木材調達に関する複数の選択肢を提供していくために
中国木材 堀川智子 代表取締役会長
ウッドショックによる木材不足から一転し、木材の在庫量の増加が問題視されはじめている。こうした中、中国木材では、住宅業界に複数の選択肢を提供し、より安定的なサプライチェーンを構築するためのソリューションを提案する。同社の堀川智子会長に話を聞いた。
──ウッドショックから住宅業界は何を学ぶべきだとお考えですか。
1992年頃に発生した第一次ウッドショックを契機として、当社では国産材活用に取り組みはじめました。当時の社長であった堀川保幸(現最高顧問)が米材の価格高騰を経験し、今後も同じような事態が起こり得ると考え、新たな調達先の開拓に乗り出したのです。
世界中の針葉樹を調査しましたが、最終的にたどり着いたのが日本のスギやヒノキでした。そこから国産材事業をスタートさせました。今回のウッドショックを経験し、最高顧問の考えは間違っていなかったと実感しました。
足元の状況ではウッドショックの影響は解消されつつあります。ただし、米材の価格は、円安の影響もありそれほど下がっていません。ヨーロッパでは再び日本への輸出に注力しようという動きもありますが、今後の動向は不透明です。
アメリカや日本の需要を支えてきたカナダ産木材の供給が減少するのではという見方もあります。カナダでは、マウンテンパインビートルという害虫が大量に発生し、その被害を抑制するために本来の伐採周期よりも早いタイミングで木材を伐採してきました。その結果、供給量が増えていたわけですが、ここにきて虫害材の処理も終盤となり、本来のサステナブルな伐採周期へ戻そうという動きが出てきているようです。そうなると、本来の伐採時期よりも早いタイミングで伐採してきたわけですから、しばらくは伐採量が減る懸念があるのです。こうした状況も今後の木材市況に影響を及ぼす可能性があります。
それだけに、複数の選択肢を持っておくことが、安定的な木材のサプライチェーンを構築する上では重要なのです。当社では、外国産材と国産材という選択肢を用意しており、木材市況などを考慮しながら、最適な材料を住宅事業者の方々に供給する体制を整えています。この点こそが当社の強みであり、住宅事業者の方々のお役に立てる部分だと自負しています。
必要な時に必要な材を供給するバッファーとしての役割を
──ウッドショックでは国産材の安定供給に関する課題も浮き彫りになりましたが。
需要が一気に高まったので、供給側が対応できないという状況に陥りました。木材は需要が高まったからと言って、すぐに増産することが難しい材料です。そのため、需給状況に応じて供給量を素早く調整するためのバッファーが必要なのです。
当社の日向工場では、木材を天然乾燥するための広大な敷地を有しています。そこに膨大な量の木材を保管しています。それだけの在庫を持つことはリスクも伴いますが、必要な時に必要な木材を供給するためには、こうした取り組みが不可欠なのです。
また、市況に関係なく丸太を受け入れるようにしています。そうすることで、山側の方々も安定的に木材を伐採し、利益を得ることが可能になるからです。
現在、秋田県能代市でもこの日向モデルを活用した新工場を建設しています。この新工場もバッファーの役割を担っていく計画です。
森林保有量も増やす
年内にも1万haに達する見込み
──山側から木材が出てこないという問題もあるようです。
山側から木材が安定的に出てこない問題のひとつが、森林経営の規模が小さいということです。日本の森林所有者の9割が10ha未満の山林しか保有していません。これでは林道を整備したり、高性能な林業機械を入れるためのコストは負担できない。しかも、九州の面積と同じくらいの面積の所有者不明土地があり、その多くが森林という問題もあります。
こうした状況を変えるために、森林経営管理制度や森林環境譲与税といった新たな取り組みがスタートしていますが、上手く機能すれば国産材活用に関する動きが新たなステージに向かうのではないかと期待しています。
一方で当社では自社で保有する森林を増やしていこうとしており、早ければ年内にも1万haに達する見込みです。自社で森林を保有することで、木材のサプライチェーンはさらに安定すると見ています。
ウッドショックがもたらした良い影響もありました。国産のスギに対する認識が少し変わったことです。
当社が国産材の事業をスタートした当初から、「国産スギの方がホワイトウッドよりヤング係数が低いから安くないと買わない」と言われ続けました。しかし、柱に使う分にはスギのヤング係数でもほとんどの場合、問題ないのです。耐久性といった点ではスギの方が優れている部分もあります。
スギ集成柱の生産を始めた当初は曲りのクレームも発生しましたが、多くの改良を重ね、今ではホワイトウッドとそん色ないものになっています。
ウッドショックをきっかけに、国産スギを採用していただいた住宅事業者の方々からは、高い評価をいただいています。こうした認識が広がることで、国産材に対する誤解も解消されていくのではないでしょうか。
林業再生に向けた課題はいまだに山積みです。しかも、それぞれの課題が複雑に絡み合っている。そうした状況の中で、当社も含めて様々なプレイヤーが辛抱強く絡み合った課題をほどきながら、課題解決のための取り組みを進めています。
冒頭に述べたように、安定的なサプライチェーンを構築するためには、複数の選択肢を持っておく必要があります。その選択肢のひとつが国産材であることは間違いありません。それだけに、豊富な森林資源を上手に使いながら、木材自給率を高めていくことがこれからも大切なのではないでしょうか。
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