空き家をリノベし町を丸ごとホテルに

コロナで状況一遍もオンライン駆使し新ビジネスを展開

「コロナ発生後、すぐにフェイスブックで、現況をオープンにした。多くの反響があり、新しい活路を見出すことができた」と話す「HAGI STUDIO」代表の宮崎さん

東京都台東区谷中で注目されているのが一級建築士で「HAGI STUDIO」代表取締役・宮崎晃吉(みつよし)さんだ。学生時代に住んでいた木造アパートの取り壊しが持ち上がり、大家さんにプレゼンテーションを行い、日本政策金融公庫の融資を受けて事務所とカフェ、アートスペースを一体化させリノベーションし、建物の外観・骨格・風情はそのままに最少文化複合施設「HAGISO」を創造した。

アートスペースでは毎月、アーティストの個展、コンサート、絵本の読み聞かせなどの催しが行われ、カフェも多くの人が訪れる交流の場になった。

そこから発展して近くの空き家だった木造アパートを宿泊施設「hanare」にリノベーション。「HAGISO」をフロントに、湯舟は町の銭湯、飲食は近所の居酒屋、町の周遊は自転車のレンタルなどを連携させ、マップを作成して町をまるごとホテルとして打ち出した。

コロナ後、オンラインで設計業務の受付を開始し、超多忙となった設計事務所

この構想は多くの支持者を集めた。谷中の地域は戦中の空襲を逃れたことから下町の街並みが残り歩ける街として多くの人が訪れる。海外からも多くの人が訪ねてくる場となった。「hanare」は70%がアメリカと欧州の客がきている。

宮崎さんの活動は口コミで広がり、近所の民家のリノベーションを持ち掛けられて、惣菜、弁当、コーヒーなどを提供し飲食ができる「TAYORI」を開いた。しかも全国各地の生産地と繋がり豊富な食材が集まってくる。

さらに近くの5坪の民家の活用を相談され、「TAYORI」で評判となったクッキーを製造販売する「焼菓子工場TAYORIBA」を2019年11月にオープンし営業を開始した。

設計部門の「HAGI STUDIO」は、千駄木のビルの2階に移した。これもビルのオーナーから空いた2階の活用を持ち掛けられたものだ。スペースが100坪と大きかったことから半分をセミナー会場として使用している。

通販で全国から注文が来るようになった手づくりクッキー

しかし2020年3月下旬、新型コロナウィルスの影響で自粛要請が出たために4月6日からカフェや宿泊を休業することとした。そこで、すぐにフェイスブックで、現況をオープンにした。さらに、弁当、総菜などのテイクアウト、デリバリー、クッキーの通販も開始した。「HAGI STUDIO」の社員数は28名。通常給与の60%の休業補償を支給し、休業補償として雇用調整助成金の申請を行った。それぞれのテナントの大家さんには賃料の相談を行った。また、社会保険・年金の支払、消費税納付の猶予申請も行い、さらに日本政策金融公庫と保証協会には、セーフティネット補償制度の活用を申請、アルバイトスタッフの受け入れ先を紹介してほしいとお願いした。

民間の家をリノベーションして生まれたクッキーのお店

一方で、「HAGI STUDIO」では、新規でリモートでの設計業務の受付を開始し、宿泊施設「hanare」の宿泊に関しては、コロナ終息後の宿泊の予約として、1枚千円からの「みらいチケット」の購入のお願いなどを配信した。「宅配便を自粛要請があったすぐの週末から始めた。これは現場の飲食店のスタッフ20名を中心に、付き合いのある他の店の商品も運ぶ垣根を超えた。配達料は500円と商品のマージン15%。結局、2カ月で700件くらいの注文を受けた。これまでとは違うつながり、お店同士の連帯が生まれた」(宮崎さん)。近くの自転車屋さんが自転車を無償で提供してくれ、豆腐屋さんが3輪の原付を寄贈してくれたという。「谷根千宅配便」の営業は5月いっぱいまで行った。6月1日から実店舗での営業を再開したからだ。この間「焼菓子工場TAYORIBA」のクッキー通販が好調で、全国から注文が入った。将来使う宿泊用の「みらいチケット」には、なんと300万円以上が集まった。さらに設計のオーダーが入り、Zoomを使って遠隔での打ち合わせを行った。設計業務についてもフル稼働の多忙という状況になった。(続く)

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