ガスとお湯が実現する豊かな生活 カーボンニュートラルに向け今できること

ベターリビングと日本ガス協会がガスとお湯の50年でシンポジウム

『「ガスとお湯の50年」シンポジウム~快適・健康な暮らしを目指して~』が開催された。
ガス瞬間湯沸かし器の誕生から現在までガスとお湯は豊かな生活の実現に大きく貢献してきたが、カーボンニュートラルの実現が課題となるなか、今後はどのような役割が期待されるのか、産学官のさまざまな出席者から展望が語られた。

2月10日、(一財)ベターリビング(BL)と(一社)日本ガス協会が『「ガスとお湯の50年」シンポジウム~快適・健康な暮らしを目指して~』を開催した。

ガス瞬間湯沸かし器が誕生し、ガス給湯器の優良住宅部品(BL部品)認定がスタートしてから約50年が経過するなか、BLは住生活の充実、機器開発の将来像についての展望を目的とした「ガスとお湯の50年」プロジェクトを展開、これまでに「ガスとお湯の50年~時代とともに、暮らしを豊かに~」、「マンガでわかる 暮らしを変えたガスとお湯の物語」を発刊してきた。

シンポジウムは同プロジェクトの一環として行われ、「カーボンニュートラルの実現に向けた住宅政策について」と題した国土交通省の山下英和・住宅局住宅生産課長による講演、同プロジェクトの企画委員長を務める田辺新一・早稲田大学教授の基調講演、そしてガスとお湯に関わるさまざまな関係者によるパネルディスカッション「カーボンニュートラルな社会と、ガスとお湯による豊かな暮らしの実現に向けて」という内容で開催された。

「ガスとお湯」の歴史を振り返りつつ、各分野の現状の取組みや課題を共有するとともに、これからのカーボンニュートラルな社会と、快適・健康なより良い暮らしの実現について展望した。

開会に当たり、BLの眞鍋純理事長が「この50年でガスとお湯がある暮らしはすっかり定着し、今や発電にもガスが使われるようになっている。安全性、経済性、操作性も非常に向上し、生活に溶け込んでいる」と現状を語り、「カーボンニュートラルと快適性の両立というテーマは非常に幅広く、さまざまな視点からの議論を期待している」と挨拶した。

(一財)ベターリビングの眞鍋純理事長が、開会にあたり挨拶を行った

カーボンニュートラル実現に向け徹底した省エネと再エネ導入を

山下課長は住宅政策におけるカーボンニュートラルへの取り組みを紹介した。

国が目指すカーボンニュートラルの実現に向けて、2030年に新築においてZEH・ZEBの省エネ性能確保を、2050年にストック全体でZEH・ZEBの水準を目指すことを紹介した。その第一歩として2025年に省エネ基準の適合義務化、2030年までに基準のZEH・ZEB水準に引き上げを行い、より高い性能を目指すため誘導基準をZEH・ZEB水準に引き上げたことを説明。

ZEH・ZEBを実現していくための補助、税、融資といった支援策に関係省庁と連携して取り組み、建物そのものはもちろん、建材や設備についてもレベルを高めていく取り組みも進めるとした。

また、既存ストックの対応も重要なテーマであり政策を総動員して取り組むとした。

建築ができることは、省エネと再生可能エネルギー増加の2つ

基調講演には早稲田大学の田辺新一教授が登壇

続いて、基調講演に田辺教授が登壇した。子どもの頃の五右衛門風呂の経験からプレハブ住宅での暮らし、学生時代のデンマークへの留学など自分の経験を踏まえて、ガス給湯器の導入による利便性の向上、日本と海外の住宅の断熱性の違い、また、入浴習慣の違いなどについて紹介した。特に日本の住宅の断熱性の低さに言及、エネルギー使用だけでなく健康への影響も大きいことについて言及した。

また、今、ヨーロッパでは、脱炭素に関して新しいバウハウスを考えようという運動「ニューヨーロピアンバウハウス」が起こっていることを紹介した。バウハウスが産業革命の後に近代建築を変えたように、新しい建築を考えていこうという動きである。「カーボンニュートラルで、産業や社会構造が大きく変わる可能性がある。産業革命で変わったようなことが起きる可能性があると認識している」とし、建築ができることとしては「徹底して省エネすること、再生可能エネルギーを増やすこと、この2つしか方法はない」と指摘した。

また、断熱性とあわせて快適性や健康については、CASBEE健康チェックリストにおける暖かさの得点を様々な個所の温度から計算する数式で算定し比べると、同じ断熱仕様にしても床暖房を入れると暖かさの得点がアップすることなどを踏まえ、「エネルギーと快適性・健康の両方を評価していくことが極めて重要だ」と指摘した。

パネルディスカッションでは、パネリストとして東郷氏、田村氏、澤口氏、林氏が登壇。ファシリテーターは神崎氏が務めた

快適・健康な豊かな暮らしにさまざまな取組み

パネルディスカッションは、パネリストとして東郷悟史氏(東京ガスカスタマー&ビジネスソリューションカンパニー 企画部 エネルギー公共グループ 住環境チームリーダー)、田村智氏((一社)住宅生産団体連合会住宅性能向上委員会WG主査)、澤口司氏(スイコー代表取締役)、林泰平氏(リンナイ開発本部 第一商品開発部 第三温水設計室 室長)が登壇し、ファシリテーターを神﨑茂治氏((一社)ベターライフリフォーム協会 顧問)が務め行われた。

テーマは、「ガスとお湯による快適・健康な暮らしの実現に関するこれまでと現在の取組み」、「カーボンニュートラルに向けた取り組みと今後の快適・健康でさらなる豊かな暮らしに向けた課題」の2つ。

林氏は、給湯器の高効率化や小型化といったこれまでの改善また、電気とガスのベストミックスを図ったハイブリッド給湯器の開発などに取り組んできており、現在は、高効率給湯器を普及していくため、販売店や住宅事業者に向けた勉強会を開催していることを説明した。

澤口氏はリフォーム事業者の立場から、ガスとお湯を活用した水回り・暖房に関わるリフォームニーズの変化と現状を解説。従来のリプレース的なリフォームから性能を上げるリフォームへと提案と切り替え、お湯の価値を高める取り組みに力を入れているとし、具体事例を紹介した。

また、東郷氏は、生活者目線に立って快適で健康なお湯の使い方を提案し続けてきたガス事業者の取り組みを説明。今後については、まずは徹底した省エネつまり高効率給湯器の普及が重要で、中でも脱・低炭素化の手段が限られる既存住宅ではエコジョーズへの切り替えが効果的とした。一方、過度な省エネは長続きせず、健康に悪い住まい方となる可能性にも触れ、お客様のニーズを理解し提案できるガス事業者の強みを活かし快適、健康な住まい方を提案していきたいと今後を展望した。

田村氏は、住宅事業者の視点から、ガスとお湯がもたらした快適、健康な暮らしの変化に触れ、住宅購入時やリフォーム時にユーザーに対する丁寧な説明を心がけていると取り組みを説明した。また、断熱改修がなかなか進まないなか、リビングや水回りなど部分的断熱改修の提案も大事にしていきたいとした。

神﨑氏は「お湯は豊かな生活を実現してきた。これを大事にしながら、さらに快適、健康な暮らしに貢献できたら」とディスカッションをまとめた。

閉会にあたり、呉祐一郎常務理事は「ガスとお湯の50年プロジェクト、シンポジウムを通じて、これからのカーボンニュートラルな社会と快適・健康なより良い暮らしの実現に向けて、未来を拓くガスとお湯の普及に尽力していきたい」と挨拶した。

ガスとお湯の50年プロジェクト 特設サイト

「ガスとお湯の50年プロジェクト」特設サイトでは、2冊のデジタルブックを閲覧できます。

https://www.cbl.or.jp/gastooyu/