さらなる魅力創出が加速するエコジョーズ
“省エネ”を超える価値提案
エコジョーズのさらなる魅力創出が加速する。省エネやCO2排出削減などエコな給湯器として市場を拡大してきたエコジョーズだが、さらなる拡大に向けメーカー各社が新たな価値を打ち出し始めた。
省エネだけでは普及に限界?
頭打ちのエコジョーズ化率
エコジョーズの普及が新たなステージを迎えている。
少ないガス量で効率よくお湯を沸かすことができる省エネ性能の高い高効率ガス給湯器「エコジョーズ」。2002年に「エコジョーズ」という業界統一の名称での市場投入が開始され、地球温暖化対策が強く求められるなかで高効率ガス給湯器デファクト化研究会が2010年6月に「エコジョーズ化宣言2013」を打ち出すなど、各社・各団体がその普及・拡大に力を注いできた。
(一社)日本ガス石油機器工業会によると、22年度のエコジョーズの出荷見込みは124万4000台(前年度比37.6%増)で、内訳は「ガス瞬間湯沸器」が9600台(同14.1%増)、「ガス温水給湯暖房機」が31万7000台(同49.6%増)、「ガスふろがま」が83万1000台(同36.6%増)となっている。前年度から大幅増加であるが、これは20、21年度がコロナ禍の資材不足のため出荷が滞ったことの反動とみられている。
今年度は115万6000台(同7%減)と減少が見込まれており、コロナ前の18年度の103万3000台からすると増加であるが、給湯器メーカー各社が指摘するのがエコジョーズ化率の頭打ちだ。22年度の種類ごとのエコジョーズ化率は、「ガス瞬間湯沸器」が8.73%、「ガス温水給湯暖房機」が71.9%、「ガスふろがま」が50.5%であり、ここ数年大きな変化はない。
これまでカーボンニュートラル推進の文脈の一つとして、省エネやCO2削減を大きな特長として打ち出して普及拡大が進められてきたが、「この流れのままでは、さらに伸ばしていくことは難しい」とみられている。
給湯器販売の約7割は取り替え需要であり、その多くが故障をきっかけに購入される。今すぐにでもお湯が出るようにしたいという非エコジョーズのユーザーに対して、エコジョーズ化への提案が十分にしきれていないという指摘がある。省エネでありエコであることは理解されているが、急ぎの交換時に予算を用意していない、安いならば非エコジョーズで良い、というケースが多いようだ。また、コストアップに見合うメリットや魅力が伝えきれていないという指摘もある。
こうしたなかで各社はいっせいに省エネやエコを超える”コト売り”の提案を進めている。エコジョーズをもう一段階拡大するための新たな取り組みが加速している。
コト売りに旋回
お湯の新たな価値創出へ
リンナイは、商品づくりの二大テーマとして、生活の質の向上と地球環境問題への対応をあげる。こうしたなかで進める取り組みが「バブル戦略」。生活の質の向上を狙いに、エコジョーズではなくお湯に新しい価値を何かつけようと考えたものだ。昨年10月に業界で初めてウルトラファインバブルを発生させるエコジョーズ「ウルトラファインバブル給湯器」(ガス給湯暖房用熱源機、ガスふろ給湯器、ガス給湯器)を発売、今年8月にはマイクロバブルバスユニット内蔵ガス給湯暖房用熱源機「RUFH‐ME/UME」シリーズを発売した。
ウルトラファインバブルは直径1㎛未満の微細な泡で、細かな隙間にある汚れを落とす作用を持ち、給湯器に発生装置を搭載したことで浴室や洗面所、キッチンなどで水回りの汚れや水垢がつきにくくなり、掃除負担の軽減が期待できる。また、マイクロバブルを発生させるマイクロバブルバスユニットでは、浴槽のお湯に微細な気泡を発生させて白濁したお湯を楽しむことができる。さら湯と比べて湯上り30分後の肌の角質水分量が116%まで増加、肌のうるおいを持続させることが確認されている。
マイクロバブルバスユニット内蔵給湯器は通常のエコジョーズからプラス10万円程度の価格設定であるが、日常とは異なる高級感のある入浴体験が大きなポイントで、その特別感に満足度が高い。また、ウルトラファインバブル給湯器は、同バブルを発生させるシャワーヘッドが人気商品であることから認知度は高く、事前の期待値が高い商品であるという。同社は、それぞれの効果について科学的な検証を行いデータも公表、「お湯にはこんな価値がある、それを感じてもらいながら環境にも貢献できる商品、と受け取ってもらうことでエコジョーズ化のハードルを下げる」(リンナイ 営業本部 営業企画部 商品推進室・芦塚裕介主査)と、その提案に力を入れている。
今後、マイクロバブル、ウルトラファインバブル対応のラインアップを増やしていく計画。8月に発売した「RUFH‐ME/UME」は、マイクロバブルバスユニット内蔵給湯器をガス給湯暖房用熱源機にも広げることで集合住宅への提案を強化し、エコジョーズ化を進める狙いだ。
ノーリツは、先に新たな商品戦略テーマ「NORITZ For 2030」を宣言、社会課題の解決を付加価値として提案する姿勢を打ち出した。その第一弾として発売したのが、衛生ニーズ、超高齢社会、睡眠不足という課題解決に向けた「ガスふろ給湯器GT‐C72シリーズ」と、同シリーズに対応する無線LAN対応リモコン「RC‐K001Wシリーズ」だ。
「GT‐C72シリーズ」は、業界初の「アクアオゾン」と「ヒート」という2つの技術を搭載する。「アクアオゾン」は水道水を電気分解してオゾン水を生成して除菌するユニットと、LED‐UV除菌ユニットによるW除菌システムで、従来の「浴槽水の除菌」をさらに深化させ、「ふろ配管の除菌」と「排水口のニオイの抑制」を実現した。コロナ禍もあって高まる衛生ニーズへの対応をさらに強化した。
また、「ヒート」は入浴中の深部体温の変化を精度高く推測するシステムで、この技術により浴室の湯温や室温に応じた目的別の適切な入浴時間を算出することができる。従来の見まもり機能に加え、就寝予定時刻にあわせたおすすめの入浴開始時間や入浴時間の目安を知らせる機能を追加した。お風呂の価値、入浴がもたらすさまざまな効果のなかから睡眠に着目した提案だ。
発表後に流通店を対象に行ったイノベーションミーティングなどで、その価値伝達を行ってきているが、「万が一に備える”入浴事故対策”は周りで見聞きするなどした体験のある人などからは高い評価の一方で、実感がない方の関心は低い。対して、除菌と睡眠については誰もが身近な課題であり万人に好評」(国内事業統括本部 マーケティング部・清水敬介部長)と、単純な機能紹介ではなく社会課題を解決する価値を伝えることに力を入れる。特に、コロナ禍が収束し今年はリアルの展示会などが相次いで開催されるなか、こうした場での体験を通じて価値を訴求していく。
また、「生活者にとって身近な存在になるように」と、賛同企業であるアース製薬、ジョンソン、東邦とX(旧Twitter)キャンペーン「おふろ掃除がんばった選手権」を開催した。除菌などがより身近な存在になるようにという仕掛けで、今後も継続して情報発信を行っていく考えだ。
パーパスはエコジョーズのブランド「AXiSシリーズ」に、「AXiSシリーズ FLash」をラインアップし、新たに展開する。10月1日にふろ給湯器のGX‐H240シリーズをGX‐HFL240シリーズに、給湯暖房用熱源機のGH‐H246シリーズをGH‐HFL240シリーズへとリニューアル発売する。
同社エコジョーズの大きな強みの一つが「高温水分配方式」であり、暖房や追いだき運転中でも給湯能力が落ちず、不意に起こる湯量や湯温の低下が少ないことが魅力だ。また、最小給湯能力0.1号、最低作動流量1・9ℓ/分 ※1であること、約2秒 ※2でお湯がつくれることなども大きな特長だ。今回、この強みにあらためて焦点を当て、名称を「高温水分配方式」から「FLash」に変更、前面に強く押し出していく戦略を打ち出し、名称変更、品番変更だけでなく本体の色もフラッシュゴールドでメタリックへと変更し、装いも新たに価値を訴えるプロモーションを展開する。
狙いはユーザー目線に立つ「コト売り」だ。省エネ意識の高まりのなか、節水シャワーヘッドや節水カランが当たり前に使われるようになり、美容系のシャワーヘッドがヒット商品になっている。ただ、これらを非常に少ない湯量で使うとガス給湯器の安全装置により火が途中で消えてしまったり、出湯までに時間がかかることがある。高温水分配方式の「FLash」であれば、節水カランの特性を100%引き出せ、美容系のシャワーヘッドでも瞬時に、安定したお湯が出る。「お湯に関するストレスを解消する商品であることを、名称変更も含めてガラッと商品を変えることで強く前面に打ち出していく」(業務本部営業企画部・鈴木孝之部長)と新たなブランド確立を狙う。
この他に、おふろに入りながら体脂肪率や消費カロリーなどが測定できる同社の独自技術の「おふろdeはかっちゃお!」もネーミングとロゴを「カンタン ヘルスチェック」へ刷新する。ユーザーに入浴中でもカンタンに健康管理ができることを訴求する。
「FLash」は体験することでより説得力を持つ。今年はガス展などがリアル開催される予定で、こうした展示会に向けプロモーションビデオやツールづくりを進める。
住宅事業者では節水カランや節水シャワーをオプション設定しているケースもある。ただ、急にお湯が水に変わってしまうという状況もあり、同社では「給湯器とのマッチングが大事で、少ない湯量でも決められた温度で安定してお湯が使えることを訴求していく」(鈴木部長)と、「FLash」の価値を強く訴えていく考えだ。
コストアップを上回る
新たな価値を訴求
エコジョーズは、従来型の給湯器に比べコストは高い。そこに付加価値を加えれば、当然、プラスαの価格となる。取り替え需要が約7割を占める給湯器市場のなかで、コストアップを上回る魅力を打ち出せるかが大きなポイントになる。
リンナイの「ウルトラファインバブル給湯器」は、エコジョーズに比べプラス3万5000円程度の値付けであるが、一般的に販売されているウルトラファインバブルが発生するシャワーヘッドは幅があるものの2万~3万円程度が相場。「ガス給湯専用機からガス給湯暖房用熱源機まで、それぞれプラス3.5万円でウルトラファインバブルが家中で使えることから、高いという声はあまり聞かない」(芦塚主事)ということに加え、一般的な給湯器とサイズが変わらないことから、既存住宅の取り替え需要で広がりつつあるという。
一方、マイクロバブルを発生させるマイクロバブルバスユニット内蔵給湯器は通常の給湯器プラス10万円程度と高額であることから、まずは新築住宅での採用が始まり既存住宅へと広がっているという。また、最近は高級路線のデベロッパーが差別化設備として高付加価値マンションに採用するケースが出てきている。
一方、ノーリツは「現状、販売店の反応は、価格が高いという声がある一方で、十分提案できるという声も多く、二分している」(清水部長)という。ただ、「GT‐C72シリーズ」は、浴槽水のみの「除菌」と配管まで除菌できる「ダブル除菌」と2つのグレードを持ち価格差は5万円程度であるが、発売一カ月の実績では「除菌」と「W除菌」の出荷台数割合は6:4程度。「販売店も、高額であっても売れるという手応えを得始めている」とすべり出しは好調だ。
ドレン問題や冬期の故障集中など
ネック解消も大きな鍵に
エコジョーズの普及拡大の上でいくつか課題が指摘されるが、その最も大きなものがドレン排水の処理だ。エコジョーズはその構造上ドレン水が発生し、その適切な処理が求められる。既築住宅のエコジョーズ化のハードルが高いと言われる大きな理由の一つだ。
特に共有部に手を入れざるを得ない集合住宅においては大きな課題だ。浴室内の排水経路から流す「三方弁方式」などが提案されているが決定打とはなり切れていない。施工が面倒、イニシャルコストが高くなるなどの声が現場では多い。「施工性やイニシャルコストなど、もう一度課題を抽出しなおし、解決に取り組む」(リンナイ・芦塚主事)と、対策が不可欠となっている。
また、冬期に故障が増えることから取り換え需要が集中することも課題だ。慌ただしく現場を回っている時に、非エコジョーズからエコジョーズへの提案は現実的に難しい。「故障する前にしっかりと取り換えを提案できるか」(ノーリツ・清水部長)が重要となる。
ガス瞬間湯沸器のエコジョーズ化も大きな課題だ。ガス瞬間湯沸器は給湯専用で賃貸住宅につけられるケースが多く、エコジョーズ化率は約1割と普及が進んでいない。持ち家に比べ、賃貸住宅は利回り重視の点で設備などのグレードが低く抑えられるケースがほとんど。こうしたなかで既築住宅の取り替えはもとより新築においてもエコジョーズの提案はなかなか受け入れられないのが現実だ。
これらコストや手間の壁を越え、エコジョーズをもう一段広めていくために「お湯の価値」をどこまで居住者に伝えられるかが大きな鍵となっている。
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