ケイミュー、カラーベスト発売60周年を機に“ルーフイノベーション”で社会課題解決へ

屋根材のトップメーカー、ケイミューはカラーベスト発売60周年を機に、「ROOF Innovation 日本の屋根をかえる」をスローガンに掲げた。
新しい技術でこれまでにない付加価値を持たせた屋根材の開発を積極的に進め、頻発する地震や台風といった自然災害、また長寿命化や職人不足への対応といった社会課題の解決を目指す。


カラーベストは、1960年に発売されたロングセラーのスレート屋根材だ。これまでに累計11億㎡を販売し、戸建住宅に換算すると約1300万戸分、長さで換算すると地球150周分に相当する。「日本の高度経済成長期、プレハブ住宅メーカーが住宅販売を伸ばす中で、カラーベストの軽さや施工性などが支持されて使われるようになった。新築住宅が大量に供給される時代に、よりスムーズに工事ができる屋根材として、家づくりを支えてきたという自負がある」(同社)。

しかし、カラーベスト発売から60年が経ち、住宅業界を取り巻く環境、住まいに対するニーズは大きく変化。フローからストックへと住宅市場が転換し、住宅長寿命化へのニーズが高まっている。また、近年、台風や地震などの自然災害が頻発化、甚大化し、住まいのさらなる防災力強化が求められている。さらに、深刻化する大工、職人不足への対応も待ったなしだ。こうした様々な社会課題が顕在化する中、ケイミューは、カラーベスト誕生から60周年を機に、「ROOF Innovation 日本の屋根をかえる」というスローガンを打ち出した。「新しい技術を用いて、『軽く強く』、『長く美しく』、『省施工』、『廃材削減』の4つの考えを軸に、これまでにない性能を持つ屋根材や構法などの開発を積極的に進めることで、社会課題の解決に寄与していきたい」(同社)。

軽く強い屋根材で地震や台風から住まいを守る

一般的に建物は重心が低いほど揺れにくい。より軽い屋根材を採用し建物の重心を低くすることで、地震などによる被害を低減できる。

そこで同社は、高級グレードの軽量屋根材「ROOGA」を訴求する。「ハイブリッドピフ」と呼ばれる独自素材を採用した屋根材で、素材内に多くの気泡を設けることで軽さを実現。重さは一般的な陶器平板瓦と比較して約2分の1だ。また、燃えにくく、粘り強く、優れた耐水性も備えている。2007年の発売以来、新築・改修を問わず、順調に販売を伸ばしている。もともと防火(飛び火)の大臣認定を取得していたが、2020年3月から、価格据え置きで、不燃材へとアップグレードを図った。

近年の地震や台風でもROOGAやカラーベストの強さが評価されており、安全・安心にはさらに力を入れていきたい考えだ。

グランネクスト シンプルの納まり。板金を表に出さず、スレート素材だけで表現する納まりも可能

デザインのシンプルさと住宅長寿命化を追求

平形スレート屋根材「グランネクスト」の販売も強化する。2020年3月から、シンプルさを追求し、隅棟やケラバまですっきりと納められる「Simple(シンプル)」を発売した。カラーベストは、汎用品として普及しすぎたことで細かいテクスチャーからもカラーベストと分かるため、デザインを重視する建築家やビルダーには使いづらいという声もあった。そこで、グランネクスト シンプルでは、屋根材としての機能は残しつつ、建築デザインの妨げになりそうなテクスチャーを取り除き、形状も限りなくシンプルに、色目も低彩度を基調としたカラーのみを厳選。飾ることのないミニマルな美しさが高く評価され、2019年度のグッドデザイン ベスト100にも選出された。

住宅ストックが積み重なる中で、住宅長寿命化への要求も高まる。同社は、「ROOF Innovation」の一環として「通気下地屋根構法」を開発し普及を目指す。屋根に通気層を設けることで、換気棟から湿気を速やかに排出。万一、雨水が屋根材裏面に入っても軒先から排出が可能だ。また、屋根材の留付けビスを横桟に留付けし、下葺材に貫通させないことで雨水の浸入、木材下地の腐朽も防ぐ。こうして、構造体である下地を健全に保つことで長寿命化し、下地については80年無補修を目指した構法だ。近年の大型台風では野地板の腐朽が原因で屋根材が飛散するケースが多いが、通気下地屋根構法では、こうした被害の発生も抑制できる。

グランネクスト シンプルの施工事例
飾ることのないミニマルな美しさが住宅外観に新たな価値をもたらす

リフォーム提案を本格化
金属屋根材を製造・販売

リフォーム市場向けには、2020年10月、新発想のリフォーム専用金属屋根材「リコロニー」を発売する。既存のカラーベストに差し込み接着剤で固定する簡単な施工で、金属屋根の重ね葺きによるリフォームよりも価格を抑え、塗装に近い価格帯の屋根リフォームを実現した。リフォーム適齢期を迎える築20〜30年のカラーベスト屋根をターゲットに販売拡大を目指す。同社が金属屋根材を自社工場で製造することも初となる。リコロニーの展開を機に、金属屋根材によるリフォーム市場の開拓を本格化する考えだ。「当社は、金属サイディングによる外壁のリフォームの提案もでき、さらには雨樋のラインアップも持つ。外装材トータルで提案できる唯一の会社である強みを生かして外まわりリフォーム提案を強化していきたい」(同社)。

既存の屋根材に接着剤を塗布し、リコロニーを差し込めば施工完了。塗装に近い価格帯の屋根リフォームを実現した

屋根材プレカットも有償で提供
価値を認めてくれる住宅事業者に

職人不足に対応して、省施工・廃材削減の取り組みも強化する。2020年5月から、住友林業と連携してカラーベストのプレカット化を開始した。両社は連携しトライアルを重ね、屋根材プレカットの専用ソフトも開発。8月にはケイミューの小田原工場に屋根材のプレカット設備を導入した。住友林業の物件の屋根は約8割がカラーベスト屋根で、その全物件をプレカット化の対象とし、屋根施工の省力化、現場廃材ゼロ化を図る。順次、対象エリアを拡大し2021年10月からカラーベスト屋根材対象の全棟でプレカットに対応する。「住友林業様との連携にとどまることなく、屋根材のプレカットの価値を認めていただける住宅事業者に有償で対応していきたい」(同社)。

カラーベストのイメージ

このカラーベストプレカットシステムは、2020年度のグッドデザイン賞も受賞した。「業界全体の人手不足の課題や廃棄削減のために、自社の持つ技術や強みを最大化できる箇所を探索されたことなど、丁寧に向き合って実現されている。本格稼働はこれからとのこと、サービスの広がりを期待する」と、カラーベストを事前に切断してから発送するシステムが、現場での廃材削減・施工省力化、輸送時のCO2排出量の削減に貢献するものとして高く評価された。

同社は今後、屋根にとどまらず、「EXTERIOR Innovation」へと発展させ、外装材全般に踏み込んだ新たな展開を図っていく考え。同社の今後の展開に期待が高まる。