天然乾燥と人工乾燥の垣根をなくす

続・問われる、乾燥剤の供給力

天然乾燥材は蚊帳の外

地域における乾燥材供給力をいかに高めるか。具体的な方策としては、乾燥施設の共同利用をしやすくすることと天然乾燥材に対する評価を適正化することが必要だと考えている。

最初に天然乾燥材が現行のJAS規格や建築基準でどう位置付けられているのかを確認しておくと、結論から言えば特に構造材に関しては、乾燥材としてまともな評価を得ていないのが実情である。

前回の本欄は、あえて人工乾燥(KD)に特化した論考としたが、言うまでもなく天然乾燥も木材の品質を安定させ、高めるための有効な手立てであり、特に見た目や質感など木の良さをより生かそうとする場合は、人工乾燥ではなく天然乾燥が採用されるケースが多い。

ところが、製材JASでは天然乾燥材の含水率基準が「30%以下」という繊維飽和点レベルの低い水準でしか設定されていない(別表参照)。含水率30%の繊維飽和点とは、自由水が抜けた時点の状態であり、ここからさらに乾燥が進むに従って結合水が抜け、収縮が起きる。

つまり、これから狂うことになるわけだから、含水率が30%であることを示しても実用的とは言えない。事実、天然乾燥材のJAS認定を取得したある製材工場では「含水率30%」のJAS製材品を注文されたことは一度もなかったそうだ。

このような規格になっているから当然と言えば当然だが、構造用製材JASの機械等級区分製材は含水率20%以下のKD材しか認められていないし、建築基準でも燃えしろ設計は集成材もしくは含水率20%以下のKD材(いずれもJAS材であることが必要)でなければできないことになっている。このふたつに関して天然乾燥材はまったくの蚊帳の外なのである。

出荷時含水率のみを評価する仕組みにしては

現状ではJAS製材品の流通量はごくわずかなので、天然乾燥材に関するこのような問題はあまり意識されていない。また、断面の大きな柱や梁桁を天然乾燥で含水率20%以下にまで乾かすのは簡単ではなく、現行の規定でも実害はないとする見方もある。


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