暮らしの質を上げ支える住宅部品

インターホンや宅配ボックスなど時代が求めた住宅設備

近年、多くの住宅部品は、新築住宅着工に沿って出荷される傾向にあることを確認してきたが、その一方で、現代においても技術進化が続き出荷台数を年々大きく変えている住宅部品もある。そんな例を、温水洗浄便座やドアロック等ですでに見てきたが、これからの暮らしに関わり、それを大きく変えていく可能性が強い住宅部品のいくつかを見ておきたい。多くの住宅部品は、日々メーカーの工夫によって技術開発や改良を行っているが、それは其々のおかれた状況によって異なっており一概に論じることはできない。社会状況に柔軟に対応してきた住宅部品が将来に向け、どのように姿を変え発展して行くのか興味はつきない。

連携を本格化させるインターホン

住生活情報を一括管理し、防犯、安全、見守り、消費エネルギー管理、コミュニケーション、室内外機器の操作、そしてTVメディア鑑賞等を家族が集まる空間でできるとする考えは、情報化が進展した時代毎に繰り返し提案されてきたことである。しかし、基本的には何でも出来そうだという考えは、案外その後発展しないもので、今までの一般の暮らしに幅広く取り入れられ普及することはなかった。
その一方で、インターホンは生活に根を下ろしてきた住宅部品である。当初は、単純な来客者との会話と確認用であった。その後、テレビモニター付きのものが普及した。情報化の進展で、センサーカメラとの連動や監視・録画、火災用警報器との連動、防犯センサーとの連動等守備範囲が広がってきている。

図1 住宅用インターホンの出荷台数推移と住宅着工数に対する割合※1

今やテレビ付きインターホンが、住宅に標準設置され、インターホン全体の出荷台数を更に押し上げている。図1に示すように、近年は住宅着工数の3倍の出荷台数となり、住宅改修用、取り換え用として多くが用いられている。

集合住宅では、オートロック機能と連動して、来訪者と会話し確認した上でエントランスの遠隔開錠ができるので、新築マンションでは必須設備である。多くの機器が、子機を有し室内通話や家中どこでも来訪者を確認できる。親機操作部はタッチ機能となり、携帯や電話機などと接続もできる。生活者が取り換え可能なワイヤレス、乾電池式などもあり、賃貸住居等の需要も取り込んできた。

インターホン工業会が、ビジョンで「安全」「安心」「つながり」の社会実現に貢献することをコンセプトとしているように、防犯、通話、見守り、他の機器との連携で新しい価値提供等、更に広がりが大いに期待される住宅部品である。

出荷が大幅に増えてきた宅配ボックス

暮らしの中で大きな変化を見せているのが、宅配等の配送サービスである。高齢化や共働き世帯の増加、インターネット通販市場の拡大等に加えコロナ禍で食の配送等のすそ野がさらに広がっているが、その一方で配送業に関わる働き手の不足、再配達による労働効率の悪化とCO2増加、配達遅延トラブル等が社会問題となっている。宅配便事業は経営改革を伴う働き方の再構築が必須となり、配送サービス、システム全体としての見直しを迫られている。こうしたこともあって、2017年以降宅配ボックス需要が急拡大してきた。

宅配ボックスは1990年代から集合住宅の一部で採用されていたが、長い間は年間5万台程度の市場で、その機能価値が十分に認識されているとは言えなかった。その間、宅配便は長足な進化を遂げ、サービスの質を充実させ着実に取り扱い個数を押し上げ、便利な暮らしの実現に貢献してきた。そこにアマゾン等によるネット通販が進展し、宅配便取り扱い数を更に押し上げ、2017年度で42億個を超えている※2。このため、技術の変革が必要となったのである。

図2 宅配ボックスの出荷台数推移及び住宅着工数に対する割合※4

宅配ボックスは、図2に示すように2017年度から集合住宅の出荷台数が2倍以上と著しく増加し、戸建て住宅でも5万台近く出荷される等急激な立ち上がりを見せており、今後の市場展開から目が離せない。

図3 郵便受け箱の出荷台数推移及び新築共同住宅戸数との割合※5

一方、郵便物の配達に関わり集合住宅に用いられている郵便受け箱の出荷傾向も確認しておこう、郵便受け箱は、すでに集合住宅の定番部品となっており、新築共同住宅戸数と長期にわたり強い関係を維持してきた。また、住宅改修に伴う対応ともある程度の関係を維持している※3。図3に示すように、出荷台数から見ると2007年度以降、新築共同住宅戸数に加え20万台強の出荷状況にあり、新築共同住宅戸数に対する割合は、2007年度以降増加傾向にある。

多様な要求に応える空気清浄機

空気清浄機の出荷台数の推移は、いくつもの波があったように思われる。1980年代から家庭で使用され始め、90年代後半には100万台に達した。当時は、省エネ化から住宅の気密断熱化が進み始めたこと、スギやヒノキの花粉飛散量が増えたことに加えて住宅建材や家具からのホルムアルデヒド等の化学物質問題がクローズアップされ、健康維持のため良好な空気質への関心が高まったことによる。更に2000年代始めに出荷台数は150万台に達する。少子高齢化が進み、犬や猫を室内で飼育するペットブームに伴い、愛玩動物の匂い対策で空気清浄機に関心が高まり、またメーカーから加湿機能付きやイオン機能搭載の商品が登場するなど話題を生み販売が伸びた。更に2010年代は、省エネ化の促進で気密断熱住宅が増え、一方でPM2.5や黄砂飛来の問題、新型インフルエンザ流行等があり、加湿機能を備えた高価な空気清浄機が普及した。そして、コロナ禍により現在は再び強い関心が寄せられており販売数を伸ばしているとみられている。

図4 空気清浄機の出荷台数推移と住宅着工数、および普及率等との関係※8

図4には、近年の内閣府消費動向調査の普及率、等級4の評価を受けた近年の新築着工割合等を示し、空気清浄機の出荷傾向を確認した※6。住宅の気密化、室内空気質への関心、花粉対策、ペットとの関係等から、今後も室内空気質と健康への関心は高まり、さらに普及していくものと考えている。

図5 家庭用浄水器の出荷台数推移と住宅着工数等との割合※9

一方、家庭用浄水器も着実に設置されてきた。日本の水道は質が高いといわれているが、それでもおいしい水や健康志向の高まりで浄水器市場は拡大している。図5に示すようにキッチン総数との比較割合でもわかるように、多くの住宅に一台は設置されるのが当たり前の時代が近づいているようである※7。

これからのエネルギー消費量削減が期待されるLED照明

文明の灯り、照明器具は技術革新によりLEDの時代に入った。2012年頃を境にLEDが主役の時代を迎えたのは、その性能の高さ、価値が広く認められたこと、価格低下、商品展開等による。図6に示すように、照明器具の主役交代は急激に進行しているが多くの住宅ストックにおいては、白熱灯や蛍光灯がまだ多く使用されており、住宅用照明エネルギー量の削減効果はまだ見えてこない。

図6 照明器具の出荷台数推移と住宅着工数との割合※14

家庭用エネルギー消費量に占める照明・家電製品等は、2000年代以降給湯エネルギー消費量に代わり最も大きな割合となった。現在でも33%以上となっている。給湯エネルギー消費量などが高効率機器の導入などで2000年度以降に削減に転じているのに比べ、照明・家電製品等は、冷蔵庫やエアコンの省エネ化が進行しても、その需要拡大等もあって2010年以降になってようやく減少に転じた。資源エネルギー庁によると、2009年度の家庭部門のエネルギー消費量34.9MJ/年のうち、照明器具の占める割合は6.4%で電気冷蔵庫の6.8%に匹敵するくらい多いのが現状である。東京都環境局の2014年度での都における家庭部門の電気使用量調査では、照明器具は18.4%を占め、電気冷蔵庫の17.5%、エアコンの12.8%よりも多い実態にある。白熱電球から蛍光灯に代わり、更にLEDに代わって大幅にエネルギーが削減して来ている感覚があるが、まだ十分に喜べる段階にはないようだ。更に、図6に示すように各住戸に用いられる灯数は一貫して増加傾向にあるように思われる。照明器具はかなりの頻度で交換されていると考えられるので一概に論じることはできないが、一灯あたりではエネルギーが削減できても便利になったことで、長い時間使用すればその効果は減じられてしまうことを考慮しなければならないだろう。使用しない照明はこまめな消灯を行うべきである。家庭用エネルギーにおける照明器具の動向は、しばらくは目が離せない状況にある。

図7 配線器具の出荷台数推移及び住宅着工数との割合※15

配線器具についての出荷傾向も確認しておこう。コンセント、プラグ、タップ、点滅器、住宅用分電盤等の配線器具は、住宅着工数に沿って出荷される傾向にあると推察されているが、年度による出荷台数変化が激しい実態にあり、短期間のデータでは関係性を見るのは難しいようだ。しかし、長期間のデータでは強い関係を維持している。近年は住宅リフォーム市場との関係もあり、必ずしも新築着工数に沿っているわけではない。個々の住宅における使用個数もほぼ安定して来ているように思われる。

安全、安心そして未来へのつながり

今回確認した住宅部品は、現在の、そして近い将来にわたって健康で、安全、安心な暮らしを支えるのに重要な価値を持つものであるが、こうした住宅部品が幅広く使われるようになると、更に暮らしの質を高めていく可能性を持っている。インターホンで確認したように、現在は様々なシステムがつながることで新しい価値を提供することができる。つながりが深まれば、人々の行動、暮らしに変化をもたらす。そして、そうした変化を積み上げることで、更に新しい価値を提供できる。LED照明も空気清浄機も宅配ボックスもインターネット等を通じ、あるいは家庭のシステムとつながることで、新たな価値を生み出していく。

こうした未来を予感させる住宅部品である。


※1 2000年以前は、経済産業省機械統計数値を用いたが、その後(一社)インターホン工業会統計資料を用いて(一社)リビングアメニティ協会会員による推定値。テレビ付きインターホンの台数は、戸建住宅のカメラ部、集合住宅用モニター部の計。

※2 国土交通省による調査で、宅配便取扱個数は1985年度4.9億個が2017年度には42.5億個に一貫して右肩上がりで増加している。

※3 郵便受け箱と共同住宅戸数との相関係数による関係は、新築着工、リフォーム市場規模でそれぞれ、1993-2019間データで0.8605、0.5768であり、2008-2019間データで0.7260、0.5855である。

※4 宅配ボックスの出荷台数は、(一社)リビングアメニティ協会会員によるデータを用いた。

※5 郵便受け箱の出荷台数は、(一社)リビングアメニティ協会会員によるデータを用いた。

※6 内閣府「消費動向調査」における主要耐久消費財の普及率の推移(二人以上の一般世帯)で示す空気清浄機のデータを用いた。また、(一社)住宅性能評価・表示協会で公開している「建設住宅性能評価書」データの断熱等性能等級のうち断熱気密性能が極めて良い等級4の戸建、集合住宅の合計戸数と、その年度の住宅着工数との割合を算出して示した。その割合は一割程度に過ぎないが、断熱気密性の良い住宅で空気清浄機が用いられる傾向にあると予想して示した。

※7 (一社)日本ミネラルウォーター協会の統計によると、ミネラルウォーターの国内生産及び輸入数量は、1989年117279KLで、2019年には4000729KLと34倍に増加している。家庭用浄水器の普及とは直接の関係は見出せないが、おいしい水、健康志向の流れは続いていると考えている。キッチン総数は、システムキッチンとセクショナルキッチンの合わせた数である。

※8 空気清浄機の出荷台数は、(一社)日本電気工業会資料による。

※9 家庭用浄水器の出荷台数は、(一社)浄水器協会の資料による。

※10 照明技術は、時代とともに進化したが、LEDは革新的進化である。効率比較で、ロウソクは1lm/W(ルーメン/ワット)で、白熱電球が10~_______15lm/W、蛍光灯50~100lm/W、LEDは100~190lm/Wで技術開発により300lm/W程度可能との期待がされる。寿命もロウソク1時間、白熱電球1000時間、蛍光灯10000時間でLEDは40000時間程度とされる。低電力消費、長寿命で固体照明のため、軽薄短小で堅固である。

※11 平成22年度省エネルギー政策分析調査事業「家庭におけるエネルギー消費実態について」資源エネルギー庁による。

※12 東京都環境局「家庭におけるエネルギー使用状況」2018年2月9日による。

※13 配線器具・接続具、配線器具その他の相関係数は、其々1965-2019間データで、0.8392、0.7834、2000-2019間データで0.8199、0.6974であるが、2008-2019間データでは関係性が見られない。

※14 照明器具の出荷台数は、経済産業省生産動態統計による。なお、2013年度以降、生産動態統計の製品区分が見直されたため数値は連続していない。2011年から2015年にかけての統計は、(一社)日本照明工業会の自主統計があり、その出荷統計数値において、スムーズにLEDに移行していることが確認でき、参照してほしい。

※15 配線器具の出荷台数は、経済産業省生産動態統計による。なお、配線器具・接続器はタップ、プラグ、コンセントなど。配線器具その他には点滅器、住宅用分電盤、開閉器等がある。

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