2022.9.14

最新間仕切りで空間の使い方、自由自在に

多様なライフスタイルを演出

コロナ禍での在宅ワークの普及に伴い間仕切り材への視線が熱い。
空間の大きさの調節ができるだけでなく、風や光を取り込むなどデザイン、機能面で進化を続ける。

スマホやタブレット端末などの普及により、リビングはひとつの場所にいながら個人がそれぞれのことをする空間に変化してきた。2016年には、リクルートが翌年のトレンド予測として、「リビ充」という言葉を取り上げている。リビ充とは、最大限に広げたリビングで、空間を共有しつつ、家族各々が自由に充実した時間を過ごすこと。同年の調査では、「主寝室の広さ」にこだわる家族は2割ほどなのに対し、「リビングの広さ」を「妥協したくない・確保したい」と思っている家族は7割近く存在するなど、リビングでの居心地が重視されている。

このようななか、2020年には新型コロナウイルスの流行により、瞬く間に在宅ワークが普及。「家にいる時間が長くなったことで、家族の時間は大切にしつつ自分の時間がほしいということで個室への要望が強くなった」(三協アルミ インテリア建材課・山本智裕 課長)と、間仕切りへの注目が急速に高まった。例えば、2021年6月~2022年5月の同社の売り上げは、AMiS室内引き戸(デザイン引戸)で前年比112%の伸びとなっている。

換気のニーズに応え、人気を博す三協アルミの「室内窓

同社は、7月、「AMiS」シリーズに「室内窓」を追加した。「効率よく風が抜けるにはどうしたらよいかという点に着目して開発をすすめた」(山本課長)という「回転窓」は窓のどちらからでも開閉ができ、フリーストップ機能により好きな角度での換気ができる。ビルダーやハウスメーカーからの評判も上々で、発売して間もないが、すでにいくつかの分譲住宅への採用が予定されており、今後確実に売り上げが伸びる商品だという。また、マンションのリフォーム時に、リビングから風を通す目的で壁に設置したいという声も聞こえているそうだ。オーダーでのサイズ設定はもちろん、910㎜の柱ピッチを考慮したおすすめ寸法も用意しており、新築にもリフォームにも採用しやすいつくりになっている。面材は5種類のガラスと2種類の樹脂パネルの全7バリエーションを揃えていて、安全性を求めたい場所には割れにくい樹脂パネル、アクセントとして取り入れたい場合はデザインガラスを選択するなど、場面に合わせた使い方ができる。

「室内窓」は、当初、テレワークでの需要を見込んでいたが、その他にも家全体の風通し、採光といった点で2階の子供部屋などに設置する家庭が増えているという。

在宅ワークで人気なのが、L字型やコーナー納まりと呼ばれるもの。立川ブラインド工業は、昨年10月に間仕切「プレイス」「プレイス スウィング」のコーナー納まりに「折戸+引戸」を追加した。普段の出入りは引戸としてスムーズに開閉して、間仕切りを使わないときは折戸として格納することで空間を最大限に利用でき、開放感を感じられる。

立川ブラインド工業のコーナー納まりは「折戸+引戸」の選択で自在な使い方ができる

また、大建工業は「L型コーナー間仕切りは、マンションなどで部屋を増やしたいときに代案として設置する人も多く、よりしっかり仕切れる木製のパネルの要望がある」(住機製品事業部住機開発課・谷口雄祐 氏)ため今後の商品展開として検討していくという。

大建工業が「リノベーション提案で何かできることがないかと考えて、開発した」(谷口氏)のが、「ラインフレーム」だ。マンションにおけるリノベーションでは、規約上、サッシ窓のリフォームが難しいということも少なくない。「ラインフレーム」は、自転車やガーデニングを飾れるインナーテラスという半外空間を創出し、室内の印象を変える提案をしている。

大建工業の「ラインフレーム」は扉を閉めた際の美しさにもこだわった

ラインフレームの特徴としてあげられるのがデザイン性の高さだ。開発に当たっては、これまで同社にはなかったデザインの商品を生み出すために、こだわりを持って試行錯誤を重ねたという。細いフレームですっきりとした見た目に仕上げ、通常の扉と納まりを変えたことで扉を閉めた際にフレーム同士が重なり、1本のフレームのように見せることができる。一方で、そのデザイン性の高さから、室内の間仕切りとして使いたいという声もあり、開口スペースを大きくとれる従来の納まりの扉での販売の検討を進める。

在宅ワークでリビングとのつながりを感じたいという要望から室内窓の展開も視野に入れる。

将来を見越した設計も
広がる間仕切りの可能性

室内にアイデアを加えて新しい空間を生み出す「プラスワン スペース提案」を行っているパナソニック ハウジングソリューションズは、今年2月、インテリア建材「ベリティス」を7年10カ月ぶりに全面刷新。間仕切りでは、新しく「しきり窓」と「Air View」をラインアップに追加した。

パナソニック ハウジングソリューションズの「Air View」。ブロンズ調は照明を柔らかく演出する

「しきり窓」は造作壁工事をすることなく新しい空間を生み出せることがポイント。5段あるパネルの下部分を化粧ボードや有孔ボードに変更すれば、目隠しやメモの貼り付けができる。また、上部は突き出し窓になっており、空気の循環も行える。発売から半年ほどだが問い合わせも多く、今後に期待のできる商品だ。「Air View」は、最小限の壁厚とガラスの素材感を生かしたデザインで圧迫感なく空間を仕切る。業界最細クラスの12㎜フレームで、仕切りパターンも7種類から、空間に合わせたものを選択可能。5タイプあるガラスの中では、ブロンズ調の人気が高い。「照明をつけた際に光が柔らかく感じられる一方で、照明を消していれば仕切りの奥が見えにくいことが理由にあるのではないか」(商品販売企画課・川股友洋 主務)。

そのほかにも、「室内窓」は、暗くなりがちなマンションのサービスルームや納戸に設置すれば、リビングからの光を取り入れられ、空間をワークスペースなどに活用できる。「キュビオス」はもともとテレビ収納だったものを、片面の壁付で自立が可能なようにし、使用シーンの拡大を図る。

立川ブラインド工業は機能性と価格のバランスがよく、1㎜単位の発注が可能なことから、リフォーム需要に強い。特に2019年10月に発売した「プレイス スウィング」は、スリムなフレームと軽い操作感で気軽に開閉を行えることが特徴。採光窓は、フロスト調やクリアタイプだけではなく、和室などにも取り入れやすい和紙調の採光窓も用意しており、年配の方からの支持も厚い。また、部分ごとに使うパネルを変えて組み合わせ、パネルデザインのオーダー制作(カスタムオーダー)も可能でデザインの幅は無限大だ。

間取りの傾向としてリビング階段のある住宅が増えたことから、間仕切りを取り付けることで空調効率を高めたいというニーズもある。「特に冬季に、暖房をつけても暖かい空気がリビング階段から上の階に逃げてしまうという悩みを持たれて、間仕切りを検討するお客様も多い。」(法務広報課・堀内麻美子 主事)と、今後のさらなる省エネニーズの増加に合わせ、断熱効果に絡めた訴求を行っていく。

子ども部屋を作らずリビングに勉強コーナーを設けたり、母親専用スペースの確保などリビングの在り方は多様化している。最近では、ライフスタイルや家族構成の変化を見越して、新築住宅を建てる際に、将来間仕切りを設置できるようにあらかじめ下地材を用意しておくケースもある。

近年の住空間では、離れているけど繋がっている、近くにいるけど区切られているという感覚が重視されているようだ。こうした暮らし方の変化に寄り添う間仕切り商品は今後も求められていきそうだ。