2023.9.19

(一社)住まい文化研究会、脱炭素化とコストダウンを実現する基礎工法を開発

鉄筋やコンクリートの使用量を大幅削減

(一社)住まい文化研究会(東京都中央区、石川新治代表理事)は、脱炭素化とコストダウンを両立する新・基礎工法「eLbase(エルベス)」を開発した。

(一社)住まい文化研究会は、工務店が顧客に配布するコミュニケーション紙「おうちのはなし」の発行などを行っているほか、間取り提案の支援なども行う。

また、耐震等級3を取得するための構造計算を簡略するためのメソッドを独自に導き出し、「木造住宅耐震強化研修」として、耐震等級3を標準化するためノウハウも提供している。同研究会の石川新治代表理事によると、「簡単な暗算を行うだけで耐震等級3を取得するための壁量などを算出することができる。この計算方法を活用することで、営業の方々でも耐震等級3に求められる壁量が分かるので、プラン確定後に構造計算を実施した結果、等級3の性能値を満たすことができなかったといった状況を回避できる」と話す。

ベタ基礎と同じ要領で施工可能なL字型の布基礎

耐震等級3の標準化に向けた取り組みを進める中で着目したのが基礎。必要な壁量と位置をいち早く確定できると、無駄の少ない基礎を設計しやすくなる。

コストと環境負荷を削減する新・基礎工法「eLbase(エルベス)」

しかし、ベタ基礎の場合、建物荷重だけでなく、地中からスラブにかかる荷重も考慮しなくてはいけない。地中からの荷重でスラブが曲がってしまう懸念もあるため、鉄筋を二重にしたりスラブを厚くしたりという対策が求められることもある。耐震性能上は必要のない基礎を設置し、柱を増設するといったことも行われており、設計の自由度が損なわれることもあるという。

L 字型の布基礎で、ベタ基礎と同じように施工できる

対して大手ハウスメーカーでは、ベタ基礎ではなく布基礎を採用している企業が多い。布基礎であればスラブに土中からかかる負荷を考える必要がない。また、布基礎は基礎梁の計算だけで構造計算が成立するが、ベタ基礎は基礎梁だけでなくスラブの構造計算も必要になる。つまり布基礎の方が構造計算の手間などを削減しやすいというわけだ。

同研究会では、前述の必要壁量を求めるメソッドを利用し、布基礎を採用しやすい環境を整備しようとしている。ところがベタ基礎に慣れている施工業者にとっては、布基礎に変更するためには新たな施工ノウハウを習得するだけでなく、金物なども揃える必要があるという問題もある。こうした問題を解消するために開発したのが、新・基礎工法「eLbase(エルベス)」。通常の布基礎はT字を逆さにした形状だが、この新工法はL字型の基礎。ベタ基礎と同じ要領で施工できる。金物や治具などもベタ基礎と同じものを利用できる。既にこの工法を採用した住宅が長期優良住宅の認定を受けているほか、特許も取得している。

一般的なベタ基礎と比較すると、使用する鉄筋を6割、コンクリートを2割削減することも可能で、その分だけコストと環境負荷を減らすことができる。試算では約3tものCO2排出量を削減できるという。

住宅業界でエンボディドカーボン(建材の製造、輸送、設置に起因する二酸化炭素排出量)の削減が重要になっているだけに、コストダウンと脱炭素化に貢献する基礎工法として注目を集めそうだ。