いづらくなっているなかで、ホウ酸による防蟻処理が大きな差別化要素になるのではないかとする。

また同社は、日本住環境、(一社)工務店フォーラムなどと共同でロングライフハウスツアーを定期開催している。主に、住宅事業者に向けた住宅の性能を体験型で学べるツアーで、こうしたツアーなども通して、住宅の性能維持における防蟻の必要性を訴えていきたい考えだ。

エコパウダーは、新たに基礎断熱工法に取り組もうとしている工務店やビルダーからの問い合わせに対応していく。棟数の多いビルダーになると、「防蟻処理まで頼みたい」という依頼も多いとし、全国に約3000の施工店を持つ強みを生かす。また、同社の施工店や代理店には防蟻業者が多いこともポイント。シロアリ被害に遭った住宅を訪問した際に、侵入口や点検すべき箇所を瞬時に判断できるためだ。新築住宅にしても、玄関付近や花壇に近い場所など土壌処理を行った方がいい場所の適切な判断と提案を行える。同社は、防蟻処理について施工業者の派遣も行っているが、保証期間の関係などで施工業者は変えずにホウ酸処理を導入したい工務店も多く、そうした場合には同社スタッフが施工業者を訪ね、直接ホウ酸処理の正しい施工方法を伝えている。

悪質なリフォーム業者の施工によるトラブルやイメージ悪化を避けるため、既存住宅市場の積極的な新規開拓は行っていないが、23年秋頃から大手リフォーム会社が新規提案として同社商品の取り扱いを開始し、100件以上の実績が出ているそうだ。

今後は、ホウ酸による防蟻処理を知らずに家を建ててシロアリ被害に遭う施主を減らすため、エンドユーザーへのアプローチに力を入れていきたいとした。また、「省エネ性や耐震性の高い住宅を建てても、木部や断熱材がシロアリに食べられてしまえば、本来の性能を発揮できない」(斎藤社長)と、防蟻の知識が浅い設計士などへも重要性を訴えていく。

温暖化で北上するシロアリ
海外からの脅威も

シロアリ被害が発生する地域にも変化が現れている。温暖化などの影響でシロアリが北上し、北海道などの寒冷地でもシロアリの被害が報告されているのだ。

例えば、エービーシー商会の佐藤課長は「23年に入ってから『防蟻フォーム』が北海道でも売れるようになってきた。実際に函館市でシロアリ被害が発生したことにより、工務店からの注目度が高まっているようだ」という。また、コニシの「ボンド 防蟻シール」を全棟で採用しているのも東北地方の住宅事業者だ。

海外からの脅威としてアメリカカンザイシロアリも勢力を大きくしている。アメリカカンザイシロアリは乾燥に強く、蟻道をつくらずに屋根裏やベランダなどいたるところから侵入するため、これまでの地下シロアリに対する処理では防ぎきれない新手の脅威だ。

日本ボレイトは全国で年間70棟ほどアメリカカンザイシロアリの駆除を行っているが「アメリカカンザイシロアリは駆除できる業者が少なく手一杯の状況」(浅葉社長)とする。また、アメリカカンザイシロアリの対策としては、新築時の全構造材処理をオプションで行っているが、この採用が伸びてきている。アメリカカンザイシロアリへの対策は住宅全体に行うため、健康リスクがない無機薬剤のホウ酸でしか行えない。この点も特に住宅について勉強している施主からの採用に繋がっているという。

エコパウダーでも、アメリカカンザイシロアリへの対策として「エコボロン PRO」を採用する住宅事業者が出てきている。ある事業者は、ハイグレードの住宅商品の付加価値として「エコボロン PRO」によるアメリカカンザイシロアリ対策を適用し、下のランクへもオプションとして取り入れる方向で進めているそうだ。

高性能住宅の柱の一つとして、防蟻方法にスポットが当たる日が来るのも遠くないだろう。