変わる?変わらない?/先端技術をまとう日本の住まい

変わる?変わらない?

江戸の頃、年末、年始に“福寿草売り”が「福寿草やぁ、福寿草」とゆったりした声で叫びながら町を流していたという。正月花とも呼ばれる福寿草だが、黄色の小さな可愛いい花を愛でる江戸庶民の心優しい姿が、微笑ましい。「小さくても昇殿すなり福寿草」(一茶)の句も。

2年越しのコロナ禍になろうとは思わなかった。新たな変異株オミクロンなるものの存在は不気味だが、親戚、家族が集まっての正月を迎えることができた人も今年は多かったのでは。まちも家々に門松が並ぶ風景はすがすがしい。一晩寝ただけでまちも人の気持ちもガラリと変わる。“正月”という区切りをつけた先人の知恵に改めて感服する。

本当に不思議だ。ITだ、AIだ、そしてDXだと先端技術が次々と押し寄せるなか、古来からの伝統や風俗習慣が日本にはまだまだ残っている。近代化、合理化、効率化などの言葉とともに普通なら切り捨てられそうなものが、生活のなかにどっしりと根づいているということなのだろう。

住宅もまたしかりだ。戦後80年近く、住宅はその姿、形を生活の利便性や快適性の名のもとに確実に変えてきた。価値観や美意識の変化も住宅に大きな影響を及ぼした。行政のさまざまな法規、制度も、住宅の変化を後押しした。そして今、新型コロナのパンデミックは社会の仕組みまでを大きく変えようとしている。そこでの住宅はテレワークにみられるように“働き方”を住まいの中に持ち込むというニューノーマルを定着させた。さらに地球温暖化を世界が真に脅威と認識するなかでカーボンニュートラルは日本の公約となり、住宅づくりも省エネの大合唱だ。唸ったのは本年度補正予算で創設された「こどもみらい住宅支援制度」での適合要件の柱も省エネだったことだ。省エネによる快適な居住性能の確保で子育てしやすい居住環境を、という狙いだろうが、こどもみらい住宅という大きな看板も中味は省エネとは。まあ、住宅企業にとっては同制度の補助金は魅力で、ZEHなどの普及も加速しそうだ。設備、部品など省エネ製品の開発も進むだろう。脱炭素社会というインパクトのもと住宅もまた新たな変化をたどるのだと思う。


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