北海道民の望郷/“広島ダービー”の夢

“広島ダービー”の夢

プロ野球セ・パ交流戦は希にみる接戦、混戦状態で実に楽しく、面白かった。今年のプロ野球はWBCでの日本優勝の興奮冷めやらぬなかで迎えた。プロ野球人気の蔭りが言われていただけに野球ファンとしてはWBCの熱量を受け継いだままのシーズンイン、そしてセ・パ交流戦は見どころ十分だった。そして個人的には交流戦でひときわワクワク感を盛り上げてくれたのが“広島ダービー”だ。日本ハム・ファイターズの新球場エスコンフィールドを舞台に、広島東洋カープとの3連戦が実現したのだ。北海道はいまやパ・リーグのファイターズの本拠地としてファイターズファンが多いが、セ・リーグではカープが人気だ。

北海道がなぜ、赤ヘルの広島カープなのか?。それは遠く明治の世にさかのぼることになる。北海道が東北、北陸など日本全国からの移住、開拓者によってつくられたことはよく知られるところだが、広島県からの開拓民も多かった。温暖な地から極寒の原野の地へ、開拓苦難史はいまに語り継がれる。広島県人が入植し、開拓した地が札幌郡月寒村。明治27年(1894)に村の名前を開拓民たちは生まれ故郷の広島にちなんで広島村と名づけた。そして96年に北広島市に。令和の世になっても、北海道北広島市民の心のふるさとは広島県なのだ。さらに言うなら広島県のなかにある東広島市と北海道の北広島市は1980年に姉妹都市の調印を結び、友好関係を強めている。この結びつきはカープ球団にも及ぶ。歴代の監督、主力選手たちも北広島市の少年野球チームなどを指導、交流を続けてきた。こうした北海道に根づいたカープ熱に火を注いだのが新球場、エスコンフィールドなのだ。なにしろ建設地がずばり北広島市だ。パ・リーグは本拠地ファイターズ愛ながらセ・リーグはカープ愛を秘めることになる。そのカープ愛とファイターズ愛が北海道の“広島の地”で火花を散らすという北海道民には随喜の涙の対戦が実現したのがセ・パ交流戦というわけ。“広島ダービー”の異名をとる盛り上がりだ。結果はご承知のとおり、新井カープが新庄ファイターズに3タテを食わせるという予想外(?)となったが、北広島市民の満足度は高かったろう。次の夢は「ファイターズとカープの日本シリーズをエスコンフィールドで」とのことだが、最近の両チームの健闘ぶりをみると意外に「実現は近いです」とは当社の広島出身記者のご託宣だ―。


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