住友林業、木造建築でSDGsを体現する学び舎
ポストテンション耐震技術などを採用
住友林業は木造3階建ての耐火構造で「上智大学四谷キャンパス15号館」を設計・施工した。独自に開発したポストテンション耐震技術などを採用し開放的な空間を実現、外部格子にも防腐処理を施した木材を多用した。
麹町大通り(新宿通り)に面して建つ「上智大学四谷キャンパス15号館」は、既存施設の老朽化に伴い建替えたもので、同大学が提供する社会人プログラム「プロフェッショナルスタディーズ」の学び舎となる。今秋から社会人教育地域交流の拠点として供用を開始する予定。
多様な人々が出会い交流を深め、対話を促す空間を創出するために、また、地域交流の拠点となり都市に馴染むサステナブルなランドマークとなることを目指し、木造3階建ての耐火構造で建設した。
構造には、基礎から屋根まで、各階の集成材耐力部材を貫通させた高強度の鋼棒やワイヤーロープに引張力を与えることで、部材間の固定度を高めるポストテンション耐震技術を、自社グループ以外の物件で初採用した。
また、1時間耐火の大臣認定を取得した同社オリジナル純木質耐火集成材である「木ぐるみFR®」を採用。在来軸組工法の木造建築に、ポストテンション耐震技術による耐力壁や、木をあらわしにできる「木ぐるみFR®」の柱などをバランスよく配置することで、木質感あふれる開放的な空間を創出した。
3階建ての木造であるため、鉄筋コンクリート造などと比べて建物重量を抑えられ、地盤改良工事は、既存の杭を生かしながら小径鋼管杭で補強するだけで済み、コスト抑制にもつながった。
さらに、外部格子にも木材を多用した。多摩産材のスギを使用し、鉄製の下地と組み合わせて、クロス形状の木製の格子で建物全体を覆い、外観に特徴を持たせた。兼松サステックの乾式加圧式防腐・防蟻処理を施した上に、同社オリジナルのシリコン系超撥水塗料を塗布することで優れた耐候性、耐久性を付与。太陽光・風雨・温度変化などに対して変化や劣化が起きにくく、メンテナンスの手間、コストを抑えて、木の外観の美しさを長期間維持する。
同社の試算によると、一般的な鉄筋コンクリート造や鉄骨造の同様な施設と比べ、構造躯体の資材製造時CO2排出量をそれぞれ15%、20%削減できるという。構造躯体に使用する木材は111.85㎥、炭素固定量は約84トン(CO2ベース)に上り、40年生のスギ約280本の炭素固定量に相当する。
同社は、「街を森にかえる」というスローガンを掲げ、再生可能な自然素材である木を活用し、地球環境・人の暮らしに貢献する「環境木化都市」の実現に向け、研究開発を進める。「国産材を積極的に活用した『上智大学四谷キャンパス15号館』は、『街を森にかえる』につながり、SDGsの達成、脱炭素社会の実現に貢献する」(同社)。SDGsを体現する都市木造の先進事例として注目を集めそうだ。
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