2022.10.26

トヨタホーム、多角化推進で成長軌道に 22年度は最高益の見通し

街づくりで収益拡大 ストック事業も成長

トヨタホームは事業概況説明会を開催した。原価低減と販売棟数確保により新築事業の成長を実現。また事業の多角化を進め、分譲マンションや分譲住宅など街づくり事業の収益を拡大、ストック事業も成長し、2022年度は過去最高益を見込む。

トヨタ自動車とパナソニックは2020年1月、住宅事業を統合し、プライム ライフ テクノロジーズ(PLT)を設立。トヨタホームは、PLTの持ち株会社の1社として事業を展開する。トヨタホームの後藤裕司社長は、「PLT設立により、グループ連携による集中購買、施工最適化による原価低減、コールセンターやCSアンケートなどの業務効率化、『商材』の相互活用、研修や相互出向を通じた人材育成、戸建分譲の共同での街づくりなど、相乗効果が生まれている」と話す。

戸建住宅の高付加価値化
単価アップ、利益率改善

トヨタホーム単体の業績も好調だ。同社は、2020年1月、PLT発足時に中期経営計画を策定。2020年度~2022年度をフェーズⅠとして、「基盤強化」の期間と位置付け、「収益力の大幅改善(個社の実力強化)」、「次世代に向けた仕込み」、「シナジー創出」などを進める。

第一に推進するのは「CS基軸経営」だ。「お客様第一を考え、良い住まい・街づくりを徹底する」(後藤社長)。現場を知る人材育成により商品力強化などにつなげることを目的にメーカー社員の販売店出向比率を高める取り組みも推進する。2020年3月末時点で17%だった出向比率は、2022年3月末時点で30%にまで高まっている。

新築事業においては、棟当たり利益改善・原価低減など体質強化を進め、販売棟数確保により新築事業の成長を目指した。コロナ禍で2020年度の販売棟数は大幅減となったが、2020年度を底に販売棟数は回復基調にある。同社の鉄骨系戸建販売棟数の推移は、2018年度が3718棟、2019年度が3485棟、2020年度が2993棟、2021年度は3190棟。2022年度は3300棟を見込む。「2019年度以前は、新築事業で営業利益をほとんど確保できていなかった。しかし、中期経営計画で定めた基盤強化に向け、棟当たり利益向上、原価低減、徹底的なコスト削減を進めた結果、損益分岐棟数の引き下げに成功し、営業利益は2019年度を底に右肩上がりで伸び、着実に利益を確保できる体制に変わっている」(後藤社長)。棟当たり利益向上には、高付加価値化戦略が奏功している。DENSOと共同開発した全館空調「スマート・エアーズ」の搭載率は2018年度の約4割から、2022年度4~8月には約6割にまで上昇。車を住まいとつなぎ電源として利用する業界初の非常時給電システム「クルマde給電」の装着率は56%(2022年4~8月、注文住宅)となっている。また、販売した住宅全体のうちのZEH供給率は2020年度の58%から、2021年度には71%に上昇。2022年度は75%の見込みで、2025年度までに80%を目指す。

資材高騰の影響もあるが、自助努力で価格転嫁を最小限に抑える。「鋼材、木材、非鉄、樹脂など、資材高騰は2021年度後半よりさらに加速している。多くの住宅会社は、2020年度比で1棟当たり約250万円前後の価格アップをせざるを得ない状況と見ている。当社においては、原価低減などにより、250万円の半分も転嫁していない」(後藤社長)。

こだわりの街づくりで収益大幅改善

図1 総販売戸数

図2 中期経営計画(20〜22年度)

街づくり、ストック、海外と、事業の多角化も進める。街づくり事業においては、官民連携による街づくりを全国で展開し、「ミヨシ ミライト」(愛知県みよし市)、「ザ・シェブロンノット」(千葉県印西市)、「ザ・セントラル」(東京都昭島市)などの取り組みで、2021年度グッドデザイン賞を受賞した。販売も好調だ。「ミヨシ ミライト」は、2020年9月に街開きを行い、全288区画のうち、トヨタホームは173区画を販売。2022年8月時点で143区画販売済、成約率83%となっている。「ザ・シェブロンノット」は、2021年2月に街開き。全85区画のうち81区画が販売済で、成約率95%。「ザ・セントラル」は2021年6月に街開き。全60区画のうち41区画販売済で成約率68%となっている。


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