2023.9.27

大建工業、伊藤忠商事TOBに賛同、子会社に

ネットワーク活用して非住宅・海外事業展開を加速

大建工業は、伊藤忠商事のTOBに賛同した。ネットワークを活用して国内非住宅および海外事業展開を加速させることが大きな狙い。国内住宅着工が落ち込むなか、両事業のさらなる強化を図りたい考えだ。

今回のTOB(株式公開買い付け)は伊藤忠商事が最大497億円を投じて大建工業を完全子会社化するもの。TOBが成立した場合、大建工業は東証プライム上場廃止となる。伊藤忠商事は現在、大建工業の株式を36.34%保有する筆頭株主で、2022年11月下旬に株式非公開化の検討を本格的に開始したい旨を大建工業に打診していた。

伊藤忠商事は主に国内事業を中心とした収益力の強化を掲げている。同社は190の子会社と関連会社81社からなる国内最大手の総合商社であり、国内外に持つ広いネットワークを通じて住生活事業や情報・金融事業など8つの事業を展開し、より一層人々の暮らしを支える商品やサービスの提供に努めている。

しかし、国内住宅市場においては今後も新設着工戸数の減少が予測されており、それに伴って中長期的な市場の縮小が見込まれている。こうした厳しい状況の中でも、国内住宅市場における事業の維持・拡大を図っていくため、TOBにより大建工業を子会社化することで経営資源を有効活用するとともに、同社に第一人者として国内の建材事業を牽引してもらいたいという想いがあった。

一方、大建工業がTOBに賛同した主な背景には、国内非住宅および海外事業展開のさらなる強化・拡大を図りたいという考えがあった。同社は、2015年度に策定した25年度までの長期ビジョン「GP25」のなかで目指す企業像として「建築資材の総合企業」を掲げ、その一環として国内非住宅事業、海外事業(主に北米)の強化を進めている。

伊藤忠商事は国内最大手の総合商社であり、非住宅分野ではデベロッパーやゼネコンとの強固な関係を有しているほか、北米では従前から住宅関連事業を展開し幅広い販売網を構築している。TOBが成立し完全子会社となることで、大建工業はこうした伊藤忠商事の有するさまざまな顧客との関係性やグローバルなネットワーク、さらには資金力の活用が可能になると見込んだ。

例えば、非住宅事業においては既存製品や既存事業の売上拡大に加え、製品の拡充やデベロッパーなどの事業主に対するコンサルティング業務、空間設計や内装工事などの事業にまで事業範囲を拡大できると考えている。

人材交流で基盤、組織力を強化

また、人材基盤のさらなる強化についてもシナジー効果が見込めるとした。

具体的には、子会社化によって伊藤忠商事と大建工業間の人材交流が活発化し、相互の知見・ノウハウを深めることができるようになるとした。

加えて、伊藤忠商事の人材育成プログラムを活用した教育制度の拡充や伊藤忠商事の水準に合わせた福利厚生などの拡充が行われることで、従業員のスキル向上を実現。さらに、世界各国に拠点を有する伊藤忠商事からの人材派遣などによって、現状不足している海外人材の強化、ひいては組織力強化が図れるとした。