YKK不動産 パッシブタウンの集大成、第5期街区を着工
YKK APの木製窓などの採用で等級7を上回る木造集合住宅
パッシブタウンの集大成となる第5期街区を着工した。YKK AP製の木製窓の採用など等級7を上回る躯体と、再生可能エネによるシーズンシフトなど、さまざまな新たな取り組みが進められる。
YKK不動産が「パッシブタウン 第5期街区」を着工した。
「パッシブタウン」(富山県黒部市)は、同社が取り組む風や地下水などの自然エネルギーを最大限に生かしたローエネルギーな「まちづくり・住まいづくり」で、2013年に全体構想を発表、これまで第1~3街区として117戸、第4街区にYKKグループ事業所保育園施設「たんぽぽ保育園」を開発、竣工している。
第5街区は、同構想における最終街区であるとともに、最大の街区。1万6278.33㎡の敷地に、木造(一部鉄筋コンクリート)集合住宅6~7階建てを3棟建設する。建築面積は2865.15㎡、延床面積は9420.15㎡だ。
基本計画・基本設計(建築)は、現代木造建築の世界的なパイオニアであるヘルマン・カウフマン氏、基本設計(構造・設備)・実施設計・施工を竹中工務店、ランドスケープ設計を設計組織プレイスメディアが担当した。
第1~4街区で得られた知見やデータに基づくパッシブデザインをベースに、水素エネルギー供給システム「Power to GAS」を日本で初めて集合住宅に導入したことが大きな特徴だ。同システムは、春~秋にかけて太陽光発電で得た余剰電力で水を電気分解しグリーン水素を生成、吸蔵合金内に安全な状態で保存し、冬期には水素を吸蔵合金から取り出して燃料電池で発電、住宅に電力を供給する。また、水素生成及び水素を電気に戻す過程で発生する熱は給湯に利用する。太陽光発電による創エネと、「Power to GAS」による再生可能エネルギーのシーズンシフトを行うわけだ。
木造集合住宅は、カウフマン氏や竹中工務店のノウハウにより接合部を中心に解析を行い、外壁や屋根の断熱性を1~3街区の住宅よりも高めた。さらに注目されるのは開口部にYKK APが開発した木製窓を採用したこと。YKK APは、本体が木製で外側をアルミでカバーした戸建住宅向けの木製窓を、24年秋頃を目安に発売すると公表しているが、今回採用する木製窓は同商品ではなくコンセプト商品になるという。
これらにより木造集合住宅の断熱性能は断熱等性能等級の等級7を上回る、外皮平均熱貫流率(UA値)0.24W/㎡・Kの達成を目指している。
また、使用する木材は県産材を予定。第4街区で確立した地元の森林組合との共同による森林資源の循環活用で、県産木材の利用と新たな植林を推進する。木造中高層集合住宅は北陸地域では初となる。
なお、この街区は国土交通省の「令和5年度優良木造建築物等整備推進事業」および「令和5年度(第1回)サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」と、環境省の「令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(脱炭素社会構築に向けた再エネ等由来水素活用推進事業)」「再エネ等由来水素を活用した自立・分散型エネルギーシステム構築事業」の計3件に採択されている。
竣工は25年3月の予定。クリーンエネルギーによる自立したまちづくりが、いよいよ集大成を迎えようとしている。
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