特集 |  2020.3.23

今求められる働き方改革(住宅建材編)

省施工化、施工精度向上に寄与

住まいづくりのソリューション

住宅建設の現場施工を担う大工職人不足、高齢化問題が深刻化している。また、住宅業界にも働き方改革、生産性向上が求められる中、住宅事業者にとって、いかに現場の合理化を図り、働きやすい環境を実現していくかは、優秀な人材を獲得し、勝ち残っていくための最重要課題となりつつある。こうした中、建材メーカーからは、住まいづくりの合理化を図る商品やサービスの提案が活発化している。


大工職人の減少が止まらない。野村総合研究所の市場予測「2030年の住宅市場と課題」によると、2015年に35万人だった大工は年々減少し、2030年には21万人になると推計している。新設住宅着工数の減少を上回るペースで大工の減少が進んでおり、「これからは先細る供給サイドに対応したプレハブ化、工業化技術が求められている」と建設現場に更なる生産性向上が必要であると警鐘を鳴らす。

さらに、住宅業界にも働き方改革が迫られている。2019年4月、「働き方改革関連法」が施行された。月45時間・年間360時間と定めた時間外労働の罰則付き上限規制を導入した内容で、全業種が対象となっている。建設業については5年間の猶予が設けられており、2024年4月からの適用となる。建設業は全産業平均と比較して年間300時間以上の時間外労働が常態化しており、他産業では一般的な週休2日も十分確保されていないのが実情だ。5年間の猶予があるとはいえ、住宅事業者にとっても、現場の合理化を図り、働きやすい現場環境を実現していくことは、優秀な人材を獲得し、勝ち残っていくためにも最優先で取り組んでいくべき課題だ。

こうした中、住宅建設のあらゆる段階で、現場の省施工化、働き方改革を進める商品やサービスの提案が相次いでいる。

金物工法やプレカットサービスで躯体施工、断熱施工を合理化

住宅建設の現場で最も大きな作業負担がかかるといわれているのが、構造材などの重量物を扱う躯体施工の工程だ。大工の高齢化が進む中で、単に「現場の効率化を図る」という面だけでなく、「安全性の確保」、「施工品質を徹底」という面からもこの躯体施工の工程を合理化することが求められている。

こうした課題に対応して、金物メーカーのBXカネシンは、コンパクトなワンピース型の金物工法「プレセッターSU」の販売を強化する。プレカット工場で木材に金物がセットされて現場に納品されるため、現場では、金物に梁を落とし込み、ドリフトピンを打ち込むだけ。現場作業の効率化、高い組み上げ精度の確保に貢献する。こうした強みが支持されて2013年の発売以来、販売を伸ばしている。

プレセッターSUを使用することで、羽子板やプレートといった補強金物を省略でき、施工手間を大幅に削減できるというメリットももたらす。

「一部のビルダーから金物工法に切り替えると加工費が高くつくという声も受けているが、補強金物の省略のほかにも運送費、廃材処理費なども抑えることができるため、トータルコストを抑制できる。コスト管理に厳しいハウスメーカーや住宅FCなどが金物工法に切り替えていることからも明らか」(同社)。

在来軸組のオス、メスの仕口が決まった手順通りに施工しないと組み上がらないのと異なり、金物工法は、スリットに納め組み上げていくだけで、決まった手順はなく、どこからでも組み上げられる。今後増える見込みの外国人技能者でも簡単に組み上げられる。職人不足、高齢化が進む中、さらにプレセッターSUへの注目度は増していきそうだ。

「躯体を組むまでの作業は職人でなくても対応できる。合理化を図れるところは合理化していった方がよい。あるビルダーは一度プレセッターSUを採用し、加工費の面から在来軸組に戻そうとしたが、現場の大工から『戻さないでくれ』という要望があり継続利用いただいている。現場で作業する大工にとっては、躯体施工を合理化できるかは切実な問題」(同社)。

より高いレベルの住宅の性能が求められる中、パネル化やプレカットによる断熱施工の合理化サービスへの注目度も高まっている。

プレセッターSU
BXカネシンのワンピース型の金物工法「プレセッターSU」は、現場作業を効率化、高い組み上げ精度を確保する

FPコーポレーションは、柱、梁で組んだ軸組の中に断熱材、耐力面材を一体化した高耐震・高断熱パネル「ヘビーウォール」の販売を強化する。断熱施工の手間を軽減し、足場を気にすることなく室内側からも柱間に施工できる。熱伝導率0・024と優れた断熱性能を発揮し、上棟作業と同時に断熱施工を終えることができるとともに、短い工期で風雨から建物を守ることが可能だ。防水・防湿性にも優れ、水にさらされても品質にほとんど影響はない。また、壁倍率4倍の耐震性能も備え、耐震性能の向上、大きな開口部を確保しやすくなるというメリットももたらす。

また、直工場での一貫生産により安定した高い品質を維持しており、施工者の技能の差により施工精度にばらつきが生じる問題も解消できる。「省施工化ニーズの高まりを受けて、ヘビーウォールの出荷量は伸びている。住宅の大きさにもよるが、シミュレーションでは、一般的な在来軸組工法と比較して、工程を4日間短縮できる」(同社)。

押出法ポリスチレンフォーム断熱材を製造・販売するJSPは、床の断熱材のプレカットサービスを約20年前、業界に先駆け開始し、住宅事業者からの支持を集めている。工務店などから送付されてきたCADデータをもとに、同社が専用ソフトで割付図面を作成し、工務店などからの承認・発注を受けた後、工場で同社が展開するミラフォーム、ミラフォームΛを加工し、邸別にまとめ、指定場所に納品する。CADの普及により、図面の精度が向上したことも追い風となっている。図面データを受けた後、約2週間で対応可能。プレカットした断熱材の小口には、番号シールを貼り、大工は現場で図面の番号と照らし合わせて大引間にはめ込むだけで施工は完了する。現場で規格品の断熱材をカットし施工すると、1日仕事になるが、プレカット断熱材を用いることで、2時間程度に施工時間を短縮できる。残りの時間で、構造用合板を張り終えることも可能だ。

大引間割付断熱工法
JSPは20年前から床の断熱材のプレカットサービス「大引間割付断熱工法」を展開する

高度な加工技術が求められる階段材をプレカット

内装造作の分野でも、現場作業を合理化するプレカットサービスの人気が高まっている。顕著に需要が伸びているのが、階段材のプレカットサービス。従来、住宅づくりのなかで、階段は、大工の仕事のなかでも最も難しい加工技術が求められる箇所であり、「大工の腕の見せ所」と言われてきた。しかし、熟練の技が求められるだけに、そうした熟練の腕を持つ職人を確保するのが難しくなってきている。

こうした中で、永大産業は、階段のプレカットの範囲を極限まで高めた「階段の正寸プレカット」サービスの提供を2008年から開始。近年は、前年比2倍のペースで受注を伸ばしている。

階段のプレカット率を高める上でのハードルは高い。住宅の階段は、現場ごとに異なるためだ。分譲ビルダーが手がける住宅でも、同じものは1つもない。側板の端部の納め方も、住宅事業者によってまちまちであるという。そこで、同社では、住宅事業者から、階段プレカットの依頼を受けた際には、同社の営業のスタッフに、階段プレカットサービスを管理する建材事業部のスタッフが同行し、住宅事業者側の設計部門のスタッフと打ち合わせ、階段の基本の仕様決めを行っている。階段のプレカット加工機と連動する独自の受発注システムも構築した。現場の図面のデータを、受発注システムに入力することで、プレカット加工機が自動で階段を加工。プレカット階段を現場に納める。一部、現場で手を加えなければならない箇所が残るプレカット階段では、施工に約2人工を要するが、現場加工がほぼゼロの「階段の正寸プレカット」では、約0・8人工に抑えられるという。施工精度の向上にもつながる。

同社では、経営五カ年計画の中の「SDGsの取り組み」の一環として、「プレカットを中心とした省施工製品の拡充による廃棄物の抑制」を打ち出す。福井県敦賀市の工場で階段材のプレカットを行い、残った端材は、同工場内にあるパーティクルボードの工場で原料として再利用している。こうした取り組みは、クリーンで作業しやすい現場環境の創出にもつながるだけに住宅事業者からの支持もさらに高まっていきそうだ。

ウッドワンは、プレカットした部材を組み立ててつくる「セットオン階段」の提供を進めている。

上棟後すぐに先行階段と呼ばれる仮設階段を施工するため、内装工事中の2階への昇降に階段を使用することができる。従来は踏板などに極力傷を付けないよう木工事の終盤に施工していたため、内装工事中の2階への資材搬入などには梯子を使用していたが、梯子を使った資材搬入は、安全性やスムーズな工事を行う上での課題のひとつとなっていた。そこで、先行階段を使用することで梯子を使用することなく2階への昇降が可能になる。先行階段はプレカットされた合板などの下地部材を組み合わせたもの。化粧部材は工事の終盤に設置するので工事中に傷が付く心配も少ないうえ、先行階段の上に化粧部材を取り付ける二重構造で強度もアップする。

現在、大手ビルダーなどを中心にセットオン階段の採用は増加傾向にあるという。

内装造作のニッチな箇所も
施工合理化サービスでサポート

階段材以外にも、内装造作材のニッチな箇所を施工の合理化でサポートする提案も活発化している。

永大産業は、「プレカット窓枠セット」の邸別配送サービスを展開する。工務店などが図面から把握できるサッシのサイズ情報で簡単に発注できる仕組みを導入。永大産業は、送られてきたサッシのサイズ情報をもとに窓枠材を工場でプレカットし、邸別配送する。一窓分のプレカット窓枠セットごとに番号を記載し、大工が割付図面の番号と照らし合わせて取付け場所を把握できるようにする工夫も行っている。「分譲ビルダーを中心に安定した受注をいただいている。まとまった量の住宅を建てる際に、省施工の効果をより実感してもらえる。施工品質の向上にも寄与する」(同社)。プレカット窓枠セットの月間出荷量は約3万5000棟分に上る。

永大産業の「階段の正寸プレカット」サービス
永大産業の「階段の正寸プレカット」サービスは職人不足の中で受注を大きく伸ばしている

LIXILは、スギ花粉やダニのフン・死骸に含まれる環境アレルゲンの働きを抑制する屋内壁タイル「アレルピュア」のラインナップを拡充し2020年3月から発売する。今回、こだわったのは、より簡単に施工できるという点だ。
アレルピュア ウォールデザイン パッケージでは、あらかじめ2サイズ(3平方メートル、4平方メートル)にパッケージ化。タイルカラーを自由に組み合わせることが可能で、絵を飾るような感覚で手軽に既存の壁に張ることができる。

また、1時間程度で簡単・短時間で取り付けられるアレルピュア ウォールデザインパネルキットも発売。長方形型の1260サイズと、正方形型の9090サイズを用意し、それぞれ子供部屋のアクセントに最適な3デザインを揃えた。

気密施工や躯体換気も重要簡素化部材で快適で長持ちする家

住宅の断熱性能を高めるためには、そのベースとして、気密性能をしっかり確保することが重要になるが、細部にまで気を使い、丁寧に施工することが求められる。また、住宅の長寿命化を下支えするのが通気・換気部材だが、施工が入り組む箇所が多いだけに、施工不備を招きやすいことも事実だ。こうした点を考慮し、日本住環境では、気密部材や躯体換気部材など、副資材の製造・販売を通じて高性能住宅づくりを支援する。同社の気密部材、躯体換気部材に共通する特徴は、「簡単・確実」であること。誰が施工しても均一の性能を発揮する。

日本住環境の気密部材、躯体換気部材は、誰が施工しても均一の性能を発揮する。画像は屋根通気部材の「ルーフスペーサー」

そのひとつが防湿気密シート「ダンシーツ」。床、壁、天井(屋根)の室内側に施工することで、壁内、小屋裏、床下への湿気や水蒸気の浸入を抑制し、壁内を乾燥状態に保つことで、内部結露の発生を高いレベルで防止する。そのほか、コンセント部の漏気を防ぐ「バリアーボックス」や、配管周り用の気密パッキン「ドームパッキン」などを用意している。いずれも現場での手の込んだ加工が不要で均一な性能を発揮する。

屋根の垂木の間にはめ込むだけで、屋根の通気層を確保できる副資材「ルーフスペーサー」も人気商品だ。素材に耐水性、耐久性に優れるPET不織布を採用しており、過酷な条件下でも長期にわたって通気層を確保。現場発泡のウレタンやセルローズファイバーの吹き付け、グラスウールの吹込みにも対応でき、屋根断熱の施工手間を大幅に軽減できる。

住宅事業者は、職人不足、高齢化に対応し、働き方改革を推進していくことが待ったなしで求められている。建材メーカー各社から提案が活発化する住まいづくりを合理化するソリューションへの期待はますます高まりそうだ。

構造BXカネシンプレセッターSUワンピース型の金物工法。スリットに納めるだけで施工手順を気にする必要はない。
構造JSP大引間割付断熱工法ミラフォーム・ミラフォームΛに対応する床断熱のプレカット工法。施工時間を通常の1/3に削減。
構造日本住環境ルーフスペーサー屋根の通気層を簡単に確保できる屋根通気層保持材。既存の施工方法に比べ施工時間は1/2程度ですむ。
構造日本住環境ドームパッキン配管周りの気密性を簡単に高めることができる気密簡素化部材。面倒なパイプ周りのテープ処理を不要にした。
内装永大産業階段の正寸プレカット階段のプレカットの範囲を極限まで高めたプレカットサービス。施工に従来は2人工かかっていたが、1人工以下に抑えることができる。
内装永大産業プレカット窓枠セット開口部の大きさに合わせジャストサイズでプレカットし、邸別配送。施工時間は1棟あたり約1時間に。
内装LIXILアレルピュア ウォール デザインパッケージ環境アレルゲンの働きを抑制するINAXブランドの内装機能建材に、簡単に施工できるパッケージ商品を拡充。
水回りLIXILどこでも手洗あらかじめ用意された素材やパーツを組み合わせることで、おしゃれな手洗い空間を簡単に実現できる。

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ハウジング・トリビューン Vol.603(2020年14号)

特集:

受注力向上、働き方改革、脱・展示場も

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