[ウッドワン]植林から始まるものづくり哲学 サステナブルな森林経営から生まれる脱炭素建材
脱炭素時代に求められる住宅建材
「植林から始めるものづくり」を標ぼうするウッドワン(広島県廿日市市、中本 祐昌代表取締役社長)。同社が守り続けるものづくり哲学には、脱炭素社会における建材メーカー像を追求するヒントが隠されている。
ニュージーランドで4万haの森林を経営
ウッドワンは、1990年からニュージーランドでの森林経営に乗り出している。今では総面積約4万haもの森林の経営権を取得している。
1990年当時、世界中の企業が森林資源を求め乱伐を行い、森林破壊を招いていた。このままでは世界中の森林がなくなってしまう─。当時の社長であった故中本利夫氏は、森林資源の将来を憂い、危機感を募らせたという。そこで注目したのがニュージーランドであった。
林業を重要な産業と位置付けているニュージーランドでは、昔から伐採と植林が一体化したサステナブルな森林経営が徹底されていたのだ。
加えて、北米原産の「ラジアータパイン」(同社では「ニュージーパイ ン」として商標登録)をニュージーランドで植栽すると、多雨多湿の生育条件が奏功し、30年という期間で伐採期を迎える。日本のスギが利用できるまでに50~60年かかることを考えると、その生育の速さが分かるだろう。
さらに言うと、日本の森林の多くが急峻であるのに対して、ニュージーランドの山林は平坦な場所が多く、伐採場所の近くまで運搬用の車両が入り込める。
こうしたメリットに着目し、同社では経営権を取得する形で自らニュージーランドでの森林経営に乗り出した。
現在、3カ所の森林を保有しており、それぞれの森林の近くに工場も備えている。工場で乾燥から、製材、あるいは製品まで加工し、最終的に日本に運んでいる。
乾燥の手法についても、樹種の特性を踏まえながら、反りや曲がりが発生し難い乾燥手法を確立し、より品質の高い製品づくりを実現している。
当然ながら植林と伐採のサイクルを回しながら森林経営を行っている。森林を1年生~30年生までの30区画に分類し、それぞれの樹齢の木を同じ面積ずつ育成する法正林施業を展開。30年を迎えた区画から伐採し、そこに再び植林することで、半永久的な森林サイクルの構築と安定した木材流通を実現している。
1990年に植林した苗木が30年を経過し、ちょうど伐採期になる時期を迎えている。
なお、同社が経営権を保有する森林の年間でのCO2吸収量は、75万tにも達する。これは、約205万人の呼吸量に相当するCO2を吸収したことになるという。
丁寧な育成方法で森林資源を有効活用
良質な無節材を生み出すための工夫も施している。ニュージーランドの他の森林では、6mの高さまで枝打ちを行うことが一般的である。枝打ちを行った部分は、無節の材料が採れるからだ。
対してウッドワンが経営する森林では、8mまでの枝打ちを手作業で行う。6mであれば、2mの高さのドア3枚分の材料になる。8mまで枝打ちすれば、ドア4枚分の材料が調達できる。その分だけ、効率的に材料を調達できるだけでなく、森林資源もより有効活用できるというわけだ。
商品の環境価値を見える化
炭素固定量を表示
同社では、「ニュージーパイン」を使った無垢材商品の「ピノアースシリーズ」で、フローリングや室内ドアの2022年度発行のカタログから、ニュージーランドの自社森林で育てた木材を使った内装建材商品のCO2固定化量の見える化をスタートさせた。(右下写真)
2021年10月に、林野庁から炭素貯蔵量の表示に係るガイドラインが公表されたことを受けてスタートさせた取り組みで、同社でもこのガイドラインに従ってCO2固定化量を明示している。
住宅における炭素固定化量を見える化することができれば、消費者に対する新たな訴求要素を獲得できるだけでなく、SDGsなどに取り組む企業にとっては経営面でもメリットを享受できるようになる。
非住宅の木造建築では、CO2固定化量を試算し明示することで、建物の価値を高めようという動きが増えてきている。こうした流れは、今後、住宅にも及ぶだろう。それだけに、建材のCO2固定化量を見える化することは、住宅会社の支援にもつながる。
同社ではCO2固定化量を明示する商品の幅を順次、広げていきたい考えだ。
自社工場に再エネ導入
二酸化炭素排出削減にも貢献
同社では、2015年度から本社工場内にバイオマス発電設備も導入している。燃料には同社製品の製造工場で出た端材などを利用しており、自社森林から算出した資源を余すことなく活用している。
これまでは全発電量を売電してきたが、今年4月から自社工場で使用することを決めた。(上図)
発電した電力を一旦は売電するが、その環境価値をクレジット化したものを関西電力から購入することで、間接的に自社のバイオマス発電で作り出した電力を製造工程で使用している。
これにより、同社の国内製造拠点で使用する電力全てが再生エネ由来の電力に切り替わり、年間約8000t‐CO2の二酸化炭素削減を想定する。これは、一般家庭約2940世帯分にあたり、同社が利用する電力量の約75%に相当する。
こうした取り組みを推進することで、大手ハウスメーカーなどを中心に取り組みが進みつつあるサプライチェーン排出量の削減にも貢献していこうとしている。
環境保全や脱炭素の取り組みを広く知ってもらおうと、5月より新CM「green forest story」篇をホームページ上で公開している。
木に携わる企業として、モノづくりにおいて大切にしていることや、同社最大の特徴であるニュージーランドの自社森林での法正林施業を通じた持続可能な社会の実現への同社の想いを紹介している。
いち早くサステナブルな森林経営を実践し、CO2固定化量の見える化などによって、〝脱炭素建材〟としての価値向上に取り組むウッドワン。同社の植林からはじまるものづくりの哲学は、脱炭素社会の実現に向けて、より大きな価値を生み出そうとしている。
株式会社ウッドワン
0120-813-331
https://www.woodone.co.jp/
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