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適切換気と温熱環境を整備してこそ健康で満足な空間になる

健康と快適を模索する空間、 浴室・トイレ・洗面所(その3)

多くの住宅部品は、住宅着工数や住宅リフォーム市場規模とかなり強い関係が見られることを説明してきたが、近年その傾向が強まって来ているのは、住生活の中で住宅部品の占める役割が定着し、生活の基本機能として認識されているからである。このことが居住者には十分に意識されないにせよ現代生活では高度な生活機能が求められ、生活を快適で便利にすることに対し住宅部品の多くは貢献している。浴室・トイレ・洗面所のいわゆるサニタリー空間の住宅部品は、健康で快適な生活を送るために欠くことのできないものである。浴槽も便器も洗面化粧台も戦後数十年の積み重ねがあって、日本人の生活に合うように機能充実が図られ、生活の質を高めてきたのである。

それでは、こうしたサニタリー空間に今後、何が求められるのであろうか。

水回りの住宅部品
基本機能はそろったものの

現在では、個々の住宅部品の機能はかなり居住者が満足できる水準にある。例えば、温水洗浄便座は、日本人の生活に欠かせなくなり、多種多様な機器が販売されているが、それが有する基本機能に大きな違いはない。性能面で多少の差がある安価なものでも多くの人が使用することに問題ないレベルの性能を発揮できる。システムバスやシステムキッチン、便器においても常に機能向上のための努力がされ、その水準は日々上がっていくが、基本となる機能は大きくは異ならない。

しかし、その一方で現代の浴室・トイレ・洗面所等が、居住者にとって十分に満足できる空間になっているかというと、必ずしもそうではないように思われる。各種アンケート調査を通じ、あるいは事業者が日常居住者と接して、生活者実感としてとらえると、それは住宅部品の基本機能からは離れた領域においての課題ではないかと考えるのである。

その一つの例が、水回りに特有ともいえる湿気、カビ、結露問題である。洗面・洗髪そして入浴等を通じて湿気が発生しやすく、じめじめとしたイメージが付きまといやすい空間である。そこで、入浴にともない換気を行う。洗髪したら窓を開ける。特に、シャワー使用中には換気を行って湿気を素早く排除する等居住者は神経を使う。しかし、それでも結露やカビが生じやすく、あいかわらずこの問題が多く発生しているのが現状である。

そのため、居住者は、水回りの窓を常時開け、空間の隅や収納ボックスに除湿剤を置き、結露しやすい部分の拭き掃除を徹底する等こまめな努力をしている。カビ防止剤入りの洗剤で浴室まわりをきれいにすることも行わざるを得ない※1。

換気扇の出荷台数の現状から

図1 公庫融資を使用して建設された戸建て住宅の機械換気設備の有無

これらの解決を考える前に、換気扇について整理しておく。本稿に先んじて第7回にキッチン空間における換気システムについて触れたが、住宅の換気については近年機械換気の役割が大きい。住宅金融公庫の公庫融資を使用して建設された平成3年度の戸建て住宅調査によると、機械換気設備はキッチンでほぼ100%、浴室で90%、トイレで61%、居間で40%であった(図1参照)。シックハウス対策が講じられた現在では、平成30年度の建設住宅性能評価書のデータで居室機械換気は81%に達し、トイレ、浴室、キッチンはほぼ100%である(図2参照)。共同住宅では、居室でもほぼ100%となっている※2。図3の換気扇の出荷台数推移から見ると、1990年代から新築着工数の約7倍となっているが、その内訳データが示されていないので詳細な分析はできないものの、住宅着工数とは極めて強い関係にある。

図2 建設住宅性能評価書の戸建て住宅浴室の換気対策
図3 換気扇の出荷台数推移と住宅着工数との関係

また、近年は住宅リフォーム市場規模との間にも強い関係がある※3。住宅の高気密化高断熱化が進み、新築住宅及び住宅の改修において、機械換気設備の役割は大きくなっている。換気扇もまた、長期使用される傾向にあり、キッチンのレンジフード換気扇等を除くと清掃や点検も十分にはされないようであるが、換気扇の取り換えや改修について、住宅リフォーム市場規模との関係を整理してみた。図4に示すように30年を超えた期間がずれて関係が強くなる。直近10年間のデータで比較すると22年から30数年にわたる期間ずれでかなり強い関係が確認できた※4。

図4 換気扇の出荷台数推移と住宅リフォーム市場規模の年度期間ずれによる相関係数変化

開口部との関係から考える

平成30年度の建設住宅性能評価書データによると、共同住宅において機械換気により室内空気中の汚染物質及び湿気を屋外に除去するための対策は、ほぼ100%であるが、戸建て住宅では、機械換気設備の他に換気のできる窓を設けて、換気対策はその双方とするとの回答が多い。特に、トイレ、浴室においては、ほとんどが換気扇と換気のできる窓と答えている。別のアンケート調査や換気扇メーカーヒアリング等でも換気扇の他に窓を開ける場合が多くあるとの指摘がされている。

浴室換気は、様々な使用方法が確認されている。換気扇等機械換気でいえば24時間換気扇を運転する、入浴後一定時間換気扇を運転する、入浴前から換気扇を運転して入浴後しばらくしたら停止する、入浴中のみ換気扇を運転する、換気扇は回さない等である。窓換気も換気扇運転と同時に行う、季節によって窓開閉を変える、窓は少しだけ常時開けておく、窓を開けるだけで換気扇は使わない等居住者によって実に様々であった。

このように、戸建て住宅では、浴室及びトイレには換気ができる窓と換気扇があるが、使用方法はばらばらで、居住者の感覚や判断で行われているのが実態である。換気扇メーカーは、各住戸で事情が異なるとして、特にアドバイスは行っていない。また、建設事業者もアドバイスをしていない。

浴室もトイレも狭い空間で、換気窓の近くに換気扇が設置される場合が多い。窓を開けて換気扇を運転すると、窓から外気が流入して換気扇から直ぐに出ていくショートサーキットとなり浴室やトイレ等の効果的な換気を阻害してしまう。むしろ窓は閉め換気扇を運転しないと浴室やトイレのよどんだ湿気を排出できない。戸建て住宅の換気計画は、居室等から外気を導入して、浴室やトイレ等の換気扇運転で屋内空気を排出する第三種換気を取る場合が多いが、浴室やトイレの窓が開いていては、居室内の空気を排出する効果が減じられてしまう。最新の戸建て住宅の換気対策として換気扇と換気できる窓の双方を利用するとの回答に対しては、四季ごとにもっと適切、効果的な換気方法についてアドバイスできなければならないであろう。結露やカビ対策として、十分に効果がある換気を行っているか、もっと既存住宅で実態把握を行い、性能検証をして、適切な方法について伝える努力が必要である。中でも最も困難なのは、気密性断熱性が低い住宅である。換気できる窓を閉めていても、第三種換気を行った場合に、住宅のどこから外気が流入しているかについて、判断が難しい。浴室やトイレの換気扇を運転しても、案外その近傍から外気が流入するだけかもしれない。こうした場合には、気密性を高めることが効果的な換気にとって重要で、各住宅の気密性(断熱性)を判断して、各部屋別に窓を開ける、換気扇を使う等の効果的な換気対策をして空気がよどむ空間や場所がある場合にはサーキュレーター等で撹はんすること等も考えなければならないであろう※5。

水回り空間の温熱環境を
整えるために

浴室・トイレ・洗面所回りについて、今後生活満足を高めるために、すでに指摘してきたことであるが、良好な温熱環境を有する空間の実現は特に重要である。古い既存住宅を中心に多くの日本の住宅は、気密性、断熱性が十分でなく、しかも暖冷房設計はほとんどが居住者任せになっている。家族がそろう居室においても暖房機運転を抑えてしまうような場合も多い。特に高齢者はエアコンすら使用しないで熱中症にかかり、冬季には浴室や脱衣室の暖房をしないで入浴することで健康を害する。

図5 スマートウェルネス住宅等推進調査事業の報告 居間、寝室、脱衣所の冬季室温分布
図6 スマートウェルネス住宅等推進調査事業の報告断熱住宅普及率に対する冬季死亡増加率の関係

国土交通省スマートウェルネス住宅等推進調査事業で、断熱改修等による居住者の健康への影響調査結果が公開されているが、この中で図5に示すように居間・寝室・脱衣所の冬季室温分布が報告されている。多くのアンケート結果でも、冬季の水回りの温熱環境が劣悪であることは報告されてきたが、居間においても18℃に満たない住宅が6割に達していることが分かる。こうした実態とともに健康にとって極めて大きな影響があることも分かってきている。水回りの温熱環境を整えることが満足度を上げることに繋がるが、そもそも長時間居る居室や寝室そのものの室温が低いことが問題であり、その根本原因は、断熱気密性が不十分な住宅にある。断熱気密性が悪いので、暖房機の性能が発揮できず適切な運転ができない。図6に示されるように温暖な地域で断熱気密性能の低い地域が多く、冬季の死亡増加率が高くなっている。WHOは、2018年11月に冬季室温を18℃以上とするように強い勧告を出している。水回りの温熱環境を整える前に、まず居室環境を十分に配慮する必要がある。

さて、浴室・トイレ・洗面所空間においては、暖房器具すら設置されていない場合が多く、設置する場所がない、短時間の使用であり、温めることがもったいないという意識が強い、適切な暖房機による効果的な温熱環境実現の性能データが示されていない等、解決に向けての課題は多い。すでに記載したように、湿気やカビ対策として冬季にも常時窓を開けておく居住者も多く、適正な換気方法が周知されていない実態がある。冬季の浴室事故に関わるアンケート調査や警鐘は、ここのところ数多く提示されているが、実行するためには、具体的な理解が得られ、効果が得られる方法による努力が必要であろう※6。

具体策を持って水回り改修の促進

図7 家庭内における浴槽溺死溺水事故の増加と高齢者年齢別事故割合について

図7に厚生労働省人口動態統計における「家庭内における主な不慮の事故の種類別死亡数の推移から浴槽溺死等高齢者の人口区分別に事故に遭う割合をまとめた。これによると80歳以上高齢者の事故件数がその人口増加に沿って増えており、およそ3500人に一人が事故に遭う計算となる。一方65歳以上で80歳未満の高齢者の場合には1万2500人に一人が事故に遭う計算となる。今後80歳以上の高齢者は益々増えることが予想されるため、統計数字上溺死者数が増加する恐れがある。
高齢者が一人で暮らす場合も多くなっており、浴室事故対策はあらゆる具体的手段を考え実行していかねばならない。

先に紹介した(一財)ベターリビングで実施した「住宅における良好な温熱環境に関する調査研究」においては、報告書をホームページで公開している。新築及び既存住宅改修について、かなり具体的な対策を提案しているので目を通してほしい。

例えば、水回り空間のプランニングとして、玄関回りの外気侵入が直接水回り空間の温熱環境に影響を及ぼさないように、玄関回りとは区切ることやリビング、キッチンと一体化して内部化を図ること、寝室との一体化を考えることなどを提案している。水回りの床面の寒さ防止についても触れている。更に、「住宅改修における水回りの設計に資する温熱環境暫定水準案」を示し、浴室、脱衣室、トイレに対し確保してほしい水準について解説付きで説明している。入浴時に最低でも18℃(作用温度で)を確保してほしいことや入浴の湯温を41℃以下、湯に浸かる時間は10分までを目安とする事等、具体的に踏み込んでいる。こうした目標を実現するためには、例えば、入浴時の湯温制御が可能な風呂給湯機とすること、浴室内の温度を常に確認できるようにすること、断熱気密性に優れたシステムバス(浴室ユニット)とすること等を説明している。暫定水準案を基に、より実現しやすい具体的対策について更に研究を進めている。

健康で快適な住生活のため
一段と高い努力を

浴室・トイレ・洗面所に関わる住宅部品はいずれも長期に亘り使用される傾向にあり、水回りの住宅改修は多く計画され実施されているが、その改修は、単に新しい水回り住宅部品の設置に留まっている。長期間使用した住宅部品が陳腐化し、高い機能の住宅部品に交換することで、より快適な生活を送ることができる。また、省エネにも寄与できる。しかし、換気対策や温熱環境対策等、住宅の断熱気密化を含めた抜本的対策に踏み込む改修例はまだ少ない。健康で快適な住生活のための満足度を上げ、浴室等の事故を未然に防ぐための対策をもっと深く考え実行に移してほしい。住宅部品の機能充実を図ることも重要であるが、水回り空間そのものの在り方について、もう一段高いレベルで実行されることが強く期待される。


※1 カビや結露対策は、戦後常に大きな課題であった。HPでも散見されるように現在でも多くのアンケートで指摘され、対策が講じられている。水回りと梅雨、秋の長雨時等季節対策も欠かせない。

※2 (一社)住宅性能評価・表示協会では、建設住宅性能評価書のデータを公開している。平成30年度の換気対策では、室内空気中の汚染物質及び湿気を屋外に除去するための必要な換気対策が確保されている割合は大きい。

※3 換気扇の出荷台数推移と住宅着工数との相関係数は、0.9743(1993‐2017)、0.938(2009‐2018)であり、住宅リフォーム市場規模との相関係数は0.8846(2009‐2018)であり、極めて強い関係にある。なお、換気扇の出荷台数は、経済産業省生産動態統計資料による。

※4 「平成20年度規制対象製品の技術基準の策定等調査報告書 三菱総研他」によると換気扇の使用回数、時間のばらつきが大きく、清掃をほとんどしていない実態が分かる。

※5 新型コロナウィルス感染防止のために適切な換気を行う必要がある。各住宅においても、各部屋における有効な換気方法について従来以上に研究し実践する必要がある。

※6 ヒートショックに気を付けるための報告が、数多く示されている。例えば、リンナイは「入浴」に関する意識調査を実施して報告している(2018年11月1日ニュースリリース)。また、旭化成建材の「住まいの温熱環境の実態と満足度」調査結果を報告している(2020年2月13日)。水回りの暖房が不十分なこと、入浴温度が高く、その時間が長いこと等リスクの高い実情が明らかである。

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ハウジング・トリビューンVol.631(2021年22号)

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2030年住宅への設置率6割は可能か
初期費用、条件不利地域へのソリューション

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現状の設置率は1~2割とみられ、非常に高い目標と言える。
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