ハウスプラス住宅保証 創業から20周年、性能評価書発行が累計50万戸超
次の成長を見据え三本目の柱の構築に動き出す
創業から20周年を迎えたハウスプラス住宅保証。
設計住宅性能評価書発行が累計50万戸を超えるなど、この20年間で第三者機関として盤石な事業体制を構築した。
ハウスプラスグループでは今後の新築住宅の減少を見据え、「住宅性能評価」、「住宅瑕疵担保責任保険」に並ぶ三本目の事業の柱の構築に動き出した。
その戦略をハウスプラス住宅保証の引馬洋子社長とハウスプラス確認検査の上杉義則副社長に聞いた。
──創業から20年を振り返ってみて。
引馬 ハウスプラスは東京電力の新規事業会社としてスタートしました。グループ会社の多くは東京電力の本業に関わる事業を行っていますが、当社は住宅性能評価や瑕疵保険という、東京電力が手掛けていない新しい分野を担っており、その意味では異色な存在といえます。おかげさまで、当社事業の柱のひとつである「設計住宅性能評価書」の発行が累計50万戸を超えるまでになり、この20年間はハウスプラスが独り立ちするための期間であったと思います。
累計50万戸は大きな数字ではありますが、住宅性能評価全体の普及率でみると、もう一段の広がりを期待したいところですね。住宅事業者の皆さんにはそれぞれ考えがありますが、住宅性能評価を積極的に使うことが、家を購入される側からすれば、大きな安心感につながります。そうした点を、これまで以上に丁寧に提案し、住宅性能評価という制度をさらに普及させていきたいと考えています。
ただ、新築市場はこれから縮小していきますので、従来の住宅性能評価と瑕疵保険の2本柱ではいずれ会社の成長が滞ります。第三の柱をつくることが早急に必要であって、その1つとして、今年から防耐火構造の性能評価事業に参入しました。民間企業では初めての取り組みです。
──どうして防耐火構造の性能評価事業に参入したのですか。
引馬 これまで防耐火構造の指定性能評価機関は財団を中心に5機関でした。その一方で防火関係の大臣認定年間申請件数は2000件を超え、試験が追い付かない状態です。当社は、10年ほど前から参入を検討し始めたものの、設備投資が多額なため、これまでかなり慎重に進めてきました。防耐火構造の性能評価をめぐる事業環境は、2007年に発生した不正試験体での受験による試験の厳格化や、「一仕様一認定の原則」という認定範囲の運用厳格化などにより、認定申請数が大幅に増加し、既存の指定性能評価機関で、長期間の申請待ちの状態が発生しています。このような状況の中、当社の顧客である建材メーカーからの要請も多くいただいたことから、需要があると判断し、参入しました。
──防耐火構造の試験はどこが実施するのですか。
上杉 防耐火構造の試験をするため、ハウスプラス住宅保証とJERA(東京電力フュエル&パワーと中部電力の共同設立会社)がそれぞれ出資して「HFP試験センター合同会社」を立ち上げました。ハウスプラス確認検査は国土交通大臣指定性能評価機関として、HFP試験センター合同会社に、防耐火構造の試験を依頼します。また、大学との共同研究や企業への製品開発支援なども積極的に実施したいと考えています。試験設備は3m×3mの壁炉1基です。受入可能な試験体は耐力壁や非耐力壁、防火設備(ドア、窓、シャッターなど)、軒裏、防火区画貫通部などです。
──どのように他機関との差別化を図りますか。
上杉 もちろん、第三者機関ですので法令をしっかり守るのは当然ですが、民間企業であることの良さを生かしていきたいと考えています。例えば新聞紙で作られた断熱材で防耐火構造の大臣認定を取得したいという企業があるとします。一般的には無理と思われるようなものに対しても、門前払いにするのではなく、様々な方向からチャレンジして、企業の想いを具現化する掛け橋のような存在になりたいと思っています。
価格は法定となっており、金額で差別化を進めることはできません。加えて、本事業は寡占化が進んでいます。このような状況下において、我々は民間企業ならではのフットワークの軽さを武器に、様々なお客さまの要望に応えていきます。試験施設は横浜市鶴見区のJERA横浜火力発電所内にあり、都内からのアクセスも大変便利な場所にあります。
──費用のイメージを教えて下さい。
上杉 概略としては性能評価案件1件につき200〜250万円です。内訳は、大きく性能評価試験費用(法定料金で、認定部材や時間により95〜165万円、2体分の試験費用、評価費用含む)と試験体製作費用(部材により70〜100万円、手数料、立会い費用)、大臣認定申請時費用です。
──初年度の検査数の見込みは。
引馬 今年度はまず50件、来年度は100件以上を想定しています。新しい商品を企画される企業と社会とをつなぎ、新たな価値を創り出すハウスプラスの役割を、この事業で具現化したいと思っています。
──非住宅分野についてはどう考えていますか。
引馬 当社がお付き合いしてきた事業者は住宅分野が中心ですが、これまでのネットワークをどのように非住宅分野へ拡げていけるかを考えている最中です。今年は、どこに・どんな課題があるか、しっかりと情報を収集しています。来年は、当社が持っている人財を活かしてその課題に本格的に取り組み、翌年には大きな花を咲かせる3カ年の計画です。
この20年間は住宅性能評価に始まり、瑕疵保険へ事業を展開しました。社員もこの時間と共に過ごし、想いをもって取り組んできました。これからの3年間では、会社の向かう方向を急に切り替えるというよりは、我々の事業を取り巻くいろいろなシーンを社員とともに見ていきながら、シフトチェンジしていこうと考えています。ただ、世の中の変化はそれほどゆっくりではないので、スピード感を持ちながら、住宅性能評価、瑕疵保険の2つの事業とバランスを取りながら、非住宅分野へも舵を切っていきます。
──20年周年という節目を迎えました。今後のビジョンについて。
引馬 20周年を機に「プラスバリュー」というビジョンを掲げました。当社の事業はBtoBtoCですが、これからはBtoBの先にいるお客さまとも接点をもち、常に提供するサービスにはバリュー(価値)をプラスできる会社を目指したいという想いでつくりました。
バリューを求めるお客さまに、しっかり応えることができるプロフェッショナル集団でありたいと考えています。
(聞き手:川畑悟史)
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