(一社)住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会、「いえかるて」の普及拡大に向け中計策定
登録データの量・質の向上を目指す
「いえかるて」の普及拡大に向け、2027年度までの中期事業計画を発表した。既存住宅の履歴情報の登録件数を30万件/年に拡大するほか、不動産IDなどとの連携により、情報資産価値を高めていく方針だ。
(一社)住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会は、「いえかるて」を2010年から運用している。「いえかるて」とは、住宅がどのようなつくりで、どのような性能があるか、また、建築後にどのような点検、修繕、リフォームが実施されてきたのかなどを記録した、いわゆる住宅履歴情報のこと。「いえかるて」を登録した物件は、「共通ID」という32桁の番号が個別に割り当てられ、その住宅に係るあらゆる情報を一括管理することができる。これにより、円滑な物件の流通や維持管理に貢献してきた。
しかし、共通IDの発行件数は21年度が約1万1000件とピーク時の約2万弱件から大幅に減少。同協議会の正会員数も2015年には59社だったが、現在は38社に減少しており、住宅履歴情報の累計蓄積数も342万件にとどまっている。
こうした状況を改善するため、同協議会はこのほど2027年度までの中期事業計画を策定。国を挙げて進めているデジタル技術の活用や、良質な住宅ストック形成およびその活用促進に向けた対応力の強化を図っていくとした。
中期計画では、「国民の豊かな生活に資する住宅情報資産の構築・活用向上」を達成目標に掲げ、①既存住宅市場の開拓、②蓄積データの情報資産価値の向上、という2つの基本戦略を設定した。
①では、住宅履歴の登録拡大に注力し、中計期間の5年間で既存住宅の履歴情報の登録件数を30万件/年にしていくとした。また、新築住宅についても登録件数を5万件/年に拡大させ、蓄積データの“量”の拡大を目指す。併せて、リフォーム事業者、宅建事業者、住宅設備事業者などの会員増強も進めていくとした。
一方、②では主に「いえかるて」の登録データと不動産IDなどの統合データベースの連携や、API機能の強化を行い、蓄積データの“質”の充実に取り組む。
同協会は、中期事業計画の効果として、計画終了後も継続して年間30万件を超えるペースで共通IDの発行件数が増加すると見込んでおり、「いえかるて」が住宅履歴情報の公的なデータベースになっていくことが期待されるとした。
ストックビジネスに「いえかるて」は不可欠。住み続けられる街づくりの実現へ
(一社)住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会
齊藤広子会長
住宅分野についての課題は様々ありますが、ストックビジネスの観点で言えば、空き家問題は避けて通れないトピックの一つです。
空き家は年々数が増えており、全住宅のうち13.6%を占めると言われています。そのなかには、特に明確な理由がなく空き家になっているものがあり、私は「なんとなく空き家」と呼んでいます。そして、それらの活用はあまり進んでいないのが現状です。
では、なぜ空き家の利活用はなかなか進まないのか。それは、多くの空き家について、その実態が明らかになっていないからだと考えています。実態がよくわからない家に住みたいと思う人はあまりいないでしょう。空き家問題は、得体が知れない不動産には価値がないことを示す一つの象徴と言えます。だからこそ、「いえかるて」を活用してその実態を明らかにしていくべきなのです。欧米の住宅市場では、中古流通は当たり前です。日本もぜひそうなってほしいと思います。
中古住宅流通を図る上で、「いえかるて」の重要度は今後着実に高まっていくと見込んでいます。個人的には、「まだ使ってない人はいるのでしょうか?」と言いたいくらいです。ストック活用を促し、住み続けられる街づくりを進めていくため、「いえかるて」の普及にこれからも取り組んでいきます。
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