2023.10.2

特長やメリットを前面に各社各様のプロモーションを展開

高性能を武器に付加断熱の広がりも

発泡プラスチック系断熱材は高い断熱性能が特徴であり、床や屋根の断熱などで多く使われてきた。各社は、その高い性能を武器に等級6・7という上位等級への取り組みを積極化させている。さらに付加断熱による市場拡大にも大きな注目が集まる。

カネカカネカケンテックは、押出法ポリスチレンフォーム断熱材「カネライトフォーム」シリーズを製造・販売しているが、多様化する断熱ニーズの対応力を高めるため、同シリーズのなかでも高性能製品群を強く打ち出している。具体的には、「スーパーE‐Ⅲ」(熱伝導率0.028W/(m・K))、「スーパーEX」(同0.024)、「FX」(同0.022)、の3品目だ。住宅性能表示制度における断熱等性能等級で上位等級が設定され、これらへの取り組みが加速するなか、同社では高性能住宅に取り組む住宅事業者向けに対する訴求を強めているものだ。仕様例を提示して使用部位や構造にあわせて使い分ける提案を進めている。

カネカとカネカケンテックが製造・販売する「カネライトフォーム」シリーズ。グループとして住宅断熱からエネルギーまでを総合的に提案できることが大きな強み

さらに高断熱化に加え、ビルトインガレージの天井など懐の狭い部位での採用も広げていきたい考えだ。また、吸水・吸湿性が低く水分による断熱性能の低下が少ないという特性を持つことから、基礎断熱でも採用が広がりつつあるという。加えて、カネカで製造する太陽光発電システム、蓄電池、有機EL照明などもあわせ、業界で唯一、グループとして住宅断熱からエネルギーまでを総合的に提案できることが大きな強みだ。

省エネ住宅のトータル提案を強化するため、ソリューション営業課を新設し、提案営業体制を強化した。

同社は従前からカネライトフォームのプレカットに対応、すでに年間1万棟弱の加工が定着してきた。このほど近年のプレカット需要の増加に対応し社内に受注センターを新設、受注から納品までの期間短縮につなげていく。

カネライトフォームはポリスチレンが原料であり端材のリサイクルができる。こうした原料特性も生かしながら、脱炭素社会の実現に貢献していく考えだ。

JSPは、従前から「ミラフォームΛ」の熱伝導率0.022W/(m・K)という性能を前面に出してアピールしてきており、今年度に入り「等級6に取り組む新たなお客様からの問い合わせが増えてきた」(建築土木資材事業部 東日本建材営業統括部 内村光寿部長)と、「Λ」の出荷は7月まで前年同月比約10%増が続いている。

上位等級に対応する住宅事業者からの引き合いが増えているJSP の「ミラフォームΛ」。付加断熱への採用の広がりに期待

性能の高さとあわせて評価されているのが、必要な断熱材を必要な寸法にカットして納品するプレカットだ。他社に先んじて10数年前から展開しており、工期短縮やコスト削減だけでなく廃材の削減にもつながり好評だ。工場内で出た廃材はリサイクルに回すことができ、環境にやさしい断熱材であることも大きな魅力につながっている。

同社の断熱材出荷の95%は床用であり、「Λ」の比率が高まるなかでもそれ程の変化はない。今後は、この屋根や壁での採用増が大きなテーマ。特に壁については、等級6以上の住宅では付加断熱が求められることから外張りの断熱材として「Λ」採用拡大に期待をかけており、実際、今年度に入ってから問い合わせなどが増えてきているという。現在、等級4・5までしか仕様規定が定められておらず、「上位等級への対応では外皮計算が必要になる」(内村部長)と計算ソフトの開発を進めており、今年度末頃からソフトの有料サービスの提供を開始したい考えだ。

アキレスは高性能硬質ウレタンフォーム断熱材「キューワンボード」を主軸に、等級6以上に向けての提案を積極化している。同商品は熱伝導率0.021W/(m・K)という高い性能が大きな特長。等級6であれば同社製品の外張断熱だけでもクリアすることが可能だが、4~7地域であれば充填断熱+付加断熱というW断熱の提案をするケースが多いという。慣れている充填断熱から外張断熱へと断熱工法を変えてしまうのではなく、これまで通りの充填断熱に付加断熱を加えるという方法を取ることで住宅事業者が等級6に取り組むハードルが低くなるとともに、原価計算がしやすいというメリットもある。そのため昨年、パラマウント硝子工業と等級6・7をクリアする付加断熱の仕様を整理し、カタログをまとめている。「新たに引き合いを頂く住宅事業者はほとんど付加断熱」(断熱資材販売部 戸建特販課 藤本幹人課長)と、新たな顧客開拓に着実につながっている。

硬質ウレタンフォーム断熱材を展開するFPコーポレーションは、主力ブランドである汎用断熱ボード「ラクティー」や住宅用パネル「ヘビーウォール」など全製品について、CO2を元とする水発泡処方(ノンフロン)から高性能発泡ガスHFOへ全面的に切り替え、4月から販売を開始した。これにより熱伝導率は水発泡の0.024W/(m・K)から世界最高水準の0・019W/(m・K)に高まった。

例えば、「ラクティー」は壁用で45㎜、60㎜、75㎜、100㎜をラインアップするが、性能が高まったことで付加断熱をしなくても1地域で等級5に対応できるようになった。つまり、5~7地域であれば付加断熱することなく等級6に対応できることになる。

また、床用については45㎜、70㎜、105㎜を揃えているが、玄関ポーチの2階部分など高い性能が求められるオーバーハング部についても105㎜品一枚(1~3地域)で対応することができる。

また、6月には天井用断熱材「ラクティーGp(ジーピー)」も発売した。桁上に施工する断熱材であり、フィルムで天井の気密を取りたくないという住宅事業者のニーズがある。例えば、間接照明やダウンライトを設置する、配管スペースも断熱区画の前に取れるといった理由から防湿・気密シートで天井の気密を取ることを嫌がる住宅事業者のニーズに応えた商品だ。これまで天井断熱は桁間への「ラクティー」での施工を提案してきたが、桁間では金物にぶつかってカットしなければならないなど施工に手間がかかるケースもあり、桁上に施工する商品の開発が望まれていた。

「ラクティーGp」は、切り欠き加工が施されているため棟上時の施工が可能で、断熱ボード上で気密施工ができるため防湿・気密シートと比較して確実な施工ができる。また、天井のふところ部分に断熱欠損のない配管・配線スペースを確保できるといった数々のメリットを持つ。もちろん高性能発泡ガスHFOを使用している0.019W/(m・K)の商品だ。

同社は住宅事業者のニーズや困りごとに対して適材適所の商品提案を行っている。

例えば、壁断熱には「ラクティー」と「ヘビーウォール」、床断熱は「ラクティー」、天井断熱は桁間の「ラクティー」、桁上の「ラクティーGp」、屋根断熱は「屋根断熱パネルHIPルーフ」や「屋根断熱ボード ラクティーシルバー」といった具合だ。これらを地域や等級などの性能値に照らしたうえで、住宅事業者の求めに応じて提案している。「熱伝導率0.019の実現、また、商品のバリエーション拡大で提案できる幅が大きく広がった」(特販課 竹花広樹担当課長)と、住宅事業者のニーズに幅広く対応できることを強調する。

フクビ化学工業は、フェノールフォーム断熱材「フェノバボード」を展開する。熱伝導率0.019W/(m・K)と優れた断熱性能を持つ同商品は、従来から高性能住宅を手掛ける住宅事業者が多い。
上位等級への対応としては、2020年に断熱等性能等級5・6・7に対応する「フェノバボード断熱等級仕様例」を作成、Webで公開しダウンロードもできるようにした。加えて、住宅事業者ごとに検討するUA値水準に応じた最適なフェノバボードの選定と提案(UA値の邸別計算)を行っている。

高断熱住宅へ取り組む住宅事業者が増えるなか、同社ではフェノバボードのみを使った外張断熱、屋根や壁への付加断熱にフェノバボードを使った他充填断熱との組み合わせなど、さまざまな提案ができるように準備を進めている。「こだわりや施工の慣れなど、住宅事業者の仕様はさまざまであり、細かなニーズに対応できるようにしていく」(建材事業本部 建材事業企画部 建材事業推進課・小仲雄久課長)ことが狙いだ。

一方で、「フェノバボード」を付加断熱として使用した壁構成で準耐火45分の認定取得を進めている。これにより防火地域・準防火地域の定められた建築物にフェノバボードを使用することが可能となる。例えば、これまで提案が難しかった狭小地の木造3階建て住宅でフェノバボードが使いやすくなる。認定取得をきっかけにこうした新たな需要開拓を進めていく。

(一社)高性能住宅コンソーシアムが茨城県小美玉市にオープンしたフェノバボードを使った等級7の体感モデルハウス。フクビ化学工業では関東エリアで高性能住宅の普及を訴求していく

今年7月、(一社)高性能住宅コンソーシアムが「フェノバボード」を使った等級7の体感モデルハウスを茨城県小美玉市にオープンした。同コンソーシアムは、建材メーカー、住宅事業者、各分野の学識経験者が参加して2016年に発足、G2水準の断熱性能、創エネ、耐震・制震を備えZEHを超える性能を持つ住宅「S‐ZEH」を提案している。

同モデルは兵庫県淡路市に建設したモデルに次ぐ3棟目の新築モデルで関東エリアでは初となる。等級7の仕様や性能を具体的にイメージでき、等級7のモデルプランを通じて高性能住宅の普及を訴求する。

「ビーズ法ポリスチレンフォーム」(EPS)のメーカーなどで構成する発泡スチロール協会では、防耐火の認定取得のPRに力を入れている。

南極で行った調査では、厳しい環境にもかかわらず、EPS断熱建材の熱伝導率は40年間にわたってほとんど変化がないという結果が出た

現在進めているのが「EPS防火構造8認定」の再取得だ。同認定は軸組構造と枠組壁工法の窯業系サイディングにおける充填断熱と外張断熱について、釘止めと金具止めを対象とするもの。「30分間防火構造」に該当し、30分防火構造が要求される外壁に適用できる。ただ、この認定は充填断熱と外張断熱だけであり、外張りの付加断熱についても過去の試験結果から、グラスウールなど充填した上にEPSで付加断熱を行っても防火上不利にならないとの判断を利用し、申請の準備を進めている。「等級6・7では地域によって付加断熱が必要となる。付加断熱には発泡プラスチック系の断熱材が有利」(篠﨑広輝EPS建材推進部長)と市場拡大に期待を寄せている。「現状では問い合わせがあっても対応できないこともあり、機会を損失していることも。用途の多い部分から防火認定を取得していく」と、今後もニーズを踏まえ順次防火認定を取得していく考えだ。

同協会では、EPS断熱材の周知にさらに力を入れていく予定。長期間性能が低下しないこと、発泡プラスチック系断熱材のなかで適度な透湿性を持ち湿式仕上げなどに有利な特長などを設計事務所や施主に向けて強くアピールしていく。特にこれまで手薄であった一般施主へのアピールに力を入れていく考えで、ホームページの改定なども検討していく。

エービーシー商会は、断熱仕様の変化による使用する箇所、回数、頻度の変化を指摘する。「インサルパック」は、基礎断熱、サッシまわりや配管まわり、断熱材の欠損箇所や継ぎ目など使用箇所は様々であり、「例えば、付加断熱が増えると使用量が確実に増える。従来は使用されることがなかったグラスウール充填断熱の住宅でも付加断熱部分の継ぎ目など新たなニーズが出てくる」(インサル事業部 東京営業課 佐藤佳信課長)と、高断熱化が販売量拡大に着実につながっている。

エービーシー商会のインサルパック「防蟻フォーム」は基礎断熱などに最適。「ノズル&ガンタイプ」をリニューアル発売し、施工性もアップした

こうしたなか差別化を狙いに力を入れているのが防蟻効果を持つ「防蟻フォーム」と低発泡の「エラスティックフォーム」だ。「防蟻フォーム」は、床下に空調設備を置くなど床下活用が進むなかで基礎断熱が増えており、防蟻性能を持つ同商品への関心は高く、出荷量も増加している。先には「ノズル&ガンタイプ」をリニューアル発売し、装着口を変更することでノズルとガンの両方が使用できるようになった。ガンタイプの場合、現場ごとの使いきりではないため繰り返し使用ができ、液残りがなく経済的に使える。使い切りではなく施工箇所によって使い分けができるという利便性向上を狙った。

一方、「エラスティックフォーム」は、低発泡でふくらみが少ないためカットの手間を軽減できるなど、サッシ周りや柱と床の取り合いに無駄なく有効に、効率よく使うことができる。「カットしなくてよいため、表面のスキン層を生かすことができウレタン発泡断熱材としてベストの状態で施工できる。まず使ってみていただきたい」(佐藤課長)と、商品の認知向上に力を入れる。
「最近は補修材でも熱伝導率を気にするなど住宅事業者の意識も変わってきている。使用される部位が増えるなか、さまざまな問い合わせをいただいている」(佐藤課長)と、市場ニーズに応えるラインナップ強化にさらに力を入れる考えだ。