2024.2.27

積水化学工業、吉田匡秀氏が新住宅プレジデントに就任

都市部の高付加価値住宅、リフォームを一層強化

2024年1月1日付で、吉田匡秀氏(常務執行役員 住宅カンパニー 東日本営業統括本部長(兼)東京セキスイハイム 代表取締役社長)が住宅カンパニープレジデントに就任した。インフレにより特に注文住宅市場が苦戦を強いられる中で、どのような舵取りでこの難局を乗り切っていこうとしているのか。「数を追うというこれまでの基本方針は維持しつつ、都市部での高付加価値住宅、堅調なリフォームの一層の強化で利益を稼ぎに行く」と話す。

住宅セグメントの2023年度第3四半期決算は、平準化の推進、固定費抑制、および堅調なリフォーム事業により売上高1267億円(前年同期比マイナス23億円)、営業利益65億円(同マイナス2億円)、売上高、営業利益ともに計画をやや上回るも前年並みの実績となった。吉田プレジデントは、「受注は苦戦してるが、天候が良い日が多く工事が例年以上にうまく進んだ。東京、近畿エリアで、規模、単価の大きい住宅の割合が多く、数量では劣勢であったが第3四半期は前年並みで終えることができた」と話す。

一方で、第4四半期も新築の棟数減で厳しい状況が続いている。10月計画に対して200棟届かない状況だ。固定費の圧縮、リフォーム、不動産まちづくりで穴埋めをするが、下期見通しは、売上2635億円(計画比マイナス107億円)、営業利益140億円(同マイナス25億円)ともに下方修正した。通期見通しについては、売上高5283億円(前年同期比マイナス91億円)、営業利270億円(同マイナス58億円)と「非常に大変な状況になっている」(吉田プレジデント)。

ストック分野に人員をシフト
オーナー宅の定期点検を強化

「収益力強化の一環として間接人員を堅調なストック分野にシフトさせている」と話す吉田プレジデント

こうした状況の中で収益性改善の取り組みをスタートしている。新築の数量、請負、建売の受注が減っており、間接人員が手余りになる可能性がある。数量に見合った規模まで間接人員を圧縮し、その間接人員を堅調なストック部門にシフトし、リフォーム事業の強化により収益力強化を目指す。まずはオーナー宅の定期点検から快適な家に改装するリフォーム提案を強化している。点検業務を起点に丁寧にヒアリングを行うことで受注率を高められる。とはいえストック部門にシフトした人員がいきなり1人で動くにはハードルが高いため、チームで動ききっちり受注を取りに行く体制を整えている。リフォームについては国の補助金が充実しており全国的に追い風が吹いているという。「受注棟数の下落傾向が続いていたが、2024年1月にプラスに転じ下げ止まった。新築事業の収益性も徐々に回復してきている。ストック部門の人員強化で収益性の改善に取り組み、グループでもう1回上昇していく」と話す。

2020年12月からは、「買取再販『Beハイム』展開プロジェクト」をスタートした。既存セキスイハイムを買取り、「新しい価値」を付加したアップサイクル住宅でストック型社会へ貢献する。

地方では「買える商品」を投入
当面は薄利、数量で稼ぐ

神吉利幸前プレジデントからバトンを受けとった吉田新プレジデントは、どのように独自色を打ち出そうとしているのか。「全体の考えは神吉のときから変えていない。当社には、『地球環境にやさしく60年以上、安心して、快適に住み続けることができる住まいを提供する』という理念がある。面積や金額、利益だけではなく、きっちり数を増やし、たくさんのお客様に喜んでいただきたい、これが大前提にある」と話す。同社が近年、特に注力するのは、ユニット工法・工場生産の技術を核とした新築戸建住宅「セキスイハイム」による分譲・建売住宅の拡販だ。2023年度からの中期経営計画「Drive 2.0」では、2025年度に1万1500棟、うち分譲3650棟、分譲比率32%まで拡大させる計画を立てた。2022年度比500棟の増加分はすべて分譲住宅で積み上げる。

築31年のセキスイハイムをリノベーションした「セキスイファミエスギャラリー松戸」の1階室内。ユニット工法を生かしオープンプランに改装した

しかし、特に地方で分譲住宅の販売が苦戦している。「原材料高のコストプッシュでインフラが起こり、住宅価格が上昇し、買えないお客様が出てきている。従来の価格の付け方で提供しようとしたら買えない方の割合が増えている」(吉田プレジデント)。地方部の、特に東北エリア、中四国エリアで、数量的にも苦労しており、その対応として、地域に合った「買える商品」を投入していくことを進めている。「生産性を上げてつくり出した原資を、一部再配分し、固定費を下げ、投資を行い、地域に合った最適な商品にして出していく。当面は薄利で売ることになる。その中で工場の生産体制などを見直し、利益が後から追いついてくるという形にしていきたい。地方では、今はきっちり数量を取り、数量で稼ぐようにしていきたい」と話す。

都市部では高付加価値住宅に注力

都市部で販売好調な『デシオ-T』の代表的な外観イメージ

一方で、都市部エリアを中心に、高価格帯の高付加価値住宅の販売が好調だ。東京セキスイハイムと共同開発した省エネ・子育て住宅『T』シリーズは2023年11月からの2か月間で販売エリア全体における受注は100棟を超えた。首都圏での好評を受け、三階建市場にて同様のニーズがある近畿・中部エリアへも販売を拡大する。セキスイハイムの二階建・三階建住宅に「省エネ」×「子育て」支援アイテムをパッケージし首都圏で展開している商品『T』シリーズのうち、三階建住宅『デシオ‐T』を、近畿・中部エリアへ販売拡大する。『デシオ‐T』は、狭小敷地でも屋根スペースを有効活用し、太陽光発電システムの大容量化と魅力的な軒下空間を実現。独自の防犯システムも加えて子育て世帯の豊かな暮らしとサステナブルな社会の実現に貢献する。東京、近畿、中部エリアの合計で年間150棟の販売を目指す。「他のライバルメーカーに比べて、当社は高額層への対応が少し弱かった。しかし近年、東京、大阪、愛知などで高付加価値住宅の実績が増え、手応えを感じている。今まで以上にきっちり伸ばしていくということは、従来よりも強くやりたい」と話す。

※本文中の吉の字は正しくは「土」に「口」です