「逝きし世の面影」の渡辺氏逝く/都市は田園、家は舞台空間

「逝きし世の面影」の渡辺氏逝く

日本近代史家、思想家、評論家、作家など数々の肩書きで称される渡辺京二さんが亡くなった。喪失感が強い。代表作「逝きし世の面影」(平凡社ライブラリー)を読んだときの感激は今なお新鮮に蘇る。記者生活のなかで、書き悩んだようなとき、新たな見方やエネルギーを吹き込んでくれた。同書は幕末から明治にかけての来日外国人が見た日本についての膨大な記録、著作を収集、精査、分類し、論考したものだ。わが国が西洋化し、近代化するなかで異邦人の鏡に映った日本の自然や風土がいかに美しく、人々の生活が豊かで幸福感に満ちていたか。イディオロギーなど関係なく、これでもか、これでもかと、異邦人の言葉を積み重ねていく。同書のほんの一端、異邦人の心を奪った日本の美しい自然、景観、住まいだけの記述を読んでもワクワク感が募る。

「風景は絶えず変化し、しかも常に美しい―丘や谷、広い道路や木陰道、家と花園、そこには勤勉で、労苦におしひしがれておらず、明らかに幸せで満ち足りた人々が住んでいる」。「百姓家は絵のように美しく、とても実利一点張りの用途を持つものとは思えない。現実の住み家というよりはむしろ今まさに巻いて片づけようとする舞台用の絵のようなのだ」。


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