三井ホーム 木造大規模中層マンションの建設へ
中層マンション普及の“試金石”に
三井ホームは、東京都稲城市で木造大規模中層マンション「(仮称)稲城プロジェクト」(5階建て1階RC造、2階〜5階木造枠組壁工法)の建築に着手する。同社は、これまでに特別養護老人ホームなどで木を使った中層階の建築を手掛けてきたが、この規模での集合住宅は今回が初めてという。同社は「木造による中層マンションを国内で普及させるための試金石」と同プロジェクトを位置付ける。
プロジェクトは、「国土交通省 令和2年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」で採択を受けている。普及性の高い木造大規模中層建築プロジェクトである点が評価された。
中層の建築物を木造化する場合、規定の構造性能と耐火基準を満たすために構造壁が厚くなることなどが設計上の課題となっている。今回、同社は枠組壁工法では国内最高レベルの壁倍率30倍を実現。「剛性の高い面材と専用の接合部材を使い」(同社)、木造中層建築物で耐震等級3の実現を可能とする高強度耐力壁を開発した。これにより構造壁が厚くなるという課題を解消。「従来と比べ壁厚を約半分に減らすことができ、建物の有効床面積が増加し、設計自由度も高まる」(同社)。
また、従来よりも土台や梁の本数も削減できることに加え、パネル化により工期を短縮できるため、建築コストの低減にも繋がるという。
軽量化ではRC造と比べメリットがある木造だが、一方で、その軽量化から高い遮音性の確保という点では課題に。同社独自の「制振パッド」が高い衝撃吸収性能と心地良い歩行感を実現。さらに、下階の天井を支持する吊天井根太の接合部材に独自の防振天井根太受金物を採用し、上階の衝撃音の伝播を低減する。同社は「RC造の集合住宅で求められる要求性能(衝撃音LH‐55以下、軽量衝撃音LL‐45以下)と同等程度の遮音性能を実現できた」と強調する。
他にも一部の床組みにNLT(ネイル・ラミネイテッド・ティンバー)を採用。また、国産カラマツ材を、国内で初めて枠組壁工法用製材(2×10材)の床根太として採用する。国産材の枠組壁工法用製材は、これまで2×4材や2×6材など小断面の生産に限定されていたため、新たな国産材の用途として道を開くことになりそうだ。
総戸数は51戸。21年11月の竣工を予定する。同社は「このプロジェクトを通じて、木造の中層建築物における課題を克服することで中層集合住宅へと事業領域を拡大し、木造建築物をさらに普及していく」と強調する。
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