補助事業の影響で内窓設置が急拡大
受注大幅増加の一方で、生産が間に合わず納期延長も
補助上限が「最大200万円/戸」という大規模補助金制度「先進的窓リノベ事業」などの影響で窓リフォームの受注が伸びている。特に内窓の設置が顕著で「市場の拡大に生産が追い付かない」といった声も上がっている。窓断熱の認知度、市場拡大が急速に進みそうだ。
経済産業省と、環境省が実施する「先進的窓リノベ事業」は、一定の基準を満たす高断熱窓の設置に対して補助を行うもの。1000億円という過去に例のない大規模予算になっており、受け取れる補助額も大きい。対象工事はガラス交換、内窓設置、外窓交換(カバー工法、はつり工法)で、5万~上限200万円/戸。例えば、Uw値1・1以下のSSグレードの内窓を設置する場合では、一番大きいサイズ(2・8㎡以上)の窓で一窓あたり12万4000円の補助金を受け取れる。また、窓改修への補助金としては、国土交通省の「こどもエコすまい支援事業」でも補助を行なっており、先進的窓リノベ事業の対象になる性能を満たしていなくても、省エネ基準、ZEHレベルの性能を持つ窓への改修で補助を受けられる。
こうした補助金制度の影響を受け、サッシメーカー各社で、高断熱窓の引き合いが堅調だ。
YKK APは、「内窓を中心にかなり受注を受けている。需要があまりに大きく、生産が追い付いていない」(堀秀充社長)としている。内窓に関しては、10月~11月を目安に生産能力を3倍へ拡充予定であったが、すでに受注が3倍近くに及んでおり、7月くらいまでには生産能力3倍で稼働できるように計画を前倒して進めている。具体的には、設備の増強や、施工者不足を解決するため、サッシ事業者以外の意欲のある施工者に対し施工講習などを行いサポートしていく。
同社は、2月より「窓・ドアリフォーム省エネ補助金ナビ」を公開、3省連携による住宅の省エネ化補助事業「住宅省エネ2023キャンペーン」における対象製品の補助金額と冷暖房費削減効果の目安をシミュレーションにより分かりやすく提示し、訴求に力を入れる。
LIXILも内窓の受注が好調だ。「補助金の影響による受注の増加率は想像以上」という同社は、足元の受注で2倍以上だとしており、通常3日程度で納品となる製品の納期を、1か月程度に延ばさざるを得なくなっている。同社は、生産能力を3倍に強化する方向で動いている。
三協立山は3月発注分から、内窓のリードタイムを5日~10日ほど延長している。
窓改修が広がるきっかけとなったのが、2010年の「住宅エコポイント制度」だ。当時、経済産業省が発表したメーカー聞き取りに基づく内窓の出荷量では、申請受付が開始された3月から一貫して前年同月比を上回り、ピーク時の4月においては同421%と4倍以上の出荷量となった。今回の「先進的窓リノベ事業」は、住宅エコポイント制度に比べて還元率が高いことから、さらに大きなインパクトが予想される。
今回の制度は、玄関ドアなど窓以外の断熱改修とも併用ができ、住宅の省エネ化に大きく貢献することは間違いない。断熱化が遅れている集合住宅への省エネ改修の広がりもありそうだ。窓の断熱改修を中心とした、リフォーム市場の活性化が期待される。
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