2023.4.24

日本セルローズファイバー工業会、木外装、ダイライト、セルロースファイバーで防火構造認定を取得

セルロースファイバーの需要拡大を図る

日本セルローズファイバー工業会は、木質外装+ダイライト+セルロースファイバーの外壁構造で防火構造認定を初取得した。セルロースファイバーを採用可能な外壁構造の組み合わせを広げることで、その需要拡大につなげる。

日本セルローズファイバー工業会は、セルロースファイバー断熱材の施工に関する研究や効用拡充、事業拡大に向けた調査などを行っている団体だ。会員は現在、王子製袋 ダンパック販売部、日本製紙木材 断熱材事業部、吉水商事 断熱建材部、デコスの4社となっている。

同工業会が訴求しているセルロースファイバーは湿気を吸放出する調湿性能を備えるほか、ホウ素系化合物を添加して難燃処理を施すことで約1000℃の炎でも燃え広がらない耐火性能を備える断熱材。原料は古新聞などのリサイクル材を使用するため、製造時の消費エネルギーが少なく、環境貢献性が高い素材として期待されている。しかし、その採用先は環境意識の高い一部の先進的な地域ビルダーや工務店に留まっており、断熱材全体での出荷量ベースのシェア率は在来工法で1%強とまだまだ市場が小さいのが現状だ。

そこで、セルロースファイバーを採用可能な外壁構造の組み合わせを広げることでその需要拡大を図ろうと、同工業会はこのほど外装材に木材、耐力壁に大建工業の外壁耐力下地材「ダイライトMS」、断熱材にセルロースファイバーを採用した在来工法の外壁構造で30分の防火認定を取得した。これにより、木材が外壁に使用可能となったことで意匠設計の自由度が向上するほか、脱炭素など環境負荷低減の需要に向けた訴求も可能となった。

今回組み合わせで認定を取得した「ダイライトMS」は、ロックウールとシラスという火山性のガラス質材料を原料とした無機質系素材で、耐震性、防火性、防蟻性に加え、透湿性にも優れており、セルロースファイバー特有の調湿性を効率的に生かすことができる。そのため、年間を通して壁体内の結露を防止し、乾燥状態を保つことが可能で、住宅の長寿命化にも貢献する。

具体的な構造は「木材外壁9㎜以上、通気層、ダイライトMS9㎜、セルロースファイバー75㎜以上、石膏ボード9.5㎜以上」となっている。この構造について同工業会の事務局を務めるデコスの藤田隆太 取締役特販部長兼品質管理部長は、「柱幅と同じ105㎜までセルロースファイバーを吹き込めば認定を取ることは容易だったが、地域ビルダーや工務店では真壁を採用しているケースも多い。そのため、こうした需要先が使いやすいように認定が取得出来るギリギリの厚みにあえて挑戦したが不安もあった」と開発時の苦労点を話す。

また、従来、工業会では木質外装施工時の耐力壁にアイカ工業が販売する「モイスTM耐力面材」との組み合わせを採用してきた。「モイスTM耐力面材」は不燃材認定を取得しているだけでなく、木材やセルロースファイバー以外にも様々な外装材や断熱材との組み合わせで防耐火構造認定を取得しており、汎用性が高い。しかし、コロナ禍で原料不足が発生、調達が一時困難になり、モイス一辺倒での対応には限界があると判断したことも今回の認定取得に至った理由の一つだったという。

そのため、今後は、「ダイライトMS」に限らず様々な耐力壁との組み合わせでの認定取得も目指していく方針で、セルロースファイバーの普及に向けた動きをさらに加速させていきたい考えだ。