2023.6.13

盛土規制法が施行、全国一律の基準で規制

罰則強化、無許可造成は最大3億円の罰金

2021年7月に静岡県熱海市において発生した土石流災害などを踏まえ、盛土などに伴う災害の防止を目的として、宅地、農地、森林などの土地の用途にかかわらず、危険な盛土などを全国一律の基準で包括的に規制する盛土規制法が23年5月26日に施行された。

同法施行後、告示された基本方針では、基礎調査は、盛土などに伴う災害の防止のための対策を講ずるに当たって不可欠な調査と位置づけ、都道府県(指定都市、中核市含む)は、速やかに基礎調査に着手するとともに、おおむね5年ごとに調査を行うことが必要とした。調査実施後、都道府県は、速やかに関係市町村長に対し、基礎調査の結果を通知。また、「規制区域」の候補区域の範囲を示した図面を、インターネットを利用して公表する。盛土で被害が出るおそれのある「規制区域」を都道府県知事などが定めて区域内での工事を許可制とする。規制区域は2つ。1つは「宅地造成等工事規制区域」。市街地や集落など、盛土などが行われれば人家などに危害を及ぼしうるエリアを指定する。もう1つは「特定盛土等規制区域」。市街地、集落などからは離れているものの、地形などの条件から、盛土などが行われれば人家などに危害を及ぼしうるエリアを指定する。また、盛土などが行われた土地について、土地所有者などが安全な状態に維持する責務を有することを明確化。無許可で造成などを行った場合、最高で3億円の罰金を科すなど罰則を強化した。

同施行の通知に合わせ、技術基準に基づく安全対策の考え方や設計・施工の留意点を整理した「盛土等防災マニュアル」や、既存盛り土の安全性の確認や対策方法をまとめた「盛土等の安全対策推進ガイドライン」を地方自治体や関係事業者に周知する。

「盛土等防災マニュアル」では、過去の災害事例も踏まえ安全対策の規制を強化した。渓流などの盛り土に必要な措置や崖面以外の緩やかな斜面の保護に関する基準などを規定。新たに規制対象となった「土石の堆積(一時堆積)」、安全対策の確認手段として新設された施工時の中間検査・定期報告の基準も規定された。

盛土規制法においては、既存盛土等に対する命令・勧告などの事務について、客観的なリスク把握に基づく制度運用が行えるよう、定期的に基礎調査を実施することとしており、その手法は23年5月に公表された「基礎調査実施要領」に示されている。「盛土等の安全対策推進ガイドライン」では、基礎調査などとして実施する盛土などの抽出、安全性把握調査の具体的な方法に加え、安全対策や復旧対策、維持管理も含めて、既存盛土などの安全対策の推進を図るため、その実施の考え方や一連の流れ、具体的な方法を示した。