日建ハウジングシステム 国内初、竹集成材構造で性能評価書を取得
竹造建築の需要創造に向けて情報発信を強化
竹集成材を使用した新たな構造システムを開発し、(一財)日本建築センターの性能評価書を取得した。竹集成材構造による性能評価書の取得は国内初のことだ。竹造建築の市場創出が現実味を帯びてきた。
竹は、古来から日用品や家具、建具などとして親しまれてきた。しかし、プラスチックなどの代替素材が台頭してきたことで次第に需要が減少。その結果、近年では伐採されずに放置される竹林が日本各地で発生し、下草など他の植物の日照不足を招くことで痩地や生態系の変容などの「竹害」を引き起こす「放置竹林問題」の解決が急務となっている。
こうしたなか、同社は再び竹の需要を喚起し、放置竹林問題の解決や地域雇用の創出につなげようと、2016年に「竹でイエを建てちゃおう!プロジェクト」を始動。竹林面積が全国1位の鹿児島県薩摩川内市と連携して竹の建築利用の可能性を模索してきた。その取り組みのなかで、竹集成材の構造材利用に着目し、竹集成材の試作や強度試験などを実施。強度試験の結果、竹のヤング係数や曲げ強度はスギ材よりも高く、集成材にすることでさらに強度が増すことを確認した。
さらに、21年には同プロジェクトの第2弾として「竹集成材構造モデルプロジェクト」を立ち上げた。このプロジェクトには、鹿児島大学大学院理工学研究科鷹野敦研究室、ハフニアムアーキテクツ(神奈川県川崎市、福山弘社長)が参画し、日建ハウジングシステムを含めた産学3者で竹集成材を使用した構造システムの設計、接合部の強度試験などの研究を進めてきた。
そして、23年3月に竹集成材構造で日本建築センターの性能評価書を取得した。評価書を取得した建物モデルは延べ床面積70㎡の平屋店舗で、薩摩川内市内での建設を想定して設計した。「竹はそもそもイネ科の植物であり、生物分類上は『草』に相当する。そのため、JIS(日本産業規格)やJAS(日本農林規格)で建材としての規格が定められていないことから、竹が構造材として十分成立することの証明に苦労した」(日建ハウジングシステム設計部部長兼lid研究所l³デザイン室室長・古山明義理事)といい、性能評価書の申請から取得までには約2年の時間を要した。
竹集成材構造システムの特徴は、柱や梁に木造で使用する部材よりも小さいサイズの部材を使用し、複数をつなぎ合わせて構成している点だ。長さの面で制約があるため、現状、竹集成材原板の製造可能サイズは最大長さ約2m、厚さ約20㎜であり、この原板を2枚貼り合わせて使用する。竹集成材は高い強度を持つため小さな部材の組み合わせでも十分な性能を発揮できるという。
だが、竹集成材構造の普及には課題もある。その一つが木構造よりも金額が高いことだ。竹の建築利用に関しては事業化ができておらず、一般的なルートでは流通していないため調達費が高くなる。
同社は今後、竹集成材構造の需要先創出に向けた情報発信を強化する方針だ。古山理事は、「需要先が見つかり、第一号物件が実際に建てば、建築業界にも大きなインパクトを与えるはず。他社の参入なども期待でき、本格的なビジネスとして成立してくるのではないか」と期待を寄せる。
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