“実質0円”の高齢者向けリノベを推進 暖かい住まいで健康寿命を延長
(一社)日本住宅リフォーム産業協会 理事 性能アカデミー委員会 委員長 今井 猛 氏
(一社)日本住宅リフォーム産業協会(JERCO)では、約3年前から、高齢者の住まいの性能向上リノベーションを“実質0円”で実現する「高齢者向け性能向上リノベーション(つながリノベ)」事業の取り組みを強化している。その狙い、概要を性能アカデミー委員会の今井猛委員長(喜多ハウジング 常務取締役)に聞いた。
──「高齢者向け性能向上リノベーション(つながリノベ)」事業の取り組みを強化している背景、狙いについて教えてください。
JERCO会員である中小規模のリフォーム事業者にとって、厳しい時代がきているという危機感が背景にあります。コロナ禍の影響もあり、売上げが減少する事業者は少なくありません。JERCO会員のリフォーム事業者に、新しいビジネスモデルをつくってもらいたいという想いから、「高齢者向け性能向上リノベーション(つながリノベ)」事業の取り組みを強化しています。
リフォームの専門紙がまとめたデータによると、大手ハウスメーカー系を中心とするリフォーム会社、上位10社のリフォーム売上は、2011年は6163億円でしたが、2019年には8182億円にまで増加しています。その10年の間、リフォーム市場規模は横ばいで推移しており、大手事業者のシェアが増えているのが現状です。年商2億円のリフォーム事業者1000社がなくなっていると見ることもできます。
日本の人口構成を見ると、2025年以降、団塊ジュニア世代が50歳代になり、住んでいる住宅が築25年、築30年のリフォーム適齢期を迎えていきます。当然、大手ハウスメーカー系のリフォーム会社は、このボリュームゾーンへの提案を強化して、市場はレッドオーシャン化していくことが予想されます。
であるならば、我々、JERCO会員事業者は、70歳〜75歳の団塊世代をターゲットにしていくべきだと私は考えます。これまで高齢者のリフォーム市場は有望ではないと言われてきましたが、一方で「人生100年時代」ということが盛んに言われるようになってきています。まだまだビジネスチャンスはあるはずです。
リフォームの新しいビジネスモデルをつくる上では、世帯構成にも注目する必要があります。世帯人数別世帯数の推移を見ると、1人世帯、2人世帯が圧倒的に多く、近年、伸長し続けています。続く3人世帯については横ばいで推移し、4人世帯は下降してきているという状況です。
さらに、どういう家族構成かということが重要です。最大のボリュームゾーンの2人世帯が、夫婦2人だけの暮らしなのかというと、そうでもなくなってきています。実は親子だったり、高齢の兄弟であったりするケースが増えています。昔の母子家庭は、20代の母と幼少の子供という構成が大半を占めていましたが、今の母子家庭は、70代、80代の母と、40代、50代の子という構成に変わってきています。いわゆる「8050問題」という言葉もよく聞かれるようになってきています。
「今すぐ客」か「まだ先客」をターゲットにするのかの判断も重要です。戸建住宅のリフォームをいつ実施したいか、JERCOがエンドユーザーに聞いたアンケート調査によると、「1年以内」と答えた人は全体の1割程度でした。しかし、ほとんどのリフォーム事業者が狙っているのは、この1年以内にリフォームを考えている「今すぐ客」ではないでしょうか。この方たちをターゲットにして、さらに、団塊ジュニア世代のボリュームゾーンを狙えば、当然、激戦区になり、薄利多売を強いられます。
対して、「時期は分からないがいずれしたい」、「リフォームをしたいとは思わない」と回答した方はそれぞれ約4割に上りました。この「まだ先客」が、我々が狙っていくべきブルーオーシャン市場であり、70歳〜75歳の団塊世代をターゲットにしていくことで、ビジネスチャンスを拡大していけると考えています。
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──ブルーオーシャン市場をつくっていくための答えの一つが「高齢者向け性能向上リノベーション(つながリノベ)」であるわけですね。
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