2022.12.7

プレハブ建築協会、「住まいる小町」活動通じ働きやすい環境を整備

住まいの女性ホームドクターにスポットライト

(一社)プレハブ建築協会 住宅部会 CS小委員会は、アフターサービス業務に従事する女性スタッフを「住まいる小町」の愛称で呼び、顧客に対するホスピタリティやアイディアなど女性らしい感性を従来のサービスに融合させることによって新しいサービスや価値を開拓していく活動をスタートした。女性ホームドクター(点検・相談担当)が働きやすい環境を整備し、ストック需要の開拓につなげていきたい考えだ。

点検ロールプレイング見学会で講師を務めた、(左から)積水ハウス 埼玉カスタマーセンター 埼玉オフィス お客様サービス課 係長の雷坂麻衣氏、ミサワホーム お客様センター統括部 神奈川CS推進部 神奈川お客様センターの安慶田眞紀子氏、大和ハウス工業 柏支社 お客様相談センターの鈴木藍子氏

我が国の住宅ストック約6240万戸(2018年)のうち、居住世帯のあるストックは約5360万戸となっている。住宅ストックの中で、一定の質が確保された既存ストックは、約800万戸程度あると見込まれるが、既存住宅の流通戸数は年間約16万戸で、ほぼ横ばいで推移している。2021年3月、閣議決定された「住生活基本計画(全国計画)」の中において、国は今後10年間の住宅政策の方向性を示す8つの目標の一つとして「脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成」を掲げた。補助事業や税制優遇などにより、既存住宅流通市場、リフォーム市場を盛り上げていく取り組みを強化する。

こうした背景がある中で、大手ハウスメーカー各社はストック市場の開拓に向けた取り組みを推進する。その一環として重要性が高まっているのが、引き渡し後の定期点検、アフターサービスだ。これらの強化により、メンテナンスやリフォーム工事、さらには紹介受注などの獲得につなげていこうという生涯顧客化戦略を活発化している。

定期点検をブランド化
女性の担い手増加に期待

(一社)プレハブ建築協会 住宅部会では、工業化住宅の強みを生かし、一般ビルダーとの差別化を図るために、「定期点検」の人材を育成し、ブランド化を図ることを目的に「プレハブ住宅点検技術者資格認定制度」の講習会を実施するなど、「良質な住宅ストックの更なる普及促進」に向けた活動を活発化している。

住まいる小町がモデルルームを活用して、普段の点検業務の進め方を解説した

また、2021年度から同協会 住宅部会 CS小委員会(青方均 座長・旭化成ホームズ オーナーサービス推進本部 品質保証担当)が中心となり、定期点検のブランド化を目指し、女性スタッフ活躍支援などの新たなワーキング活動も開始した。
定期点検、アフターサービス業務に従事するホームドクターの層を厚くし、サービスの質を高めることで、ストック需要の開拓、収益力強化が期待できる。

特に近年、出産や育児をサポートする福利厚生の充実や、時短勤務やテレワークなど、女性が活躍できる環境整備が進んだことで、ホームドクターとして活躍する女性が増えてきている。女性らしい感性を生かして丁寧にヒアリングし、リフォームやストック活用の提案を行うことで、顧客からの信頼を得られやすいということも分かってきている。

そこで、女性ホームドクターにスポットライトをあて、「住まいる小町」の愛称で名づけ、育成、支援していくために「住まいる小町」活動をスタートした。

大手ハウスメーカーの中でも、特に大和ハウス工業は、定期点検、アフターサービス業務への女性スタッフの活用を積極的に進めており、「住まいる小町」は、大和ハウス工業が使用し始めた名称である。(一社)プレハブ建築協会としてハウスメーカー各社横並びで同様の取り組みを推進していく上で、大和ハウス工業と協議し名称使用の許諾を受けた。
また、「住まいる小町」活動を、単に性別による差別をなくすためのものではなく、男女問わず誰もが自分の能力を発揮できる社会、多様性に富んだ社会へと変化させていく、SDGs目標5に掲げられる「ジェンダー平等を実現しよう」を促進する活動としても位置付ける。

女性限定のオフサイトミーティングで
悩み、困りごとなどを共有

2022年2月18日には、「住まいる小町」の最初の活動として、女性スタッフ限定の「オフサイトミーティング」を開催した。
CS小委員会の副座長を務める大和ハウス工業 CS推進部統括グループ 担当次長の中村晃平氏は「女性が増えてきたとはいえ、各社の事業所、部署単位では、依然として女性比率は低い状況が続いている。そのような環境下では、女性だけで孤立して、相談がしづらかったり、悩みを打ち明けることができないまま仕事を続ける方は少なくない。そこで互いに悩みを打ち明けられる場としてオフサイトミーティングを開催した。企業間の垣根を乗り越えた横のつながりをつくり、お客様に喜ばれる新たなサービスや価値を生み出していく場となることにも期待している」と話す。

オフサイトミーティングには、5社から25人の住まいる小町が参加。「点検員の制服を女性にも似合うものに変えてほしい」といったものから、「アフターサービス業務において、どのように説明すればお客様に納得してもらえるのか、同じようなところで悩んでいる方がいて共感できた」、「職場環境改善の一環として女性スタッフを増員してほしい」といった様々な声があがった。
大和ハウス工業 柏支社 お客様相談センターの鈴木藍子氏は、「様々な世代の住まいる小町の方々と意見交換でき、モチベーションアップにつながり、もっと頑張ろうという気持ちになれた」と話す。

点検ロールプレイングを実施
ノウハウを共有しレベルアップ

点検ロールプレイング見学後、住まいる小町同士で、気づきや疑問点などを意見交換した

2022年11月7日には、他社の点検方法をお互いに見て気付きを得る「点検ロールプレイング見学会」をオンラインで開催した。2月のオフサイトミーティングの中で「他社の点検業務の詳細を聞き、何が正解なのかを知りたくなった。情報交換会を行いたい」という声があったことを受けて企画した。

大和ハウス工業、ミサワホーム、積水ハウスの住まいる小町が点検ロールプレイングを披露する講師として登壇。38人の住まいる小町、関係者含め62人が参加した。「自社とは違う点検、メンテナンスの方法を教えてもらい参考になった」、「他社の点検マニュアルが充実していて、自社でも取り入れてほしい」などの反響があった。

新築住宅の分野では、各社が横並びでノウハウを共有して営業活動を進めるといった取り組みへのハードルは高いが、ストックの分野では、各社横並びでノウハウを共有して、アフターサービスのレベルアップを図っていくことには取り組みやすいという。

今後も、オフサイトミーティングや、点検ロールプレイングなどの取り組みを継続して実施していくほか、女性でも操作しやすい点検治具など商品開発にも取り組んでいく計画だ。ストック市場拡大が喫緊の課題となる中で、アフターサービス業務を担う女性ホームドクターを育成、支援していこうとする「住まいる小町」活動の重要性はさらに高まっていきそうだ。