新時代を見据え新たな取組み 企業連携やリフォームのアプローチも
今、断熱材業界が動く
住宅の高断熱化が急速に進むなか、断熱材メーカーで急速に進んでいるのが他企業とのコラボレーションだ。上位等級への対応で付加断熱が求められることから、充填断熱と外張断熱という異素材断熱材メーカー同士の連携が進み、さらに気密や開口部、空調まで、より快適な住環境全体を見据えた企業連携が広がりつつある。
旭ファイバーグラスは、等級7について旭化成建材とコラボレーション。グラスウールの充填と、旭化成建材のフェノールフォーム断熱材「ネオマフォーム」を付加断熱として使用する「G3プロジェクト」を展開するもので、昨年10月に香川県でモデル棟を完成し、近畿大学の岩前教授などを招いてウェビナーを開催した。今後、山形県でも同様の講習会を計画している。両社の「アクリアとネオマでつくるG3の家」で、HEAT20の「住宅システム認証」を6地域で取得している。
マグ・イゾベールは、伊藤忠建材、旭化成建材と連携して「等級6”+”」の訴求を進める。天井に「イゾベール・スタンダード」、壁に「イゾベール・コンフォート」の充填と「ネオマフォーム」の付加断熱、床にマグ・イゾベールの「床トップ」もしくは「ネオマフォーム」というようなさまざまな提案をするもので、共同セミナーを開催して住宅事業者への提案を進める。また、日本住環境やYKK APと連携してのセミナーも開催している。今後は全館空調システムを手掛ける企業などとのコラボレーションも検討しており、住まい手の視点に立ってさまざまな企業との連携を進めていきたい考えだ。
パラマウント硝子工業は、等級7についてグラスウール断熱材のみでは厚みが増すなど施工面の課題があるため、バリエーションの一つとしてアキレスとコラボレーションしグラスウール断熱材と硬質ウレタンフォームによる等級7の仕様例を提案している。
アキレスはパラマウント硝子工業だけでなく異業種企業とのコラボレーションも積極的に進める。例えば、換気部材などを扱う城東テクノと、換気システムなどを扱うマーベックスと3社で、また、省エネコンサルなどのシステック環境研究所と日本住環境と3社でなど、さまざまな企業とのコラボセミナー・ウェビナーを開催してきた。また、リノベーション分野ではYKK APとも連携するなど、異業種企業との連携が「これまでとは異なるお客様の開拓につながっている」(藤本課長)という。5月にはパラマウント硝子工業、日本住環境との共催で「見て!学ぶ!等級7徹底解説」と題したセミナーを日本住環境の研修・開発研究所で開催したほか、同月には栃木県足利市で等級7の施工現場見学会も開催した。「等級6・7の実現が目的なのではなく、その住宅における快適性や燃費の削減をいかに訴えかけるかが重要。盲目的に数値を追いかけるのではなくトータルで考えるべき」(藤本課長)とコラボレーションの意味を語る。
今後も企業連携は広がりそうだ。
リフォーム市場の拡大に期待
部分断熱など新たな取り組みも
大きな期待を集めながらも、具体的な策を打ち出しきれてこなかった断熱リフォーム。しかし、ストックの性能向上が国の施策として進められ、大規模リノベや買取再販などストックビジネスが活発化するなか、これまで以上に断熱改修に注目が集まっている。
発泡スチロール協会は、この1年で断熱改修に関する問い合わせが増えきているという。主に学校やマンションなどRC造に関するものが多く、EPSを使った外張断熱改修については米国やドイツで開発された工法を国内で展開している企業もある。「改修はこれまでほとんどなかった市場で、住宅改修を含め拡大させていく必要がある。部分改修も注目され始めており、アピールを強める」(山田一己専務理事)考えだ。
アキレスは北海道科学大学工学部の福島明教授と外張断熱工法による改修工法の開発に取り組んできた。北海道において色々なテストを繰り返しており、いよいよ今年中に全国展開を開始する考え。外壁材の上から断熱材で覆う工法で、低コスト、短工期であることが大きな特徴だ。
王子製袋も断熱リフォーム市場の拡大に期待している。セルロースファイバーの吹込み工法は隙間ができにくく気密性を確保でき、既存の断熱材にプラスすることが可能だ。施工店のなかにはリフォーム営業に注力し、新築需要の減退をカバーしているところもあるという。例えば、小屋裏の吹き増しを行って居住者に断熱性向上を体感してもらい、床下や壁の断熱リフォームにつなげていくという提案だ。小屋裏の断熱リフォームは施工時間がかからず住みながらの施工も可能なことが大きなポイントだ。
エービーシー商会は、断熱改修市場に向けて2液ボンベタイプの「NB‐PROシリーズ」を提案している。2液タイプは面で吹くことができるのがポイントで、屋根裏や床下、水まわりや浴室、角部屋や北面などピンポイントでリフォームが可能なことが大きな特長。また、トラックを置けない、ホースを持ち上げられないなど動力車による発泡ウレタン工事が難しい環境でも施工が可能だ。「今後、断熱改修をして等級いくつをクリアと、改修後の性能が求められてくるようになるだろう。また、部分改修のニーズも高まってくると考えられる」(佐藤課長)と断熱改修市場の広がりに期待をかける。
省エネ基準への適合義務化、ZEHレベルへの誘導、さらには等級6・7といった上位等級の設定など国の施策を踏まえて住宅の省エネ化が大きく進みつつある。その取り組みは高断熱化が軸となるが、高断熱の数値をクリアすることが目的ではなく、より快適で環境負荷の少ない、さらに言えば健康的な住空間づくりが最終的なゴールだ。
それぞれの住宅事業者が求める新たな住宅の姿を実現するため、そのベースとなる断熱化の動きは、さらに活発化することは間違いない。
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