クラウドカメラで業務を効率化 現場管理の合理化・省人化に大きな期待

現場管理の遠隔化導入の意味と効果 トヨタホーム株式会社

人材不足が深刻化するなか、ITツールを用いた遠隔化により現場管理の業務を効率化する動きが進んでいる。なかでも遠隔巡視に対する期待は高く、国からも巡視義務について24年6月までに見直すと公表されるなど、遠隔巡視に対する注目が集まる。品質を確保したうえで省人化を図ることを目的に、セーフィー株式会社が展開するクラウド録画サービス「Safie(セーフィー)」を導入したトヨタホーム株式会社に狙いや効果について聞いた。


トヨタホーム株式会社
設計建設推進部
建設推進室 建設管理推進G
原﨑 大地 氏

トヨタホーム株式会社
設計建設推進部
建設推進室 建設技術G
和佐田 翔太 GM(グループマネージャー)

──クラウドカメラによる遠隔化を導入しようと考えた背景、また、抱えていた課題などから教えて下さい。

和佐田 工事管理者の業務負荷削減はトヨタホームに限らず、ハウスメーカー共通の長年のテーマです。例えば、施工不具合による手戻り、また、現場確認に行くための移動時間など、これら業務の改善を進めることが大きな課題です。

こうしたなか2020年、グループ会社におけるワーキング活動のなかでクラウドカメラの情報共有があり、課題解決に動いたことが導入するきっかけになりました。クラウドカメラを使用することで業務負荷を減らし、施工品質を確保できる可能性を見出したため、導入を決めました。具体的には、クラウドカメラを活用することで確認の精度を高めることや、立会いの回数自体を減らすことができないかという狙いです。

セーフィーのサービスを導入していたグループ会社にまずは話を聞いてみました。その結果、私たちがイメージしている現場の効率化に役立つサービスだと思い、2021年から一部の現場で試験的な導入を始めました。「Safie」は俯瞰で見ることができる固定カメラ、より細かなところを見ることができるウェアラブルカメラがありますが、その両方を併用しています。

──導入当初の現場の反応はどのようなものでしたか。

原﨑 IT機器に慣れている工事管理者、現場の職方さんにとっては、大きな抵抗もなく使いこなすことができていましたが、慣れていない現場関係者にとっては抵抗感というか戸惑いがあったのは事実です。

例えば、工事管理者は実際に現場に行って自分の目で確認した安心感のようなものを大切にしており、職方さんは従来の工事の進め方のなかに新しい仕組みが入ってくることに対する違和感を持っていました。こうした考え方の中での導入となるため、戸惑いのようなものを強く感じました。日ごろスマートフォンを使っていないような方がウェアラブルカメラをポンと渡されてもなかなか使いこなすことはできません。導入のところで躓いてしまうのです。

和佐田 固定カメラかウェアラブルカメラ、いずれを使うかでも違いがありました。定点で使う固定カメラの場合は、特に問題なく活用できたのですが、ウェアラブルカメラは自分で装着して操作するといった能動的な動作が必要となりますから、そこで発生する手間が一つのハードルになっています。

──試験的な導入を踏まえ、具体的にはどのように導入を広げていったのですか。

和佐田 トヨタホームは全国に17の販売会社があり、一社一社会社ごとに、しっかりと狙いや効果を説明し、徐々に導入を進めました。まだ、全国的な展開という段階には至っていません。例えば、事務所から遠いところに現場があるような、より移動時間の削減効果が期待できる物件などから導入を進めています。まずは販売店ごとの導入を推進し、現在、約4割程度の販売店で導入を開始しています。

さあ明日からこの仕組みでやろう、と言って実現できるものではありません。クラウドカメラによる遠隔巡視の目的は業務の効率化ですから、導入すること自体で業務負荷が高まったり、非効率的になったりしては意味がありません。ですから一社ごと、一現場ごとに狙いを理解し、これを使えば効率的になるという理解が重要になるのです。


トヨタホームでは品質を確保したうえで省人化を図ることを目的に遠隔管理を開始。現場の状況が分かるなど現場管理者が体感し一定の成果が出ている

──既に導入した現場での効果、手応えはいかがですか。

原﨑 遠隔地での導入は、そもそも現場への移動時間の負荷が大きいですから、そこでは一定の成果が出ています。また、固定カメラ、ウェアラブルカメラを問わず、現場の状況が分かるという点について工事管理者はありがたいと思っているようです。例えば、台風が来た時、現場の養生が剥がれていないかどうかを現場に行かなくても確認できます。こうしたメリットを現場管理者が体感し、「あ、これいいよね」と徐々に広がってきています。工事管理者はもちろん、職方さん、さらに販売店と現場に関わる人すべてが理解し、広がっていくことが理想の形だと思っています。

全国的な全面導入の時期的な目標は2025年としておりますが無理のないような導入推進をしています。というのも、いついつまでという目標や期間を定めてしまうと、どうしても実際に使用する方に対して無理が生じてしまうと考えているからです。

定点カメラのみの導入を進めたいという販売店のリクエストを頂くこともあり、今後は、こうした販売店ごとのニーズへの対応が必要になってくると考えています。販売店ごと、さらには販売店のなかでもエリアによってカメラが必要な状況はまったく異なります。導入の広がりとともにそのニーズも変わってくるでしょう。そこに対応していくことが非常に大事になると考えています。

──最後に、あらためてクラウドカメラの遠隔管理で目指すゴール・姿をお伺いしたい。

原﨑 販売店においては、現場における省人化が一番の目的です。普及活動、導入現場の拡大を進めていくことで、少ない人数でも品質を落とさずに現場を管理することができる、そのような省人化の実現が最終目的だと考えています。例えば、工事管理者が各現場を巡回しなくても管理ができるように事務所内でモニターによる遠隔集中管理なども早期実現に向けて取り組んでいきたいと思っています。
 
また、メーカーであるトヨタホームとしても社内の業務にクラウドカメラを導入しています。例えば、住宅の新商品や新しい部材を出した時、納まりの確認に現場に行くという機会があり、これまではそれぞれの部署の関係者全員で行っていました。クラウドカメラを導入したことで、そこにかける人数を削減することができ、業務工数の削減に大きくつながっています。販売店だけでなくメーカー機能の業務効率化にも大きく役立ちます。

加えて、若手社員の育成という点でも活用しています。トヨタホームのなかでも現場管理者を育成していますが、若手の社員がウェアラブルカメラを現場に持っていって、その場で撮影しながら上長に報告・連絡・相談するという形でも活用しています。

今後、職方さんや工事管理者が減ってしまうことも想定して、先を見据えた省人化や業務効率化に取り組んでいきたいと思います。

セーフィー株式会社
東京都品川区西品川1-1-1 住友不動産大崎ガーデンタワー
https://safie.jp/ MAIL: bu2-contact@safie.jp