住宅 |  2020.8.4

ポラスグループ・中央グリーン開発、オンラインで住まい手の防災・減災の意識醸成

クイズ、防災グッズの紹介、炊き出し体験…

住まい手の防災・減災への意識醸成をオンラインで展開――。
こんな取り組みが7月中旬、ポラスグループ・中央グリーン開発で販売した分譲地で行われた。
新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため対面でのイベントが難しい中でも、頻発する自然災害は、待ったなしに襲い掛かる。
住まい手の防災・減災の意識を、オンラインという方法でどう高めていくのかを取材した。


分譲地内にある収蔵ベンチ「KONOBA」の一角からイベントをオンラインで発信

オンラインで防災・減災イベントに取り組んだのは同社が一昨年に分譲した千葉県柏市にある「パレットコート柏たなか エヴァーシティ」(全150棟)。この分譲地は、「防災×コミュニティ」、「日常からしなやかに備える減災」をコンセプトに開発され、これまで2回の防災訓練イベントを対面で実施。その3回目として、7月ぐらいに対面でのイベントを予定していたが、新型コロナウイルス感染症を考慮し、対面でのイベントを取りやめ、オンラインで試みた。

同社では、緊急事態宣言が発出される中、5月にオンラインを使った住民交流会を開催し、住民との非対面でのやり取りは経験済みだ。この間に行われたオンラインでのイベントは植栽のワークショップや収納講座セミナーなど。防災・減災をテーマとしたオンラインイベントは今回が初めて。分譲地全体の防災力を高めるために、防災・減災に対する住まい手の意識醸成が必要となる。非対面で、どうやって防災・減災に関心を持ってもらうか――。鍵を握るのはオンラインで行うイベントの中身だ。

防災・減災の意識を高めるためにクイズを出題

イベントには、(一社)減災ラボが協力した。まずはクイズを出題し、参加者同士を和ませる。減災ラボ代表理事の鈴木光さんが「災害後、電力復旧は1ヵ月後か?」、「災害後、6時間以内にトイレに行きたくなった人が多いか少ないか?」などをオンラインで参加者に質問する。回答方法は画面越しでも参加者の反応が分かりやすいように、「〇×」形式に。問題はすべて、実際に災害に遭って困ることだ。クイズ形式にすることで、楽しみながら事前に知ってもらおうとする工夫があった。

「KONOBA」の中にある防災グッズを紹介する

分譲地には防災ベンチが複数箇所にある。ところが、この防災ベンチは普段使っていないと、有事の時に空け方すら分からない状態に。防災ベンチは施錠されており、暗証番号を知らないと空けられない。暗証番号の覚え方を、オンラインで説明。防災ベンチを開けると、中にはカセットコンロやコードリール、ビニールシートなど。20ℓ入るポリタンクやバールなども入っており、実演しながら、いざというときのバールの使い方などを紹介した。

「Zoom」で炊き出しメニューを共有

災害に遭い、最も困るものの1つが食料だ。電気やガス、水道のライフラインが途絶する恐れのある中、どうやって食料を確保するのか――。イベントでは、このテーマを正面から捉え、炊き出し体験を実施。実際に被災したケースを想定し、水と火は、防災ベンチにあるカセットコンロと20ℓ入るポリタンクから調達しながら、パスタを作った。「少ない水でも、パスタが茹で上がるよう、パスタを水の入ったポリ袋に入れ1時間程度浸けておいてください」など、鈴木さんは、オンラインを通じて、住まい手に向け作り方を実演。その作り方を見ながら、実際に炊き出しメニューに挑戦する住まい手の姿もあった。出来上がったパスタは、それぞれ住まい手が「Zoom」の画面共有を通じて披露。画面が一杯になったところで、「いただきます」と一斉に食べ始めた。この日、オンラインでの防災・減災イベントに参加した世帯は42戸。「今回は81戸を対象にイベントを呼びかけ、多くの人が同じ時間に、防災・減災の意識が共有できた」(同社CSV推進室の竹内逸人室長)と手応えを感じる。

実際に炊き出し体験をする住民ら
スマホを見ながら炊き出しメニューのパスタを作る夫妻

住民コミュニティーの形成で黒子に

この高いイベント参加者数の背景には、同社が展開する住民のコミュニティー形成のための仕掛けがある。この分譲地は150世帯ある。コミュニティーを、この街づくりのテーマとした同社では、当初の段階から全150世帯を7つの「顔が見えるサークル(コミュニティー単位)」に分割し、ハードとソフトの両面からコミュニティー醸成の仕掛けをしている。それをまとめる形で、管理組合が組織されている。

「Zoom」画面で住民交流を図る

ソフト面では、こうしたイベントなどの情報は、LINEを通じて、大半の住まい手に迅速に伝わる仕組みを構築している。今回の防災・減災イベントでは「管理組合の理事長さんにイベント案を案内し、その後はLINEで皆さんが情報を回してくれた」
(同室の中村高志氏)と話す。昨年の大雨の情報や防犯に関する情報なども、この仕組みを通じて、素早く共有できているという。

サークルごとに関心を普段から持ってもらうため、ハード面での仕掛けもしている。防災グッズなどが入っている防災ベンチを「KONOBA(コノバ)」(災害時の拠点となるスペース)という収蔵できるベンチとして分譲地内に7カ所設置。植栽で使う剪定ばさみなどもベンチの中には用意されており、日常からKONOBAに集うという仕組みも整備している。「有事の際に何より大事になる、ご近助コミュニティーを自然と育んでもらえる仕掛けをソフト・ハード両面から行っている」と竹内室長は強調する。

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特集:

ターニングポイントを迎える防災・減災

国をあげた防災・減災対策の取り組みが加速している。
キーワードは“気候変動×防災”だ。
これまで進めてきたダムや堤防などハードを重視した対策だけでなく、「危ない土地に住まない」、「自然の機能を活用する」など「災害をいなす防災」も重視するスタンスへのシフトである。
各省庁の施策も、自然生態系の活用やグリーンインフラの整備、ハザードエリアの利用規制、流域治水など、これまでとは異なる新たな取り組みが目白押しだ。
猛威を振るう自然災害のなか、まちづくり・家づくりにも新たな対応が求められる。

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