2023.4.4

ナイス 循環型木材サプライチェーンを構築へ

日本の山を変えるために

ナイスは、循環型木材サプライチェーンの構築を目指している。まずは徳島県内の社有林でモデルを確立し、将来的には全国への水平展開を目指したい考えだ。

現状の日本の木材業界では、森林所有者や素材生産者、流通業者、製品販売業者などの川上から川下に係る多様な事業者の間での情報の共有が滞っており、本当にマーケットで求められている量、サイズ、材質の木材が流通しているとは言い難い現状がある。

こうした状況を是正しようと、ナイスでは素材生産から製材販売までの事業を一気通貫でカバーする木材流通サプライチェーンの構築にかねてから取り組んでいる。その一環として、2021年には新規部署の「素材流通部」を設立、マーケットの正確な情報を川上側にも共有することで、マーケットの需要に即した素材流通体制の構築を進めてきた。

資材事業本部の髙木靖副本部長は、「林業・木材業界では以前からプロダクトアウトの構図が続いている。こうした状況はかねてより疑問視していた部分でもあり、マーケットありきで製品が製造・販売されるように現状を変えていく必要がある」と業界の実態に一石を投じる。

昨年10月に新会社を設立
徳島県でモデルを確立へ

同社は全国8カ所で社有林「ナイスの森」を保有しており、徳島県にはそのひとつである「ナイス徳島の森」(徳島県那賀町)があるほか、子会社兼製材工場である「ウッドファースト」(同小松島市)も有している。

ナイス原木流通では、4人1組で伐採に係る一連の業務を分担して作業している

昨年10月には同県内の地元木材事業者から原木流通事業を引き継ぐかたちで、グループ会社の「ナイス原木流通」(小松島市)を新設。このほど、この新会社を中心として、徳島県内で再造林や育林も経営の枠組みに含めた循環型木材プラットフォームの事例として「徳島モデル」の確立を目指す方針を掲げた。

近年、戦後に植林された人工林の多くが伐期を迎えているにもかかわらず、これらはあまり利用が進んでいない実態がある。「徳島モデル」では、こうした人工林を適切に使用するほか、伐採後の再造林やその管理を欠かさず行うことで、荒れ果てた山林を元の正常な森林サイクルに戻しつつ、安定した木材供給を目指していく。

現在、4人1組体制で伐採に係る一連の業務を分担しており、月間の素材生産量は300㎥。しかし、「人件費など諸経費を差し引いたうえで、事業としてより安定した素材流通につなげるためには500㎥は確保したい」(髙木靖副本部長)として、近いうちに生産量の見直しを図る方針だ。

今後は、「徳島モデル」の完成を目指しつつ、全国で同様のモデル構築に賛同する川上から川下までの事業者を募り、全国規模の団体の形成や事例の水平展開をしていく考え。髙木副本部長は、「循環型サプライチェーンの構築は一朝一夕でできるものではないが、『日本の山を変えたい』という大義を持って事業に取り組んでいく」と同事業に込める意気込みを語った。