2023.12.1

住宅構造研究所、木製筋かい型制振壁を本格発売

ダンパーを小型化し低コストを実現

住宅構造研究所は木製筋かい型制振壁「PHOENIX TREE(フェニックスツリー)」の本格販売を開始した。ダンパーを小型化したことで低コストを実現している。コスト面で導入が見送られがちな住宅での「制振」の敷居を下げたい考えだ。

住宅構造研究所(埼玉県八潮市・金井建二代表取締役所長)は、木製筋かい型制振壁「PHOENIX TREE(フェニックスツリー)」の本格販売を2023年9月から開始した。

住宅の耐震性能を向上させることは基本的な地震対策のひとつ。ただ、地震の揺れを繰り返し受けることで住宅にはダメージが蓄積していき、その耐震性能は次第に低下していくことが考えられる。

そこで重要となるのが「制振」だ。制振は地震の揺れを吸収して建物へのダメージを軽減する考え方であり、導入することで繰り返しの地震に強い住宅構造を実現できる。しかし、その導入にはプラスαの費用が掛かることが普及の課題となっている。

こうした課題を解消するために開発したのが「PHOENIX TREE」だ。ダンパーを小型化し、コスト低減を図っている。もともとは全国で木造住宅を供給するパワービルダーの専用商品として開発したもので、すでに数万棟の採用実績がある。

「PHOENIX TREE」は、柱と筋かいそれぞれに固定された2種類の鋼板の間に、揺れを吸収する性質がある粘弾性体を挟み込んだ粘弾性ダンパーを採用。基本的には制振装置として働くが、このダンパーに想定外の負荷がかかった場合に機能が耐震に切り替わるハイブリッド機構となっている。

「PHOENIX TREE」を施工した様子

具体的には、住宅が地震で揺れると、ダンパーの鋼板が筋かいと柱の動きに連動して上下に繰返しスライド。それと同時に挟まれた粘弾性体が変形することで、地震エネルギーを熱に変換し吸収する。そして、ダンパーの上下のスライドが限界に達するような想定外の揺れでは、格子に組まれた筋かいが「耐震壁」として抵抗する仕組みだ。耐震壁としての大臣認定を取得しており、壁の強さとしては5.1~6.2倍相当の評価を受けている。

「PHOENIX TREE」は「制振+耐震」のハイブリッド機構を採用することで粘弾性体の使用量を減らし、小型化・低コスト化を実現した。同社の従来品と比較すると、コストを半分以下に抑えている。

金井所長は、「制振はコストを理由に導入が見送られるケースも多い。『PHOENIX TREE』を通じて、住宅における制振の敷居を下げたい」と意気込む。

また、「PHOENIX TREE」は低コストでありながらも、制振性能は非常に高いレベルに仕上げている。耐震等級3の住宅(耐震住宅)と、それに「PHOENIX TREE」を施工した住宅(制振住宅)の実大振動実験によると、震度6弱の地震において制振住宅は耐震住宅よりも揺れを49%低減、さらに、震度7では揺れを90%も低減することを実証した。

住宅価格の高騰が続くなか、低コストと高性能を両立した「PHOENIX TREE」の採用が拡大していきそうだ。