2024.1.31

ライフデザイン・カバヤ、ベトナムで木造建築普及へ 官民連携でプロジェクト推進

大工、工務店が海外で働くことができる仕組みづくりも

ライフデザイン・カバヤは新規事業一つとして海外事業を位置づけ、ベトナムにおいて木造建築普及を目指すプロジェクトを進める。ベトナム政府機関関係者にコンタクトし信頼関係を築き、木造建築に関する基準づくり、木造技術者育成などの環境整備を進める。木造産業という新産業の創出につなげていきたい考えだ。

ベトナムプロジェクトの進捗状況について説明するライフデザイン・カバヤの窪田健太郎社長(左)と山岡嘉彦執行役員・海外事業責任者

ライフデザイン・カバヤは、新築住宅の既存事業に加えて成長事業、新規事業と事業の多角化を進め急成長を遂げる。新築住宅事業を「既存事業」と位置づけ軸足を置きつつも、土地や分譲住宅を扱う不動産事業、リフォーム事業、エクステリア事業という3つの事業を「成長事業」、さらに、木造ゼネコンとして非住宅の設計、施工、管理を行う特建事業、CLTの普及を目指し全国で展開するFC事業、東南アジアへの木造住宅の普及を目指す海外事業という3つの事業を「新規事業」として事業の多角化を進める。その結果、2021年の売上は325億円となり、旧中長期経営計画の目標を前倒しで達成。新たに策定した中長期経営計画では、2030年に売上高500億円達成を目指す目標を掲げる。2021年の売上高325億円の内訳は既存事業が59%、成長事業が36%、新規事業が5%となっている。これを2030年に売上高500億円を目指し、内訳については、既存事業40%、成長事業40%、新規事業20%の比率に変えていく計画だ。

ベトナム政府関係者とパイプ
木造普及事業がスタート

近年、特に注力しているのが海外事業で、まずは、今後爆発的な人口増が見込まれるベトナムにおいて木造住宅建設技術を拡大させ、将来的には東アジア、東南アジア地域などへの展開を計画する。

外務省・JETROなどのパイプを生かしてベトナム政府関係者などとの関係構築を進め、ベトナムの建設省(MOC)のトップと面談を実施しベトナム政府のバックアップを取り付けた。その後、MOCを通じて建設科学技術庁(IBST)の幹部との面談により関係を構築。これにより政府指導でベトナム建築市場への木造普及事業がスタートしている。

その一環として、IBSTの研究所の敷地内(ハノイ)に、モデルハウスとして木造2階建て約214㎡規模となる木造モデルを建築。IBST60周年を記念する建物で、基本設計・木工事・屋根工事・板金工事の施工を同社が担当し、2023年7月10日~7月13日の4日間で建て方工事を完工した。

木造設計基準、木材の規格などを整備

地球環境の保全、脱炭素、持続可能な社会の構築といった観点から、循環型資源である木材を使用し、炭素貯蔵効果が期待できる木造建築の重要性は高まっている。また、スギやヒノキを利用した部材、製品並びに木造関連の技術、設計、工法などを集大成とした木造建築、特にプレカット、金物などを駆使し、高性能、高品質を誇る軸組金物工法による木造建築は、高付加価値なものとして世界的に注目を集めている。

ベトナムにおいても富裕層を中心に、木造建築への関心は高まっているが、既存建築物の大半は鉄筋コンクリート造であり、木造建築はほぼゼロという市場だ。

ベトナムにおいて木造建築を普及させていくには、市場の規制、製品・技術規格の整備、建設の許認可手続きなど、個々の企業レベルでは対応しきれないハードルは多い。

IBST の研究所の敷地内(ハノイ)に、建設した木造2階建てモデルハウスと、その室内。カフェテラスとして使用されている

そこで、同社が先導する形で2023年11月には、製材事業者、集成材メーカー、木材防腐防蟻処理剤メーカー、金物メーカー、建材流通事業者、プレカット工場、ビルダーなど、川上から川下の事業者まで幅広い事業者が参加する(一社)日本木造建築海外推進協議会(JTOP、理事長:東京大学 青木謙治准教授)を立ち上げた。官学の協力も得ながらオールジャパンの体制で海外向けの木造建築普及を目指す。

JTOPとIBSTが連携し、ベトナム国内の木造設計基準の整備、木材のベトナム規格認定取得のための材料試験を実施するための官民連携プロジェクトもスタートしている。木造建築設計基準&規格の整備、併せて製造者規格「TCCS」の策定作業を進める。このTCCSとは、安全と品質を担保するための製造者規格で、基準が整備され設計方法が明確となることで、ベトナム国内の建設事業者などは、ベトナム国内でのプロジェクトにおいて木造建築を採用しやすくなる。

また、ライフデザイン・カバヤは、ベトナム最大の建設コンサル会社VNCCなど、民間企業との連携も進めている。リゾートヴィラ、富裕層向け別荘などのVNCCが進める都市開発事業に参画し、木造建築の普及を図る。

現地大学と連携し木造技能者の育成も

ハノイ建設大学(HUCH)やハノイ交通運輸大学(UTU)など大学と連携し、木造技術者育成に向けた取り組みも進める。

UTUとの提携により、工学部卒業の学生を対象に、ベトナムと日本の両国で大工育成のカリキュラムを用意し育成する取り組みを行っている。

技能実習者として日本の住宅建設現場などで働きながら大工の技能を学び、その後は、ベトナムで、木造建築の技能者として活躍してもらうことを想定している。そのための起業や雇用のサポートも行っていく考えだ。現在、1期生・2期生の5名が日本国内で実習期間中で、3期生1名がベトナムでの実習期間中となっている。

窪田健太郎社長は、「今はまだ、ベトナムプロジェクトにおいて投資額を回収で来ていないが、間違いなく5年先、10年先には利益を出す事業にしていきたい。日本の大工、工務店が海外で普通に働けるような環境ができることが理想、今大手ハウスメーカーは海外へどんどん進出しているが、この海外進出の流れに乗り、規模の小さな会社も参加できる仕組みをつくっていきたい。日本の木造住宅産業は中小企業に支えられている。この人たちが元気にならないと住宅・建設業界が元気にならない」と話す。