2023.12.12

トヨタホーム、中期計画第2フェーズがスタート

賃貸、街づくり、買取再販など事業多角化に新たな取り組み

トヨタホームが、2030年度を最終年度とする中期計画の第2フェーズを迎えた。
新築戸建住宅中心から事業の多角化に向け、街づくり分野、ストック分野などでさまざまな新たな取り組みを打ち出している。

トヨタホームは、2020年度に30年度までの中期計画を策定、その取り組みを推進している。22年度までのフェーズ1で新築事業の体質強化、新築以外の事業の拡大・種まきを行い、23~25年度のフェーズ2で既存事業の磨き上げと新しい事業のチャレンジを進め、26~30年度のフェーズ3で競合他社が真似できない街づくり事業者となることを目指している。

新築事業の売上高は、23年度見込みが950億円で、内訳は戸建注文住宅が720億円、戸建分譲が180億円、賃貸住宅が50億円。フェーズ2の最終年度の売上高は1080億円(23年度見込比13.7%増)を計画している。

主力の戸建注文住宅は、ユニット工法による工場生産化率85%以上による短工期、高品質という強みを生かし、建築分野の2024年問題の影響をミニマイズ化する。また、差別化という点で大きな強みとなっている全館空調「スマート・エアーズ」のさらなる訴求に力を入れる。健康や快適が強く求められるなか、住宅内の温度差を抑え、省エネ・高効率である「スマート・エアーズ」の装着率は23年4~9月で62.1%にまで高まっている。

戸建注文住宅は商品力の強化が大きなテーマだ。22年9月に普及価格帯商品の「SINCE LQ」を12年ぶりにモデルチェンジし、ZEH化を図るとともに全館空調を標準装備した。コストパフォーマンスを重視する一次取得者の深耕が大きな目的だ。現在、このLQをベースに愛知県の地域対応商品を開発中で、エリアのニーズを落とし込んだ仕様・装備となる。来年1月に発売する予定で価格は3000万円程度となる見込みだ。

これらの取り組みにより戸建注文住宅の売上高を24年度770億円(前年度比6.9%増)、25年度750億円(同2.6%減)を計画する。

一方、新築事業で伸びしろが大きいのが戸建分譲住宅と賃貸住宅だ。

戸建分譲住宅については、19年度の490棟から、512棟、507棟、521棟と順調に供給棟数を拡大してきており、23年度は540~550棟の販売を目指している。同事業拡大のため土地取得強化を続けてきており、すでに愛知県内で約400区画、首都圏で250~300区画分は仕入れ済み。今後、順次販売していく。売上高は23年度見込みの180億円から、24年度200億円、25年度210億円を計画している。

一方、賃貸住宅の22年度の受注棟数は71棟と手掛け始めたばかり。今年度、その取り組みを強化し、今年5月に新ブランド「TH-Maison」を導入した。これまで鉄骨ラーメンユニット工法と鉄骨軸組工法の2つのブランドを展開してきたが、統一ブランド導入し、軽量鉄骨、重量鉄骨をラインアップするなど提案力を強化した。売上高を23年度見込みの50億円から、24年度80億円、25年度120億円と大きく成長させていく考えだ。

各地に魅力的な街づくり
愛知県で高級分譲の展開も

事業多角化の大きな柱の一つが街づくり分野である。

新築事業 売上高の実績・計画

郊外型分譲住宅は、「BRIDGE Life Platform」(埼玉県久喜市、172区画)の契約が順調に推移、また、24年には、「草加松原」(埼玉県草加市、373区画)などが街びらきの予定であるなど、テーマ性を持つ魅力ある街づくりに取り組んでいる。

ストック事業 売上高の実績と計画

一方、都市部では戸建住宅分譲の「Toyota Home Est」の展開が注目だ。郊外における大型分譲の一方で、都市型分譲では東京都千歳船橋で高額物件を販売するなどの取り組みを進めてきたが、こうしたマーケットに底堅い需要があると判断、22年、新たに新シリーズを導入し、第一弾として東京都世田谷区で4邸の分譲を行ったのを皮切りに、世田谷区の成城や経堂で展開してきた。「こだわりの生き方にふさわしい、こだわりの邸宅」をコンセプトに、販売価格は1億5000万円程度という高級分譲住宅で、狭小敷地ながらも3階建てによる独創的なプランニングを提案する。

こうした首都圏で得たノウハウを生かし、25年度にはエストシリーズ名古屋を展開する予定。首都圏と異なり住環境の良い立地は第一種住専が多いことから、緑を生かし高いデザイン戦と先進のテクノロジーを落とし込む住宅とする予定で、第一弾として千種区月ケ丘が計画されている。

ストック分野に注力
循環型のシステム構築を進める

中期計画フェーズ2の重点取り組み分野のもう一つがストック事業だ。ストック事業は大きくリフォームと不動産流通に分けられ、23年度の売上高見通しはリフォームが115億円、不動産流通が66億円となっている。

築後一定を経た住宅に対して、住み続ける場合はリノベーションの提案を、住み替える場合はスムストックの提案、住み替え先のマンションやサービス付き高齢者住宅など、さまざまな選択肢を用意し、循環型の住宅システムの構築を進めている。

スムストックの22年度の販売実績は94件で、23年度110件、25年度130件を計画。また、捕捉率は31%と業界第2位であり、25年度に39%を目指している。一方で、23年7月に買取再販の新ブランド「SumCle(スムクル)」を立ち上げた。これまでスムストック査定を活用して自社物件について買取りを行ってきたが、買取再販事業を推進していくため、新たに統一ブランドを立ち上げたものだ。同社が建設した戸建住宅、一般のマンションを対象に25年度100件を目指している。「ストック分野の強化に徹底的にこだわり、相当強化している」(後藤社長)と、25年度に220億円の事業に育てていく考えだ。

「収益面で24年度は踊り場を迎えるとみているが、中期計画の第2フェーズ最終年の25年度にジャンプし、第3フェーズに向けて弾みをつけたい。そのためにも事業の多角化を進め、安定的な経営基盤を作り上げる」(後藤社長)と、25年までに新たなトヨタホームの姿を確立したい考えだ。