2020.7.13

“いなす防災”は何を変えるのか

渡良瀬遊水地は2019年の台風19号の多くの水を貯め、東京への流出を防いだ

小泉進次郎環境大臣と、武田良太内閣府匿名担当大臣(防災)が『気候危機時代の「気候変動×防災」戦略〜「原形復旧」から「適応復興」へ〜』と題した共同メッセージを発表した。

自然災害の多発、甚大化を踏まえた対策が緊急の課題となっている。メッセージでは、こうした状況を「気候変動の影響が現実となり、想定を超える災害が各地で頻繁に生じる“気候危機”というべき時代」と表現し、気候変動対策と防災・減災対策を効果的に連携して取り組む戦略をまとめたものだ。

注目されるキーワードは「災害をいなし、すぐに興す」である。自然の性質を活かして災害をいなしてきた古来の知恵にも学びつつ、土地利用のコントロールを含めた弾力的な対応で気候変動への適応を進める。これまでの災害前の姿に戻す「原形復旧の発想」から、この「適応復興」という発想への切り替えを促す。

この「古来の知恵」として武田信玄の釜無川の治水事業や、加藤清正の白川の治水事業を例に引き、さらに、自然が持つ多様な機能を活用して災害リスクを低減する「グリーンインフラ」などの取り組みも「本格的に実行すべき」としている。

例えば、都市部では雨水を地下に浸透させる「雨庭(レインガーデン)」の設置、河川流域では遊水機能を持つ湿地の再生や保全などを全国に横展開することが重要であるとしている。

気候変動という大きなキーワードが、防災の考え方そのものを変えつつあるといっていい。乱暴に言ってしまえば、これまでの自然災害に対する姿勢は“抑え込む”ではなかっただろうか。大雨をダムでコントロールしようとし、氾濫する川をコンクリートで固め、堤防をかさ上げしてきた。だが今、こうした力の対応を諦め“いなす”という方向に大きく舵を切ったのである。

さらに、同メッセージを踏まえた包括的な対策として、大都市に集積する人口や産業などを地方に分散する、災害ハザードエリアにおける開発の抑制や住宅などの移転を促進する、といったことも打ち出している。

新たな防災の考え方が、まちづくり・家づくりを大きく変えていくかもしれない。

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