2020.9.23

ブレない経営で顧客を開拓

スウェーデンハウス 村井秀壽 社長

親会社のトーモクから今年1月社長に就任したスウェーデンハウスの村井秀壽氏。段ボールという箱から住宅という箱の舵取りを任された。今後の展望などを聞いた。

北海道出身、1954年生まれ。
1979年4月トーモク入社。2000年6月執行役員清水工場長、10年6月取締役大阪工場長、18年6月取締役神戸工場長、関西営業部管掌などを経て、20年1月 スウェーデンハウス社長に就任。

──社長に就任されてから7ヶ月が経ちました。

親会社のトーモクが展開する段ボール事業はどちらかというとBtoBが主体でしたが、住宅はBtoCが基本であるということを改めて認識しました。住宅はデザイン性が豊富で、気密性や断熱性など各メーカーによって特徴は様々。人の発想をさらに豊かにするものが多くあります。商材も多く、興味深い業界だと感じています。売るという観点では、どの業界も同じです。営業マンなどの熱意はもちろん重要ですが、どれだけ、お客様が満足するような提案や企画を出せるかが勝負だと考えています。

──足元の販売状況はいかがですか。

新型コロナウイルス感染症で消費動向が不安定な中、今のところ前年を維持しています。新型コロナの問題で、マンションなどにお住まいの方も3ヶ月ぐらい閉じ込められた空間の中で生活していると、一軒家が欲しいなという需要があります。心配なのは、これからです。この先の消費者の所得がどうなるのかという部分で不安があり、実際に住宅を建てる時期をずらしたいという案件もあります。プラン提案の中で、「ファミリールーム」というものがあり、ちょっと手を加えることで簡単にリモートスペースにできます。スウェーデンハウスは結構面白い使い方ができるのではないかと考えており、提案力を強めていきます。

──前年を維持している要因は何ですか。

新型コロナで展示場への来場者数が大幅に減少する中、早めにVRなどWeb展開に取り組んだことが大きいと考えています。6月末で上期が終わりましたが、モデルハウスの来場者数は前年対比で大きく減りました。一般的に来場者数×3%が成約率と言われていますが、Web予約からのお客様の成約率は8〜10%となりました。

今まで、お客さまは、モデルハウスに入って体感した感触と、自分のイメージを交差させながら家づくりを考えてきました。お客様は一から説明を受けながら、そこで納得して当社を選んだり、他のメーカーと比較して当社を選んだりしていました。

ところが、Webでは、日常のインターネットでの買い物と同じように、とりあえず籠の中に入れ、その中で、比較しながら、住宅選びをしています。お客様は、とても勉強されています。そういう中で、他の住宅メーカーとの違いを感覚的にわかると、商談のスピードが非常に早くなります。

コロナ禍の中で、モデルハウスを6月頭まで閉鎖していたため、来場したくてもできない状態でした。そこで、まずWebという流れになりますが、ただ写真だけの羅列ではお客様の意識の中に全然入り込んで行けません。VRのカメラを使いながら、立体的にお客様の目で、こっちに行きたい、あそこを見たいという仕掛けが、商品の訴求に大きく貢献しました。中には、VRの中に登場する食器やカーテンなどに関心を持つお客様もおり、北欧らしさを身近に感じられるツールとしても、大変力を発揮しました。

──新築マーケットの先細りが心配されますが。

持ち家を持ちたいというニーズの中で、資金繰りや年収の問題から、なかなか当社の住宅に手が届かない20、30代の消費者もいます。こうした層に向けもっとブランディングを強化しようと考えています。

例えば、ベンツですが、常に最高級クラスのSクラスが売れているのではなくCクラスなどが売れています。昔はCクラスと言うと小ベンツと馬鹿にされましたが、今ではSクラスと見劣りしないポジショニングになっています。その理由を考えると、ブランディングの力なわけです。一般住宅よりも少々高いが、頑張れば手が出せるような住宅を考え、年代の若い購入層を狙っていきたいと考えています。注文住宅とは別に、ややセミオーダーのような住宅商品も出しており、受注が伸びだしています。

また、平屋の需要も見逃せません。当社住宅は平屋が映える家と自負しています。昨年、投入しましたが、今年も加えました。高級路線で満足してもらえる設計をこれからも提案していきます。

──Web戦略が功を奏していますが、今後、展示場出展で変化がありますか。

もっと増やしていきたいと思っています。ただ、エリアごとにしっかり、購買意欲などを見定め、慎重に判断することが必要です。新型コロナで前年割れしていた来場者数も7月の4連休が終わって対前年比110%ぐらいまで戻ってきています。

──今後の展望をお聞かせください。

やはり、これから経済環境がどう変わるか、それが一番心配です。ただ、そうした中でも、「いいものは絶対売れる」という信念で、当社を舵取りしていきます。

関西地方での暮らしが長かったのですが、京都出身の会社から多くを学びました。京都の会社は100年なんていうのはまだまだ若造で、300年と続く企業がたくさんあります。それはどうしてか。やはり経営がブレていません。

今流行りの近代的なデザインを出したら、一時的には売れるかもしれないが絶対に飽きがきます。だから基本的に三角屋根の存在感があるデザインをはじめ、ブレない家づくりをこれからも続けていきます。それがブランディングに繋がっていくと思っています。

ブレない姿勢を貫くことで、口コミなどで評価が高まっていきます。当社には、これまでの3万7000というお客様がおります。昔の案件で不満をお持ちのお客様もいらっしゃるかもしれません。そのお客様と、いろいろ対話しながら、改善・改良につなげていくことが大切だと考えています。段ボールでのクレームには、品質を改善するためのいろいろなヒントがあります。住宅でも同じではないでしょうか。クレームなどからヒントをもらい、品質のいいものを提供し続ければ、当社の住宅は、住宅市場の中で、さらに磨かれていくもの考えています。

(聞き手:川畑悟史)