2022.6.22

大建工業、音響事業を25年までに3割増 100億円目指す

ハード・ソフトの提案強化、非住宅分野にも注力

大建工業は、音響事業40周年を迎えた。ハード・ソフトの両面で空間の防音、音響対策ができる強みを生かし、住宅市場および公共、高齢者施設市場を開拓。2025年までに売上高100億円を目指す。


同社は1958年にインシュレーションボード、64年にロックウール吸音板「ダイロートン」を開発し、82年の騒音問題の社会現象化に合わせて、「開発部 防音課」を新設した。そして、翌年には「ダイケン防音システム」を構築し東京・大阪・岡山に「サウンドセンター」を設置した。このサウンドセンターは業界で唯一の施設で、2022年現在、月1000件の問い合わせがあり、350件の個別見積もり提案をしている。専任者による個別相談などのバックアップ体制が同社の強みだ。他にも、音を切り口に事業部で連携し、空間全体で音に対する課題に対応してきた。

こうした取り組みの結果、音響事業全体の昨年度の売上高は75億円を記録し、20年前の2.1倍に増加。特に、コロナ禍で在宅時間が増えたことから、ここ数年の伸びが大きい。例えば、在宅ワークのしやすさ、住まいに楽しさを求めるなど、音に関するニーズが高まったことで、防音ドア事業は同3.8倍に増加した。これを踏まえて、同社は2025年度までに音響事業全体で売上高100億円を目指す方針を掲げた。

簡易防音室で手軽に最適な音環境を実現
プロ向けの防音室提案も

隙間の多い吊戸の隙間をふさぎ、音漏れに配慮した新商品の「音配慮吊戸・片引」 

売上高100億円の達成に向け、同社は住宅・非住宅分野それぞれで新たな提案を開始した。

住宅分野向けには「サウンドマルチルーム」を提案する。用途に合わせて気軽に使える音環境に配慮した簡易防音室で、在宅ワークの増加から発生した、音環境が気になるというニーズに対応。従来の部屋では音漏れや反響などの問題が発生していたが、同社の音響対策関連部材などを組み合わせ、テレワークに最適な部屋に仕上げる。また、1ランク上の防音室として、「スーパープレミアム防音」の提案も今回初めて行う。60デシベルの防音性能を誇り、ドラムなど楽器演奏をするプロ・ヘビーユーザーの利用を想定している。

新商品「サウンドトロン」は、部屋に置くだけで音響の調整が可能

さらに、6月に関連の新商品を相次ぎ発売する。「サウンドトロン」は、部屋の四隅・壁際に設置することで室内の音響調整が可能な音響調整部材。低い音から高い音までバランスよく吸音する。従来は布クロスなど、吸音材の設置が必須だったが、「サウンドトロン」を部屋の四隅に置くことで部屋のデザインに制限がなくなり、性能と意匠性を両立する。グラスウールを使用したポール型の自立タイプで工事が不要。8畳までなら4本、9~20畳までなら6本の設置を推奨する。価格は1本4万2100円。

一方で、非住宅向けには施設別提案書による提案を強化する。これまでは、会議室、補聴器試着室、動物病院の診察室、カラオケボックス、カウンセリングルーム仕様の5種類の提案を行っていたが、クリニック(診察室)仕様を新たに追加し、施設ごとの音のメニュー化による提案を開始。同社サウンドセンターがサポートする。

施設向けにも新商品
音漏れ防止の吊り戸などを開発

野村孝伸 常務執行役員と「サウンドトロン」

室内ドア「音配慮吊戸・片引」など、公共・商業施設用向けにも新商品を発売する。従来の吊戸は扉を閉めたときに隙間が発生し、それが音漏れの原因になっていた。同商品では、上下部に備えたシャッター装置と、戸先・戸尻を覆う気密パッキンによって、音漏れへの配慮と開け閉めのしやすさを両立。一般的な吊戸と比べて音漏れを約50%軽減できる。プライバシー配慮が必要な病院の診察室などへの導入を見込む。価格はインセットタイプが49万4700円、アウトセットタイプが51万9700円。

他にも、非住宅向けの音響商品として、防音ドア「防音ドアWタイプ[G35]片開き」や「吸音ウールF」などを開発した。

野村孝伸 常務執行役員 国内事業統括 国内新規事業担当は、「コロナ禍で防音相談が増えた。当面の間は、この防音需要も続くと考えている。今年度の売上高75億円のうち9割は住宅向け商品が占めていたが、2025年度までに売上高100億円の目標を達成するには、非住宅分野に注力することが不可欠だ。そのため、今後も商品の拡充に努めていく」と述べた。