2024.3.7

国産材を活用した木製サッシの本格生産に挑む「日本の窓」

日本の木で、日本の窓をつくる

脱炭素社会の実現や国内の森林資源の有効活用といった社会的な要請を受けて、「アルミから樹脂へ、そして木へ」という流れが生まれつつある開口部。こうした動きに先んじて、国産材(スギ無垢材)を活用した木製サッシの本格生産に乗り出しているのが「日本の窓」(青森県十和田市、荻野智二代表)だ。

かつて日本の窓は木製でした。時代が変わる中で、その技術を一度手放してしまった」。日本の窓の佐藤正志専務取締役は、そう語る。

地域のスギを丸太のまま使用するなど、木質感溢れる工場

日本の窓は、東京都世田谷区に本社を構える工務店「東京組」が2016年に設立した会社だ。
設立のきっかけは、2013年末に発生したアルミサッシなどの通則認定問題。通則認定を取得していたアルミサッシの多くが防火性能を満たしていないことが分かり、通則認定から個別認定へと切り替わることになった。その結果、防火認定を取得したサッシの価格が値上がりすることになったのだ。

東京組が住宅を建築するエリアの多くは、防火地域、もしくは準防火地域。防火認定を取得したサッシの値上がりを簡単に受け入れることはできない。それなら自社で作ってしまおう―。そこから日本の木で、日本の窓をつくるという挑戦が始まる。

東京組では、以前から木製サッシを採用しており、主にはイタリアメーカーの商品を使っていた。「木製製品については日本の技術の方が優れているという印象がありますが、実際にはヨーロッパの技術の方が進んでいます」(佐藤専務取締役)。

イタリアの最新加工機で製造工程を効率化

自社で木製サッシを製造するために、イタリアの木製サッシをオフィスの隅っこで分解することから始めたという。

しかし、日本とイタリアでは使用環境が大きく異なる。最大の課題は、高温多湿の日本の気象条件の中で、木の変形を踏まえた構造にすること。イタリアの製品はビスなどを使っているが、それでは木の伸縮に対応できない。そこで、ビスを使わずに篏合接合を行うことで、木の収縮によってサッシが変形することを抑制することにした。

防火認定を取得する上での苦労もあった。木材自体は高温になっても炭化するだけで燃え難いという特性を備えているが、木とガラスの熱伝導率の違いによってガラスが熱割れしてしまうという問題があったという。

試行錯誤の結果、サッシ枠の構造などを見直すことでガラスの熱割れを抑制することに成功。二重ガラスの商品で防火認定を取得した。今後はトリプルガラスの商品での認定取得にもチャレンジしていくそうだ。

一方で、本格生産に向けた取り組みも進めた。イタリアの大手メーカーと提携し、現地へスタッフを派遣。木製サッシの製造工程などを学んだ。イタリアの専門家を招き、日本での研修なども実施した。

国産のスギ材で製造した木製サッシ
木の収縮や防火性能などを考慮した構造

イタリアの先進的な加工機を導入することも決めた。「イタリアの加工機であれば、複雑な加工であっても一回の切削で終了します。日本の機械では、なかなか難しいでしょう」(佐藤専務取締役)。

工場建設の地は青森県十和田市。1日60窓の木製サッシを生産できる工場を2017年に完成させた。八甲田山を望む十和田の大地の工場には、地域産のスギ材を丸太の状態で利用しており、同社の木へのこだわりが感じられる建物になっている。

現在、イタリアの最先端の加工機を使いながらも、人間の手も介しながら丁寧なモノづくりを受注生産で行っている。国内で木製サッシの製造に取り組む企業の中でも、ここまで本格的な生産ラインを稼働させているケースは珍しい。

人手も介しながら受注生産による丁寧なモノづくりを行っている

東京組だけでなく、他の住宅事業者へも販売しており、ウッドチェンジの流れの中で、最近では問い合わせや引き合いが増えているという。

日本の窓では、青森県などで採れるスギ材を活用している。ヒノキなどと比較すると柔らかいと言われるスギだが、実は窓の材料に適しているようだ。「商品化に当たり、イタリアに国産のスギを送ってサッシに加工してもらいました。その結果、全く問題なくサッシに使えることが分かり、むしろスギの加工のしやすさがプラスに働いています」と、佐藤専務取締役は話す。

また、国産のスギ材を使うことで、大径木問題にも一石を投じる。

大径化したスギ材は、一般的な加工機による製材が難しく、海外に輸出されフェンス材に利用されたり、場合によってはチップ化されてバイオマス発電の燃料になってしまうこともある。製材されたとしても、丁寧な木取りを行わないと、多くの端材が出てしまうこともある。

「他の杉よりも長い年月をかけて育った大径木が有効に活用されていないというのは、本当にもったいない」(佐藤専務取締役)。

木製サッシであれば、大径木を製材し、残った部分を材料として利用できる。構造体などに使う製材は、芯持ち材と呼ばれる丸太の中心部が使われることが一般的だ。

対して木製サッシの材料は、辺材という丸太の外側の部分を使う。つまり、上手く木取りを行えば、1本の大径木から構造材とサッシの材料を調達できるというわけだ。

このことは、山側へ還元される利益を増やす可能性も秘めており、植林を前提とした森林経営につながることが期待される。

佐藤専務取締役は、木製サッシの普及に向けた課題について、「木は燃えやすい、腐りやすい、木製サッシは重くて施工が難しいといったイメージを変えていくことが一番大切ではないでしょうか。加えて、闇雲にメンテナンスフリーを求めてしまう意識も変える必要があります。ダイヤモンドや金でない限り、メンテナンスは絶対に必要になります」と指摘する。

かつては木製だった日本の窓。建付けなどに不具合が生じても、修理をしながら使い続けてきた。窓を木に戻すということは、そうした住まい文化を再構築することにもつながるのかもしれない。

日本の窓の木製サッシは、将来的に取り替えることを想定した施工方法を採用しているという。ヨーロッパなどのように、建物を100年以上にわたり使うためには、窓を取り替えることも想定する必要があるからだ。

日本の木で、日本の窓をつくる―。日本の窓の挑戦は、〝古くて新しい変化〟をもたらしてくれそうだ。