2022.7.5

ナイス 国産材の取扱量が増加、さらなる取り組みを推進

サプライチェーン構築、パッケージ商品の提案など

ナイスは、国産材に関する取り組みをさらに推進していく方針だ。
サプライチェーンの構築や「国産材プレミアムパッケージ」の提案など、ウッドチェンジに貢献する事業を拡充する。


ナイスは、2022年3月期の決算を公表した。売上高は前年度比72%増の2295億1400万円、営業利益は同1275%増の102億2400万円となり、増収増益となった。

好調な業績をけん引している事業が建築資材事業で、売上高は同214%増の1811億6000万円となっている。同社によると、木材の在庫確保と安定供給につとめたことに加えて、持家の新設住宅着工戸数の増加が売上増加の主な要因だったという。こうした状況を受けて、同社の杉田理之社長は「今後も関係各社と連携、情報共有を図り、国産材の供給に注力することで、取引先への供給が滞ることがないようにつとめる」と語った。

特に同社では、国産材に関する事業が堅調に推移しており、2021年度における国産材取り扱い材積は、前年度の約112倍にあたる21万8000㎥となっている。従来から国産材活用に向けた取り組みを推し進めてきた同社だが、ウッドショックなどの影響で輸入材の調達が難しくなるなか、国産材に関する事業が建築資材事業の売上高を押し上げているようだ。

川上から川下までを一気通貫でカバー

同社では、日本全国の製材事業者用に国内外からの木材調達を行う「多産地連携システム」を構築している。国内だけでも木材市場13カ所、総合物流センター16カ所、物流倉庫16カ所、プレカット工場6カ所という規模の流通プラットフォームを有しており、こうした体制が木材の安定供給に貢献している。

また、日本各地域を代表する製材メーカーで構成される「素敵木材倶楽部」も組織している。

さらに、自社で森林も保有。現在、全国8か所で森林を所有しており、自社保有林を川上として、川下までを一気通貫でカバーする体制も構築している。

例えば「ナイス徳島の森」では、伐採した原木をグループ会社のウッドファーストが製材し、木材市場へ出荷している。同じくグループ会社のナイスプレカットが加工を行い、建築用材として建設事業者のもとへ届ける。その後、再造林や育林を欠かさず行うことで、川上から川下まで木材流通を一括管理し、木材の循環サイクルを確立している。

関連事業者とも連携しながら、国産材の川上から川下までを一気通貫で担える点こそが同社の強みになっており、さらなる森林保有も視野に入れながら、国産材のサプライチェーンをつなぐための取り組みを進めていきたい考えだ。

住宅のあらゆる部分に国産材利用を提案
木質化事業の新コンセプトも制定

新空間提案プラン、ワウッドのイメージ

構造材や断熱材、内外装材などに国産材を取り入れる家づくり、「国産材プレミアムパッケージ」の提案も行っている。

国内で製造される唯一の木質繊維断熱材「ウッドファイバー」、スギの圧密材「Gywood」、大径木高耐久赤身材「ObiRED」などナイスグループのオリジナル商品を提案し、工務店の住まいづくりにおける国産材転換をサポートしている。

木質化リノベーションしたナイス本社

創立70周年記念プロジェクトの一環として、木質化を行う空間提案「WoWooD™(ワウッド)」もスタートさせている。「WoWooD」とは、「Wow(ときめき)」+「Wood(木)」の造語。木をもっと身近なものにしていきたいという思いから、「人と木と、ときめきをもっと」というテーマを掲げている。

この提案を具現化する取り組みの一環として、本社ビルの木質化リノベーションも実施。設計と工事を乃村工藝社に依頼し、エントランスホールと2層吹き抜けロビーなどの木質化を図るとともに、テレワークとリアルワークの融合、社員間コミュニケーションの充実を目的とするコワーキングスペースの導入などを試みた。

こうした木質化リノベーションに関する事業展開も図っていきたい考えだ。

非住宅の木造建築事業をサポート
木質化に向けて足りない機能を補う

国産材利用強化に向けた取り組みを説明する杉田理之社長

非住宅の木造化に向けた事業も展開する。具体的には「ウッドビルディングネットワーク」として、「情報」、「設計」、「調達」、「生産」、「施工」など、ナイスグループが保有するあらゆる機能を生かしながら、中・大規模木造建築に取り組む建築事業者などを支援している。

グループ会社のナイスプレカット内のファーストコールセンターに「木造テクニカルセンター」を設置し、木造化の可否や躯体に関する概算費用について、無償で回答している。その際、必要に応じて同グループでラインアップしている多彩な工法・部材を物件ごとに提案し、顧客の要望に合わせた最適な構造提案なども行っている。

その後、事業が具体化した際には、設計契約を経て構造図や構造設計を作成し、建築確認の申請・取得までを全面的に支える。

こうしたサポートサービスを強化していくことで、非住宅の木造化にも貢献していこうとしている。

杉田社長は、「サステナブルな社会の実現に向けて、木材によるCO2の吸収、固定は重要なテーマである」としており、官民挙げて機運が高まっているウッドチェンジの潮流に積極的に参加していきたい考えだ。