(一社)日本木造住宅産業協会、資産価値向上に協会あげて取り組み
暗黙の耐用年数30年からの脱却に中間報告
(一社)日本木造住宅産業協会が「資産価値のある高耐久住宅研究WG」の報告書をまとめた。第一ステップとして位置付けた高耐久化に必要な外皮の検討の中間報告となるもの。今後、金融や保険、宅建や鑑定など幅広い分野との連携など、取り組みを加速させる。
(一社)日本木造住宅産業協会は、木造住宅の高耐久化への取り組みとして、令和元年11月に資材・流通委員会のなかに「資産価値のある高耐久住宅研究WG」を立ち上げ、取り組みを進めてきた。
現状、木造住宅の耐用年数は30年程度と言われている。同WGでは、持続可能なストック社会を実現させるうえで、住宅のハードを60〜100年もつ高耐久化することとあわせ、長期使用に向けたメンテナンスやLCC評価、社会的資産の認識と中古流通・リフォーム市場での適正な評価が不可欠とし、その実現に向けての取り組みを「持続可能なストック社会を支える住宅の高耐久化〈60〜100年〉」、「長期使用・社会的資産化への意識改革〈不動産として真の市場価値・資産価値〉」、「高耐久な新築・既存住宅の適正な評価」、という3段階に整理し、それぞれサブワーキンググループ(SWG)を組織し、検討を進めている。
今回まとめたのはSWG1「住宅の高耐久化」の取り組み成果だ。取り組みにあたり「まず、なぜ短命なのか、なぜ低品質なのか、その議論が必要」(江原正也・WGリーダー)と、抜本的な議論からスタートしたという。
住宅の寿命については「戦後、耐用年数は30年と、なんとなく定着してきたのではないか」(江原リーダー)と暗黙の了解として短命が続いてきたと指摘。また、品質については「設備は世界的に見てもレベルが高い。外皮が低品質であるため短命なのではないか」(江原リーダー)と仮説を立てた。実際、「住生活総合調査」(国土交通省)で「不具合事象と主な不具合部位」をみると、上位5項目が屋根、外壁という外皮にかかわる「はがれ」、「雨漏り」、「性能不足」、「ひび割れ」、「汚れ」でありこれは全件数の3分の2を占める。
WGの議論においても「本音の部分で真剣に議論を行い、30年を一つのめどとして進めてきた製品づくりを変えようと合意した」(江原リーダー)という。
屋根、壁、換気・通気で
12システムを検証
SWG1では、60〜100年の高耐久化に必要な建物外皮(屋根、外壁、サッシ、その他)を構成する高品質建材・工法仕様・維持管理・更新の容易性についてLCC低減の観点で取捨選択し、関連資料の整備充実を図りながら図面類、仕様書、積算内訳書その他の設計実務図書および技術的根拠を得ることを目的に作業を進めている。
外皮資材のメーカー23社が参画し、部位ごとに個社または複数社で各部位に必要な情報や評価項目、検証方法について検討を進めている。今回まとめられた報告書は、これらすべての検証結果ではなく、2020年8月時点でのSWGメンバー各社が各部位ごとに検証を行うことができた高耐久住宅に資する製品について、その内容と商品を取りまとめたものだ。
図の通り、屋根高耐久システムについては、12社・7システム、壁高耐久システムは9社・4システム、屋根・外壁・バルコニー換気通気システムは6社・1システムについて検討を進めている。注目されるのは個社の取り組みに加え、異業種だけでなく同業種を含めたアライアンスの取り組みがSWGの中で行われていることだろう。「会員会社が一緒になって耐久性を高め、そのシステムに取り組んでいる。これが大きな一歩」(江原リーダー)と話す。例えば、換気通気システムについては、トーコー、ハウゼコ、城東テクノ、BXカネシン、カナイ、大谷工業の6社と、日頃は火花を散らすライバル関係の企業がアライアンスを組んでいる。“暗黙の耐用年数30年”から脱却するためにどうすべきか、関連業界を挙げての取り組みと言っていいだろう。
今後、SWG2で超長期保証ビジネスモデルを志向する会員企業を中心にLCCシミュレーションや住宅履歴活用にかかわる技術力向上、また、金融・保険など関連業界とのコラボによる維持管理・改修積立制度設計を進める。
さらにSWG1、2の成果が確実になった時点でSWG3の取り組みを開始、中古流通・リフォーム市場の現状に対し「市場価値・資産価値」の観点から新たな提案・提言を行う目的で、宅建・鑑定など幅広い業界を交えた横断的な意見交換を実施する考えだ。
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